最後列のファンタジスタ~禁断の移籍を敢行した日本人キーパーは、神秘のバルセロナ美少女と出会って超越する~

雪銀海仁@自作絵&小説商業連載中

文字の大きさ
上 下
61 / 71
第四章 伝統の一戦(クラシコ)と少女の真相

18話

しおりを挟む
       18

 後半も半分ほどを消化した。スコアに動きはなく、両チームは一進一退の攻防を繰り広げていた。
 ルアレはボールを緩やかに回し、中に絞ったモンドラゴンが受けた。
「モンドラゴン!」高い声で叫び、オルフィノが駆け出した。しかしアリウムもきっちりマークしている。
 右足をテイクバックし、モンドラゴンはキックした。パスは大きな弧を描き、オルフィノとアリウムの進行方向に飛んでいく。
「取れるぞアリウム!」神白は端的に指示した。オルフィノに従いていきつつ、アリウムは跳躍した。
 しかし、ぐらり。ボールは不自然な軌道で落ちた。アリウムの頭は当たらず、空振りに終わる。
「ナーイス・パス♪ やっぱりモンドラゴンは良い仕事するよね」
 気安い調子で呟きつつ、アリウムはいとも簡単にトラップした。
(無回転のボールをパスに使うかよ! どれだけ多彩なキックを持ってるんだ?)神白は驚嘆しつつ、「リー!」と6番に声を飛ばす。
 6番がオルフィノに向かい合った。後方には暁が控えており、一度体勢を崩したアリウムもダッシュで引いている最中だった。
「ふんふん、ちょっとずつ僕のプレーに対応できるようになってきたんだ。偉い偉い。でもでもこれでどうかなっ」
 歌うかのように愉快げに言うと、オルフィノはすっとボールを引いた。爪先で救い上げると、甲で頭の高さまで持っていく。
(なっ!)神白は絶句した。オルフィノはちょんちょんと、額でボールを突きながら移動を始めた。ボールの浮く高さは十センチ少しで、アザラシの曲芸のようだった。
 面食らった6番だが、どうにか従いていく。しかしボールを奪う取っ掛かりがない。
 結果、オルフィノと並走はしていても進行は止められていない。
 オルフィノのゴールへの接近を許し、暁が前に出た。奪取はできずとも撃たさないように、細かなステップで対応する。
「それでどうにかなると思った? 甘いんだよね」生意気な語調のオルフィノは、ポンッとボールを後ろに落とした。
 神白は困惑した。次の瞬間、オルフィノの背中からふわりとボールが出てきた。
(踵! しまっ──)神白が悔いる間にも、ボールは空中を行く。やがて、カン。ボールはクロスバー下部に当たり、ゴールラインを割った。
「やったぁ!」無邪気に歓声を上げ、オルフィノは自陣へと走り始めた。ルアレのメンバーが近寄り、身体を叩いて祝福している。
(嘘だろ、何だよ今の。もはや曲芸──)神白は呆然とするあまり動けなかった。一対二、オルフィノの天衣無縫のプレーにより、バルサは勝ち越しを許した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

えふえむ三人娘の物語

えふえむ
キャラ文芸
えふえむ三人娘の小説です。 ボブカット:アンナ(杏奈)ちゃん 三つ編み:チエ(千絵)ちゃん ポニテ:サキ(沙希)ちゃん

彗星と遭う

皆川大輔
青春
【✨青春カテゴリ最高4位✨】 中学野球世界大会で〝世界一〟という称号を手にした。 その時、投手だった空野彗は中学生ながら152キロを記録し、怪物と呼ばれた。 その時、捕手だった武山一星は全試合でマスクを被ってリードを、打っては四番とマルチの才能を発揮し、天才と呼ばれた。 突出した実力を持っていながら世界一という実績をも手に入れた二人は、瞬く間にお茶の間を賑わせる存在となった。 もちろん、新しいスターを常に欲している強豪校がその卵たる二人を放っておく訳もなく。 二人の元には、多数の高校からオファーが届いた――しかし二人が選んだのは、地元埼玉の県立高校、彩星高校だった。 部員数は70名弱だが、その実は三年連続一回戦負けの弱小校一歩手前な崖っぷち中堅高校。 怪物は、ある困難を乗り越えるためにその高校へ。 天才は、ある理由で野球を諦めるためにその高校へ入学した。 各々の別の意思を持って選んだ高校で、本来会うはずのなかった運命が交差する。 衝突もしながら協力もし、共に高校野球の頂へ挑む二人。 圧倒的な実績と衝撃的な結果で、二人は〝彗星バッテリー〟と呼ばれるようになり、高校野球だけではなく野球界を賑わせることとなる。 彗星――怪しげな尾と共に現れるそれは、ある人には願いを叶える吉兆となり、ある人には夢を奪う凶兆となる。 この物語は、そんな彗星と呼ばれた二人の少年と、人を惑わす光と遭ってしまった人達の物語。        ☆ 第一部表紙絵制作者様→紫苑*Shion様《https://pixiv.net/users/43889070》 第二部表紙絵制作者様→和輝こころ様《https://twitter.com/honeybanana1》 第三部表紙絵制作者様→NYAZU様《https://skima.jp/profile?id=156412》 登場人物集です→https://jiechuandazhu.webnode.jp/%e5%bd%97%e6%98%9f%e3%81%a8%e9%81%ad%e3%81%86%e3%80%90%e7%99%bb%e5%a0%b4%e4%ba%ba%e7%89%a9%e3%80%91/

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...