40 / 90
第三章 Eduardo's Suffering
9話
しおりを挟む
9
ウォーミング・アップとダンの話が終わり、選手たちは各々のポジションに収まった。
ホワイトフォードは、イートン校戦と変わらず1―3―6だった。フォワードの真ん中の四人に、遥香、ブラム、桐畑、エドの順で左から入っている点も、同じだった。
ポルトガル代表は、2―3―5を採用しており、マルセロは左ウイング(フォワードの最も左の選手)だった。
甲高い笛の音で、試合開始。数回のパスを経て、センター・ラインより少しホワイトフォード側に位置するマルセロに、ボールが渡る。
左足の裏でボールを保持するマルセロは、エドの方向に半身になった。すぐさま大きな手でメガホンを作り、口元へと当てる。
「エドー! 今から俺のドリブルで、おめえの度肝を抜いてやるー! 瞬きすら惜しんで、刮目して見とけやー!」
大音声が、コート中に鳴り響いた。隙を感じたホワイトフォードの4番が、ボールを奪取すべく素早く右足を出す。
しかしマルセロは、突如身体を前に向けた。同時にボールを浮かし、驚異的な加速を始める。
あっさり4番が抜かれて、2番がフォローに回る。マルセロは、勢いをそのままに右へとボールをずらした。切れのある動きに、2番は追随できない。
マルセロは、筋肉の塊の右足を振り抜いた。低弾道で飛んだボールは、キーパーの正面。
(確かにドリブルはすげえ。そこは認めざるを得ねえよ。だが、シュートに関しちゃただのパワー馬鹿だな。こりゃあちょっと、光が見えてきたんじゃね?)
桐畑は、一瞬胸を撫で下ろした。しかし即座に、驚愕する羽目になる。
マルセロが蹴ったシュートは、回転がなかった。キーパーの直前で、ボールはふっと揺れて落下する。
なんとかキーパーは腿に当てて、ボールは前方へと転がる。敵のフォワードが詰めるが、キーパーが倒れ込んで押さえた。
(本田をホーフツとさせる無回転シュート! っていうか、この時代のやつも撃てんのかよ!)
「すっげー! 何、今のグラグラ・シュートー! おっさんになっても、相っ変わらずすかしてんなー、マルセロー!」
桐畑が驚愕する一方で、元気が百%の声音でエドが叫んだ。耳を塞ぎたくなるほどの、音量だった。
「おっさんでもすかしてもねえけど、俺の凄さがわかったようだなー! 今日のおめーは、俺のワンマン・ショーの一観客に過ぎねえんだー! そこんとこ、よーく肝に銘じとけー!」
マルセロは、ただちに反論した。声の大きさや気迫は、エドに負けず劣らずのものだった。
ウォーミング・アップとダンの話が終わり、選手たちは各々のポジションに収まった。
ホワイトフォードは、イートン校戦と変わらず1―3―6だった。フォワードの真ん中の四人に、遥香、ブラム、桐畑、エドの順で左から入っている点も、同じだった。
ポルトガル代表は、2―3―5を採用しており、マルセロは左ウイング(フォワードの最も左の選手)だった。
甲高い笛の音で、試合開始。数回のパスを経て、センター・ラインより少しホワイトフォード側に位置するマルセロに、ボールが渡る。
左足の裏でボールを保持するマルセロは、エドの方向に半身になった。すぐさま大きな手でメガホンを作り、口元へと当てる。
「エドー! 今から俺のドリブルで、おめえの度肝を抜いてやるー! 瞬きすら惜しんで、刮目して見とけやー!」
大音声が、コート中に鳴り響いた。隙を感じたホワイトフォードの4番が、ボールを奪取すべく素早く右足を出す。
しかしマルセロは、突如身体を前に向けた。同時にボールを浮かし、驚異的な加速を始める。
あっさり4番が抜かれて、2番がフォローに回る。マルセロは、勢いをそのままに右へとボールをずらした。切れのある動きに、2番は追随できない。
マルセロは、筋肉の塊の右足を振り抜いた。低弾道で飛んだボールは、キーパーの正面。
(確かにドリブルはすげえ。そこは認めざるを得ねえよ。だが、シュートに関しちゃただのパワー馬鹿だな。こりゃあちょっと、光が見えてきたんじゃね?)
桐畑は、一瞬胸を撫で下ろした。しかし即座に、驚愕する羽目になる。
マルセロが蹴ったシュートは、回転がなかった。キーパーの直前で、ボールはふっと揺れて落下する。
なんとかキーパーは腿に当てて、ボールは前方へと転がる。敵のフォワードが詰めるが、キーパーが倒れ込んで押さえた。
(本田をホーフツとさせる無回転シュート! っていうか、この時代のやつも撃てんのかよ!)
「すっげー! 何、今のグラグラ・シュートー! おっさんになっても、相っ変わらずすかしてんなー、マルセロー!」
桐畑が驚愕する一方で、元気が百%の声音でエドが叫んだ。耳を塞ぎたくなるほどの、音量だった。
「おっさんでもすかしてもねえけど、俺の凄さがわかったようだなー! 今日のおめーは、俺のワンマン・ショーの一観客に過ぎねえんだー! そこんとこ、よーく肝に銘じとけー!」
マルセロは、ただちに反論した。声の大きさや気迫は、エドに負けず劣らずのものだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
拝啓、お姉さまへ
一華
青春
この春再婚したお母さんによって出来た、新しい家族
いつもにこにこのオトウサン
驚くくらいキレイなお姉さんの志奈さん
志奈さんは、突然妹になった私を本当に可愛がってくれるんだけど
私「柚鈴」は、一般的平均的なんです。
そんなに可愛がられるのは、想定外なんですが…?
「再婚」には正直戸惑い気味の私は
寮付きの高校に進学して
家族とは距離を置き、ゆっくり気持ちを整理するつもりだった。
なのに姉になる志奈さんはとっても「姉妹」したがる人で…
入学した高校は、都内屈指の進学校だけど、歴史ある女子校だからか
おかしな風習があった。
それは助言者制度。以前は姉妹制度と呼ばれていたそうで、上級生と下級生が一対一の関係での指導制度。
学園側に認められた助言者が、メンティと呼ばれる相手をペアを組む、柚鈴にとっては馴染みのない話。
そもそも義姉になる志奈さんは、そこの卒業生で
しかもなにやら有名人…?
どうやら想像していた高校生活とは少し違うものになりそうで、先々が思いやられるのだけど…
そんなこんなで、不器用な女の子が、毎日を自分なりに一生懸命過ごすお話しです
11月下旬より、小説家になろう、の方でも更新開始予定です
アルファポリスでの方が先行更新になります
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。

裏切りの先にあるもの
マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。
結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。
斎藤先輩はSらしい
こみあ
青春
恋愛初心者マークの塔子(とうこ)が打算100%で始める、ぴゅあぴゅあ青春ラブコメディー。
友人二人には彼氏がいる。
季節は秋。
このまま行くと私はボッチだ。
そんな危機感に迫られて、打算100%で交際を申し込んだ『冴えない三年生』の斎藤先輩には、塔子の知らない「抜け駆け禁止」の協定があって……
恋愛初心者マークの市川塔子(とうこ)と、図書室の常連『斎藤先輩』の、打算から始まるお付き合いは果たしてどんな恋に進展するのか?
注:舞台は近未来、広域ウィルス感染症が収束したあとのどこかの日本です。
83話で完結しました!
一話が短めなので軽く読めると思います〜
登場人物はこちらにまとめました:
http://komiakomia.bloggeek.jp/archives/26325601.html
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる