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第三章 Eduardo's Suffering

7話

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 それから一週間、桐畑たちは躍起になって練習した。ブラムもエドの事情を知っている風で、練習中、エドへの発破掛けが普段より多い印象だった。
 準決勝の当日になった。会場はホワイトフォード校なので、桐畑たちは朝からグラウンドの準備などに取り組んでいた。
 九時半に、会場の設営が終了した。桐畑とエドは隣り合って、グラウンドの中央からベンチへと歩いていく。
「今日の相手は堅守速攻が売りだから、ディフェンス陣、一対一は超しぶといぜ。気合全開、遠慮皆無で、端っから飛ばしてけよ」
 気持ちが高ぶる桐畑は、力を籠めた目でエドを凝視した。
 エドは、負けじと睨み返してきた。ただ口元は緩んでおり、試合がとても楽しみだ、と顔に書いてあった。
「言わずもがなだよ! もう、ばんばんぶっ飛ばしてくよ! そんでもって、今日は俺が全得点を決めて、伝説を作っちゃうから! ケントはまあ、アシストでも守備でも、好きなよーに必死こいて頑張ってなよ!」
 一点の曇りもない、明るい返答だった。さらに桐畑が戯けて言い返そうとすると、グラウンドの隅から大人数が歩く音がし始めた。
「ふふん、敵さんのご到着だね」
 挑発的に呟いたエドは、足音の方向に顔を向けた。桐畑も釣られて、視線を移した。
 壮年の男性を先頭に、桐畑より少し年上と見える二十人弱の男子が続いていた。皆、鮮やかな青地のところどころに、白線が入った練習着だった。
(うわっ! ガタイがおっそろしいことになってやがる! さっすがはクリロナを生んだ国。どっかが違うぜ、確実に)
 桐畑が焦っていると、「マルセロ!」と、隣から、喜びと驚愕が半々の叫び声が耳に飛び込んできた。隣ではエドが、声の通りの表情を浮かべていた。
「おめえいったい、なーにを馬鹿みたいに驚いてんだぁ? もしかして、メンバー・リストをちゃんと見てなかったのかよ? 大事な大事な、準決の対戦相手の? 相変わらずふざけてやがんな」
 間延びはしているが、よく通る声だった。桐畑がばっと目を遣ると、一人のポルトガル代表の選手が立ち止まっていた。笑顔には、遠くからでもわかるくらいの並外れたエネルギーがあった。
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