18 / 90
第二章 Kirihata's Growth
1話
しおりを挟む
1
翌日の五時、桐畑は、周囲からの物音で目を覚ました。腹筋を使って起き上がり、ゆっくりと辺りを見渡す。
カーテンこそ開かれているが、外の様子は深夜と大差がなく、部屋は暗かった。
部屋いっぱいに広がるベッドの傍では、様々な年齢の男子生徒が、スポーツ用の服装に着替え始めていた。男子生徒たちの足元には、ラクロスのスティックやテニスのラケットが見られた。
「おはよ、ケント。良い朝だね。なんかうなさされてたみたいだけど、寝られた?」
心配を滲ませた声に振り向く。組んだ両手を頭の後ろに据えたエドが、桐畑を揺れない瞳で見詰めていた。
混乱する桐畑は、しどろもどろと返事をする。
「えっ。うなされ……。身に覚えがないっつの。ってか、エド、ベッドはどこだったっけ? 俺、そんなどでかい声で……」
「ああ、いやいや。嘘だから嘘だから。いくらなんでも、焦りすぎだろー。心当たりでもあんのかと思っちゃうよ」
毒気のない柔らかい語調のエドは、目を細めて笑っている。
「ぱぱっと着替えて、ぱぱっと朝練行こうぜ! ブラムは、もうグラウンドだしさ。相っ変わらず、キャプテン魂全開って感じだよなー、あいつ」
「おう、了解。アルマがいないうちに上手くなって、思いっきり鼻を明かしてやっか」
桐畑は、エドのあっけらかんとした物言いに合わせて、戯けた。自分を無条件で信じてくれる気の良い仲間の存在に、感謝をしたい気分だった。
翌日の五時、桐畑は、周囲からの物音で目を覚ました。腹筋を使って起き上がり、ゆっくりと辺りを見渡す。
カーテンこそ開かれているが、外の様子は深夜と大差がなく、部屋は暗かった。
部屋いっぱいに広がるベッドの傍では、様々な年齢の男子生徒が、スポーツ用の服装に着替え始めていた。男子生徒たちの足元には、ラクロスのスティックやテニスのラケットが見られた。
「おはよ、ケント。良い朝だね。なんかうなさされてたみたいだけど、寝られた?」
心配を滲ませた声に振り向く。組んだ両手を頭の後ろに据えたエドが、桐畑を揺れない瞳で見詰めていた。
混乱する桐畑は、しどろもどろと返事をする。
「えっ。うなされ……。身に覚えがないっつの。ってか、エド、ベッドはどこだったっけ? 俺、そんなどでかい声で……」
「ああ、いやいや。嘘だから嘘だから。いくらなんでも、焦りすぎだろー。心当たりでもあんのかと思っちゃうよ」
毒気のない柔らかい語調のエドは、目を細めて笑っている。
「ぱぱっと着替えて、ぱぱっと朝練行こうぜ! ブラムは、もうグラウンドだしさ。相っ変わらず、キャプテン魂全開って感じだよなー、あいつ」
「おう、了解。アルマがいないうちに上手くなって、思いっきり鼻を明かしてやっか」
桐畑は、エドのあっけらかんとした物言いに合わせて、戯けた。自分を無条件で信じてくれる気の良い仲間の存在に、感謝をしたい気分だった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
真っ白なあのコ
冴月希衣@商業BL販売中
青春
【私だけの、キラキラ輝く純白の蝶々。ずっとずっと、一緒にいましょうね】
一見、儚げな美少女、花村ましろ。
見た目も性格も良いのに、全然彼氏ができない。というより、告白した男子全てに断られ続けて、玉砕の連続記録更新中。
めげずに、今度こそと気合いを入れてバスケ部の人気者に告白する、ましろだけど?
ガールズラブです。苦手な方はUターンお願いします。
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*☆
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.
色呆リベロと毒舌レフティ
雪銀海仁@自作絵&小説商業連載中
青春
《青春ランキング最高順位7位/3969作
同週間最高17位、同月間最高22位
HJ文庫大賞を二回、二次落ち
第12回集英社ライトノベル新人賞一次通過》
(1次落ち率9割)
スポーツ女子を愛して止まないサッカー部の星芝桔平は、中三の時に同学年でU17日本代表の水池未奈を見てフォーリンラブ。
未奈のいる中学の高等部、竜神高校を受験し合格しサッカー部に入部。水池にべたべたと付きまとう。
そして訪れる水池との決戦の日。星芝は水池を振り向かすべく、未奈とひっついていちゃいちゃすべく、全てを捧げて水池率いる女子サッカー部Aチームと戦う!
作者はサッカー経験者、主人公のイメキャラにチュートリアル徳井さんを据えた、色呆け男子高校生の本格サッカーものです。
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
NOISE
セラム
青春
ある1つのライブに魅せられた結城光。
そのライブは幼い彼女の心に深く刻み込まれ、ピアニストになることを決意する。
そして彼女と共に育った幼馴染みのベース弾き・明里。
唯一無二の"音"を求めて光と明里はピアノとベース、そして音楽に向き合う。
奏でられた音はただの模倣か、それとも新たな世界か––––。
女子高生2人を中心に音を紡ぐ本格音楽小説!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる