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片思いの騎士様が面会謝絶。と言われても心配なので、ちょっと様子を見に行きます。
ちょっと様子を見てこよう
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ここは、看護師達の仕事用のテントだ。
ベルンハルトが怪我をしたのを知ったのは、そこでの負傷者報告会議だった。
「え、レンゲル分隊長が負傷で面会謝絶を!?」
エミリアは本日の負傷者の報告のなかに、ベルンハルトの名前を聞いて、看護師長に詳しく聞いた。
「ああ、部下を庇ってダメージを受けたうえに状態異常を起こす魔法弾を。ヒーラーによるダメージ回復は行ったが、ヒーラーの判断で彼はしばらく彼のテントで休暇をとることになった。面会謝絶というより、テント待機、と言ったほうがいいかな。しばらく1人になる必要があるので誰もテントには近づかないように」
そんな……、様子を見に行ってはいけないのかしら……。
お食事とかどうされるのかしら。お洗濯もあるでしょうし……。
なによりお怪我が心配だわ。
1人になりたいだなんて、一体どんな状態異常を……?
それともなにか、心を病まれたのかしら?
ヒーラーが治癒できない異常だなんて、おそろしいわ……。
エミリアは気になって仕方がなかった。
近寄ってはいけない、という指示がでている以上、従わないわけにはいかない……が、どうしても様子が知りたくて、エミリアはキャンプが寝静まる頃、自分のテントを抜け出してベルンハルトのテントへ向かった。
★
ベルンハルトのテントの前でしばらく佇むエミリア。
どうしよう……どうしても気になって来てしまったわ。
一人になりたいってお話しなのに……怒られるか……ひょっとしたら嫌われるかも。
でも……。
せめてこっそり様子を伺えればいいのだけれど……。
ベルンハルトのテントは分隊長なだけあって、立派で大きい。
覗き込めそうなところはない。
「(諦めて、帰ろうかしら)」
そう思っていた時、中からうめき声が聞こえた。
「う……、く……っ」
「……!」
ベルンハルトの苦しそうな声を聞いた途端、エミリアは、思わずテントの中に走り込んだ。
「ベルンハルト様!! どうされたのですかっ!? ……あれ?」
勢いよくテントの中に入ったものの、ベルンハルトはいない。
よく見ると、テントの中に衝立(ついたて)があって、その向こうに人の気配を感じた。
「あの……ベルンハルト様、私、心配で……。苦しそうなお声も聞こえたので、勝手に入ってきてしまいました、ごめんなさい!! 大丈夫、ですか……?」
衝立の向こうに声をかける。
しばらすると、ベルンハルトの声がした。
「……エミリア?」
「はい!」
意識があるのがわかり、エミリアは衝立(ついたて)の向こうへと足を進めた。
お腹がすいていないか聞きたい、汗をかいているようなら拭いてあげたい、熱があるようなら冷たいタオルをひたいにあてて看病したい、そんな思いだった。
衝立の向こうにまわると、ベルンハルトが息を切らして横たわっていた。
顔が少し赤らんでいる。
「まあ……お熱があるのでは?」
エミリアがベルンハルトの額に手をあてようとした。
「馬鹿野郎……なんで、入ってきた……」
ベルンハルトがそうつぶやいた。
――あ。
怒って、いらっしゃる……。
そうよね、勝手に入ってくるなんて。しかも身分ある男性のテントに……。
私ったら、なんてマナーがなってないの……。
エミリアは自分が情けなくて、またベルンハルトに怒られて、申し訳なくて泣きそうになった。
「ご、ごめんなさい……すぐに出ていきます。けれど何か困ったことは」
「逃げろ」
「……?」
逃げろ?
この状況で口にされるには、よくわからない言葉だった。
「ぼやぼやするな、頼む、から……早くオレから逃げ――うあ!」
ベルンハルトが頭を抱えた。
「ベルンハルト様……っ」
「バカ、こっちに来るな……!」
エミリアは彼の言う事を聞かず、血相を変えて近寄り、彼の脈を見ようと手を取ろうとしたが――。
「いた……っ」
その細い腕を、ベルンハルトが握りしめた。
「はあ……はあ……」
ベルンハルトが荒い息をして、目を見開いてエミリアを見ている。
「ベルン、ハルト……さま?」
その異様な様子に、エミリアは、怯(ひる)んだ。そして――。
どさっ!
次の瞬間、エミリアは、ベルンハルトが寝ていたベッドに押し倒された。
「きゃ……!?」
見ると、ベルンハルトが、エミリアの両腕を押さえつけ、彼女の上に馬乗りになっている。
荒い息をして、目がギラギラしている。
「ハア……ハア……」
「……ベルンハルトさま! ……あの、どうされ……んっ!」
ベルンハルトの唇がエミリアの唇に重なり、顎を掴む強い手指がエミリアの口を強引に開かせ、舌を突っ込む。
「――」
エミリアはこの状況に目を見開いた。
……えっ?
――キス、されている。
ベルンハルト様に、キスを……。
大好きなベルンハルトに、いきなりではあるが、キスをされている……。
エミリアは、胸が高鳴った。
「んっ……ん……」
……ベルンハルト様は、いまは、まともな状態では、いらっしゃらない、けど……でも……。
嘘みたい……。
キスって……こんな感じなのね……。
強引にされたキスではあったが、エミリアは幸せを感じ、しばらくベルンハルトに唇を弄ばれ、求められるままに舌を預けた。
「は……あ……」
……ああ、でも、いけない。
彼は苦しんでいたのだったわ。
とりあえず熱は……。
口づけされたまま、エミリアは、隙をみて、自分の額を彼の額にくっつけてみた。
……熱い。
でも、これは正常の範囲内だわ。
一体これはなんの状態異常なのかしら。
看護師長は彼の名誉に関わるから言えない、と仰ってい……。
………?
――下腹部にこんもりとした硬いものがあたる。
「(う、あ……!?)」
エミリアはそれが何か、という事に気が付き、真っ赤になった。
男性患者の身体を拭くときに、彼らの下腹部を見ることはあったし、触れたこともある。
しかし、そのような状態を見るのは初めてだった。
そして、彼の先程の、『にげろ』の言葉。
――名誉にかかわる。
「(性的に興奮する状態異常にかかられているのね!!)」
そう、そういう魔法があったことをエミリアはこの段階になって、思い当たった。
その状態異常は結構特殊で、魔法自体を除去しても、しばらくは興奮状態が収まらないのだ。
興奮を収めるには、消え去るまで数日自分で耐え抜くか――もしくは、性的干渉で発散を……。
せっ…… ……。
せーーーーーーーーー!?
ベルンハルトが怪我をしたのを知ったのは、そこでの負傷者報告会議だった。
「え、レンゲル分隊長が負傷で面会謝絶を!?」
エミリアは本日の負傷者の報告のなかに、ベルンハルトの名前を聞いて、看護師長に詳しく聞いた。
「ああ、部下を庇ってダメージを受けたうえに状態異常を起こす魔法弾を。ヒーラーによるダメージ回復は行ったが、ヒーラーの判断で彼はしばらく彼のテントで休暇をとることになった。面会謝絶というより、テント待機、と言ったほうがいいかな。しばらく1人になる必要があるので誰もテントには近づかないように」
そんな……、様子を見に行ってはいけないのかしら……。
お食事とかどうされるのかしら。お洗濯もあるでしょうし……。
なによりお怪我が心配だわ。
1人になりたいだなんて、一体どんな状態異常を……?
それともなにか、心を病まれたのかしら?
ヒーラーが治癒できない異常だなんて、おそろしいわ……。
エミリアは気になって仕方がなかった。
近寄ってはいけない、という指示がでている以上、従わないわけにはいかない……が、どうしても様子が知りたくて、エミリアはキャンプが寝静まる頃、自分のテントを抜け出してベルンハルトのテントへ向かった。
★
ベルンハルトのテントの前でしばらく佇むエミリア。
どうしよう……どうしても気になって来てしまったわ。
一人になりたいってお話しなのに……怒られるか……ひょっとしたら嫌われるかも。
でも……。
せめてこっそり様子を伺えればいいのだけれど……。
ベルンハルトのテントは分隊長なだけあって、立派で大きい。
覗き込めそうなところはない。
「(諦めて、帰ろうかしら)」
そう思っていた時、中からうめき声が聞こえた。
「う……、く……っ」
「……!」
ベルンハルトの苦しそうな声を聞いた途端、エミリアは、思わずテントの中に走り込んだ。
「ベルンハルト様!! どうされたのですかっ!? ……あれ?」
勢いよくテントの中に入ったものの、ベルンハルトはいない。
よく見ると、テントの中に衝立(ついたて)があって、その向こうに人の気配を感じた。
「あの……ベルンハルト様、私、心配で……。苦しそうなお声も聞こえたので、勝手に入ってきてしまいました、ごめんなさい!! 大丈夫、ですか……?」
衝立の向こうに声をかける。
しばらすると、ベルンハルトの声がした。
「……エミリア?」
「はい!」
意識があるのがわかり、エミリアは衝立(ついたて)の向こうへと足を進めた。
お腹がすいていないか聞きたい、汗をかいているようなら拭いてあげたい、熱があるようなら冷たいタオルをひたいにあてて看病したい、そんな思いだった。
衝立の向こうにまわると、ベルンハルトが息を切らして横たわっていた。
顔が少し赤らんでいる。
「まあ……お熱があるのでは?」
エミリアがベルンハルトの額に手をあてようとした。
「馬鹿野郎……なんで、入ってきた……」
ベルンハルトがそうつぶやいた。
――あ。
怒って、いらっしゃる……。
そうよね、勝手に入ってくるなんて。しかも身分ある男性のテントに……。
私ったら、なんてマナーがなってないの……。
エミリアは自分が情けなくて、またベルンハルトに怒られて、申し訳なくて泣きそうになった。
「ご、ごめんなさい……すぐに出ていきます。けれど何か困ったことは」
「逃げろ」
「……?」
逃げろ?
この状況で口にされるには、よくわからない言葉だった。
「ぼやぼやするな、頼む、から……早くオレから逃げ――うあ!」
ベルンハルトが頭を抱えた。
「ベルンハルト様……っ」
「バカ、こっちに来るな……!」
エミリアは彼の言う事を聞かず、血相を変えて近寄り、彼の脈を見ようと手を取ろうとしたが――。
「いた……っ」
その細い腕を、ベルンハルトが握りしめた。
「はあ……はあ……」
ベルンハルトが荒い息をして、目を見開いてエミリアを見ている。
「ベルン、ハルト……さま?」
その異様な様子に、エミリアは、怯(ひる)んだ。そして――。
どさっ!
次の瞬間、エミリアは、ベルンハルトが寝ていたベッドに押し倒された。
「きゃ……!?」
見ると、ベルンハルトが、エミリアの両腕を押さえつけ、彼女の上に馬乗りになっている。
荒い息をして、目がギラギラしている。
「ハア……ハア……」
「……ベルンハルトさま! ……あの、どうされ……んっ!」
ベルンハルトの唇がエミリアの唇に重なり、顎を掴む強い手指がエミリアの口を強引に開かせ、舌を突っ込む。
「――」
エミリアはこの状況に目を見開いた。
……えっ?
――キス、されている。
ベルンハルト様に、キスを……。
大好きなベルンハルトに、いきなりではあるが、キスをされている……。
エミリアは、胸が高鳴った。
「んっ……ん……」
……ベルンハルト様は、いまは、まともな状態では、いらっしゃらない、けど……でも……。
嘘みたい……。
キスって……こんな感じなのね……。
強引にされたキスではあったが、エミリアは幸せを感じ、しばらくベルンハルトに唇を弄ばれ、求められるままに舌を預けた。
「は……あ……」
……ああ、でも、いけない。
彼は苦しんでいたのだったわ。
とりあえず熱は……。
口づけされたまま、エミリアは、隙をみて、自分の額を彼の額にくっつけてみた。
……熱い。
でも、これは正常の範囲内だわ。
一体これはなんの状態異常なのかしら。
看護師長は彼の名誉に関わるから言えない、と仰ってい……。
………?
――下腹部にこんもりとした硬いものがあたる。
「(う、あ……!?)」
エミリアはそれが何か、という事に気が付き、真っ赤になった。
男性患者の身体を拭くときに、彼らの下腹部を見ることはあったし、触れたこともある。
しかし、そのような状態を見るのは初めてだった。
そして、彼の先程の、『にげろ』の言葉。
――名誉にかかわる。
「(性的に興奮する状態異常にかかられているのね!!)」
そう、そういう魔法があったことをエミリアはこの段階になって、思い当たった。
その状態異常は結構特殊で、魔法自体を除去しても、しばらくは興奮状態が収まらないのだ。
興奮を収めるには、消え去るまで数日自分で耐え抜くか――もしくは、性的干渉で発散を……。
せっ…… ……。
せーーーーーーーーー!?
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