花鬼 散 R18 短編集 最新▶※(7話)『片思いの騎士様が面会謝絶。と言われても心配なので、ちょっと様子を見に行きます。』

花鬼 散

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片思いの騎士様が面会謝絶。と言われても心配なので、ちょっと様子を見に行きます。

ちょっと様子を見てこよう

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 ここは、看護師達の仕事用のテントだ。

 ベルンハルトが怪我をしたのを知ったのは、そこでの負傷者報告会議だった。

「え、レンゲル分隊長が負傷で面会謝絶を!?」

 エミリアは本日の負傷者の報告のなかに、ベルンハルトの名前を聞いて、看護師長に詳しく聞いた。


「ああ、部下を庇ってダメージを受けたうえに状態異常を起こす魔法弾を。ヒーラーによるダメージ回復は行ったが、ヒーラーの判断で彼はしばらく彼のテントで休暇をとることになった。面会謝絶というより、テント待機、と言ったほうがいいかな。しばらく1人になる必要があるので誰もテントには近づかないように」


 そんな……、様子を見に行ってはいけないのかしら……。

 お食事とかどうされるのかしら。お洗濯もあるでしょうし……。

 なによりお怪我が心配だわ。

 1人になりたいだなんて、一体どんな状態異常を……?
 それともなにか、心を病まれたのかしら?
 ヒーラーが治癒できない異常だなんて、おそろしいわ……。


 エミリアは気になって仕方がなかった。

 近寄ってはいけない、という指示がでている以上、従わないわけにはいかない……が、どうしても様子が知りたくて、エミリアはキャンプが寝静まる頃、自分のテントを抜け出してベルンハルトのテントへ向かった。






 ベルンハルトのテントの前でしばらく佇むエミリア。

 どうしよう……どうしても気になって来てしまったわ。
 一人になりたいってお話しなのに……怒られるか……ひょっとしたら嫌われるかも。
 でも……。

 せめてこっそり様子を伺えればいいのだけれど……。


 ベルンハルトのテントは分隊長なだけあって、立派で大きい。

 覗き込めそうなところはない。


「(諦めて、帰ろうかしら)」

 そう思っていた時、中からうめき声が聞こえた。



「う……、く……っ」

「……!」


 ベルンハルトの苦しそうな声を聞いた途端、エミリアは、思わずテントの中に走り込んだ。

「ベルンハルト様!! どうされたのですかっ!? ……あれ?」


 勢いよくテントの中に入ったものの、ベルンハルトはいない。
 よく見ると、テントの中に衝立(ついたて)があって、その向こうに人の気配を感じた。


「あの……ベルンハルト様、私、心配で……。苦しそうなお声も聞こえたので、勝手に入ってきてしまいました、ごめんなさい!! 大丈夫、ですか……?」

 衝立の向こうに声をかける。
 しばらすると、ベルンハルトの声がした。


「……エミリア?」

「はい!」

 意識があるのがわかり、エミリアは衝立(ついたて)の向こうへと足を進めた。


 お腹がすいていないか聞きたい、汗をかいているようなら拭いてあげたい、熱があるようなら冷たいタオルをひたいにあてて看病したい、そんな思いだった。


 衝立の向こうにまわると、ベルンハルトが息を切らして横たわっていた。
 顔が少し赤らんでいる。

「まあ……お熱があるのでは?」

 エミリアがベルンハルトの額に手をあてようとした。

「馬鹿野郎……なんで、入ってきた……」

 ベルンハルトがそうつぶやいた。


 
 ――あ。


 怒って、いらっしゃる……。
 そうよね、勝手に入ってくるなんて。しかも身分ある男性のテントに……。
 私ったら、なんてマナーがなってないの……。


 エミリアは自分が情けなくて、またベルンハルトに怒られて、申し訳なくて泣きそうになった。


「ご、ごめんなさい……すぐに出ていきます。けれど何か困ったことは」

「逃げろ」

「……?」

 逃げろ?
 この状況で口にされるには、よくわからない言葉だった。


「ぼやぼやするな、頼む、から……早くオレから逃げ――うあ!」

 ベルンハルトが頭を抱えた。


「ベルンハルト様……っ」


「バカ、こっちに来るな……!」


 エミリアは彼の言う事を聞かず、血相を変えて近寄り、彼の脈を見ようと手を取ろうとしたが――。

「いた……っ」

 その細い腕を、ベルンハルトが握りしめた。


「はあ……はあ……」

 ベルンハルトが荒い息をして、目を見開いてエミリアを見ている。

「ベルン、ハルト……さま?」

 その異様な様子に、エミリアは、怯(ひる)んだ。そして――。


 どさっ!


 次の瞬間、エミリアは、ベルンハルトが寝ていたベッドに押し倒された。


「きゃ……!?」


 見ると、ベルンハルトが、エミリアの両腕を押さえつけ、彼女の上に馬乗りになっている。
 荒い息をして、目がギラギラしている。


「ハア……ハア……」

「……ベルンハルトさま! ……あの、どうされ……んっ!」

 ベルンハルトの唇がエミリアの唇に重なり、顎を掴む強い手指がエミリアの口を強引に開かせ、舌を突っ込む。

「――」

 エミリアはこの状況に目を見開いた。

 ……えっ?


 ――キス、されている。
 ベルンハルト様に、キスを……。


 大好きなベルンハルトに、いきなりではあるが、キスをされている……。
 エミリアは、胸が高鳴った。

 
「んっ……ん……」


 ……ベルンハルト様は、いまは、まともな状態では、いらっしゃらない、けど……でも……。
 嘘みたい……。

 キスって……こんな感じなのね……。


 強引にされたキスではあったが、エミリアは幸せを感じ、しばらくベルンハルトに唇を弄ばれ、求められるままに舌を預けた。

「は……あ……」

 ……ああ、でも、いけない。
 彼は苦しんでいたのだったわ。
 とりあえず熱は……。

 口づけされたまま、エミリアは、隙をみて、自分の額を彼の額にくっつけてみた。


 ……熱い。

 でも、これは正常の範囲内だわ。
 一体これはなんの状態異常なのかしら。

 看護師長は彼の名誉に関わるから言えない、と仰ってい……。


 ………?


 ――下腹部にこんもりとした硬いものがあたる。


「(う、あ……!?)」

 エミリアはそれが何か、という事に気が付き、真っ赤になった。


 男性患者の身体を拭くときに、彼らの下腹部を見ることはあったし、触れたこともある。
 しかし、そのような状態を見るのは初めてだった。

 そして、彼の先程の、『にげろ』の言葉。



 ――名誉にかかわる。



「(性的に興奮する状態異常にかかられているのね!!)」


 そう、そういう魔法があったことをエミリアはこの段階になって、思い当たった。

 その状態異常は結構特殊で、魔法自体を除去しても、しばらくは興奮状態が収まらないのだ。

 興奮を収めるには、消え去るまで数日自分で耐え抜くか――もしくは、性的干渉で発散を……。


 せっ…… ……。


 せーーーーーーーーー!?


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