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第2章 血の追求者
2-21:今後の戦いに備えて
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「このような形で助けられるとは思っていませんでした。ありがとうございました」
「いいえ、あの場で簡単に捕獲されるとこちらとしても困りますからね。それにしても本当に危なかったですね。まさか副作用で動きが鈍くなっているところを狙われるとは」
薄暗い部屋の中で菫と若弥が言葉を交わす。
「私としても早々に終わらせたかったのですが思った以上に長引いてしまった結果がこの有り様ですから相手の力量を読み間違えていましたね。注射の打つタイミングが早かったのもそうですが何より想定外だったのが中野院さんでしたよね?彼女は一体どういう体質をされているのでしょうか?」
その質問に若弥は少し困った顔して答える。
「僕も詳しいことは何も。ただ彼女自身がまだ生まれて間もない頃に大規模の事故に巻き込まれて医療先の先生に治療してもらったということだけは聞いたことがあります」
頭の中で今まで得た知識の中から該当しそうな分野を張り巡らせて整理するにしても時間がかかりそうだったので深く追求しなかった。
「いずれにしても症状系統の魔法が通じないことはわかりました。それを踏まえた上でどう封じるかですね」
「時光君や舞香さんと比較して単純な力で劣っているところはありますが、他の面では恐らく2人よりも優位に立てていますが油断は禁物です」
「確かにそうですね」
若弥は今まで見てきた経験を伝えると、菫はふと志穂と美穂の顔を思い出す。
特段、双子が珍しいということではなく一目見た時からふんわりとした何かがあると思い出して未だに気にかけている。
そんな気の抜けた様子を若弥が見て声をかける。
「何か気になることでもありますか?」
「いいえ何も」
「ならいいですが些細なことでも腑に落ちないことがあれば遠慮なく言ってください」
「お言葉痛み入ります」
あえて追求はせず若弥は念を押してそう言葉を添えると菫も同じ抑揚で答える。
「しかし改めて今回はあらかじめ打ち合わせしておいて正解でしたね。あそこまで自然と持ち込めるとは並大抵では出来ませんよ。下手すれば相手に悟られて返り討ちにされてもおかしくない状況でしたからね」
「ええ、自分でもここまで上手く持ち込めるとは思ってもいませんでしたよ。あくまでも最終手段として取っておきたかったのですが想定外が起きて使わざるを得なかったですし」
時光たちに包囲されて捕獲されそうになった時に菫が発した「今すぐに」という言葉ほどの文脈にも関わらず「目の前にいる敵を払って」という意味で口にしたことで本人は投降する気はなかった。
今度は菫の方から思うところがあり若弥に尋ねる。
「助けていただいたことには感謝していますが、小堂さんの方も一歩間違えれば死んでもおかしくない攻撃を仕掛けられましたが氷山さんに何か因縁でもおありで?」
答えづらい質問ではあるが少し考えて今の気持ちを伝える。
「ええまあそんなところです。僕が裏切ったことで彼の中で許せない気持ちが一層増したのではないかと思います。そうでなければあそこまで殺傷能力の高い攻撃を飛ばしてくることはないし、ましてやお互いに殺し合う動機がありませんから」
「そうでしたか。複雑な事情がおありなようで」
「恐れ入ります」
菫の方もあえて踏み込まず当たり障りのない言葉を添える。
「さて互いの傷の舐め合いもここまでにしてこの先どうしていくのか決めましょう」
「そうですね。東雲さんは何か決まっていますか?」
「まだハッキリと決まったわけではありませんが、さすがに今の状態で相手に挑んでも厳しいので万全を期して今度は相手の動きを封じられたらと考えています。そのためにも日にちを空けて考えを練り直し、街中にいる人々の注射の効果も見ていければ最善ですね」
理想を述べると、若弥はありのままの考えを伝える。
「自分がそうしたいと思えることがあれば思いのままに。お会いした時に申し上げたことですが組織を潰しにかかる計画は自由と言ったのは他でもなく僕ですから出し惜しむことなく思いっきりやっちゃってください」
「ええ、言われずとも。このような機会はそう何度もあるものではありませんからね」
口を綻ばせ実行していけるためにも自分を整理するところから始める菫であった。
「いいえ、あの場で簡単に捕獲されるとこちらとしても困りますからね。それにしても本当に危なかったですね。まさか副作用で動きが鈍くなっているところを狙われるとは」
薄暗い部屋の中で菫と若弥が言葉を交わす。
「私としても早々に終わらせたかったのですが思った以上に長引いてしまった結果がこの有り様ですから相手の力量を読み間違えていましたね。注射の打つタイミングが早かったのもそうですが何より想定外だったのが中野院さんでしたよね?彼女は一体どういう体質をされているのでしょうか?」
その質問に若弥は少し困った顔して答える。
「僕も詳しいことは何も。ただ彼女自身がまだ生まれて間もない頃に大規模の事故に巻き込まれて医療先の先生に治療してもらったということだけは聞いたことがあります」
頭の中で今まで得た知識の中から該当しそうな分野を張り巡らせて整理するにしても時間がかかりそうだったので深く追求しなかった。
「いずれにしても症状系統の魔法が通じないことはわかりました。それを踏まえた上でどう封じるかですね」
「時光君や舞香さんと比較して単純な力で劣っているところはありますが、他の面では恐らく2人よりも優位に立てていますが油断は禁物です」
「確かにそうですね」
若弥は今まで見てきた経験を伝えると、菫はふと志穂と美穂の顔を思い出す。
特段、双子が珍しいということではなく一目見た時からふんわりとした何かがあると思い出して未だに気にかけている。
そんな気の抜けた様子を若弥が見て声をかける。
「何か気になることでもありますか?」
「いいえ何も」
「ならいいですが些細なことでも腑に落ちないことがあれば遠慮なく言ってください」
「お言葉痛み入ります」
あえて追求はせず若弥は念を押してそう言葉を添えると菫も同じ抑揚で答える。
「しかし改めて今回はあらかじめ打ち合わせしておいて正解でしたね。あそこまで自然と持ち込めるとは並大抵では出来ませんよ。下手すれば相手に悟られて返り討ちにされてもおかしくない状況でしたからね」
「ええ、自分でもここまで上手く持ち込めるとは思ってもいませんでしたよ。あくまでも最終手段として取っておきたかったのですが想定外が起きて使わざるを得なかったですし」
時光たちに包囲されて捕獲されそうになった時に菫が発した「今すぐに」という言葉ほどの文脈にも関わらず「目の前にいる敵を払って」という意味で口にしたことで本人は投降する気はなかった。
今度は菫の方から思うところがあり若弥に尋ねる。
「助けていただいたことには感謝していますが、小堂さんの方も一歩間違えれば死んでもおかしくない攻撃を仕掛けられましたが氷山さんに何か因縁でもおありで?」
答えづらい質問ではあるが少し考えて今の気持ちを伝える。
「ええまあそんなところです。僕が裏切ったことで彼の中で許せない気持ちが一層増したのではないかと思います。そうでなければあそこまで殺傷能力の高い攻撃を飛ばしてくることはないし、ましてやお互いに殺し合う動機がありませんから」
「そうでしたか。複雑な事情がおありなようで」
「恐れ入ります」
菫の方もあえて踏み込まず当たり障りのない言葉を添える。
「さて互いの傷の舐め合いもここまでにしてこの先どうしていくのか決めましょう」
「そうですね。東雲さんは何か決まっていますか?」
「まだハッキリと決まったわけではありませんが、さすがに今の状態で相手に挑んでも厳しいので万全を期して今度は相手の動きを封じられたらと考えています。そのためにも日にちを空けて考えを練り直し、街中にいる人々の注射の効果も見ていければ最善ですね」
理想を述べると、若弥はありのままの考えを伝える。
「自分がそうしたいと思えることがあれば思いのままに。お会いした時に申し上げたことですが組織を潰しにかかる計画は自由と言ったのは他でもなく僕ですから出し惜しむことなく思いっきりやっちゃってください」
「ええ、言われずとも。このような機会はそう何度もあるものではありませんからね」
口を綻ばせ実行していけるためにも自分を整理するところから始める菫であった。
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