魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-07:捜査・新宿エリア

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「コレといって今のところ変化や連絡がありませんね」
「そうだね。でもそれだけ今は穏やかと言ってもいいんじゃないかな?極端に街中で騒動が勃発されてもそれはそれで困るし」
「確かにそれは言えていますね」
 新宿エリアを巡回する舞香と恵、このエリアも駅付近を中心に人通りの多いところを回っているが道行く人に今のところ変化が見られない。
「今回の注射の件でどういう人物なのか、気になるところではあるけど私その人と性格合いそうにないかも」
「と言いますと?」
 恵が尋ねると舞香はあからさまに毒を吐く。
「だってあれだけ正確なところに注射を打つくらいだからきっと、私生活でも少しものがズレただけでも文句を言ってきそうだなと思って、だからもし遭遇しても避けたいなぁって」
「その意見に賛成です。私も口うるさく言ってくる方が苦手なので性別問わず出来れば会いたくないです」
「アハハッ言うね。恵ちゃんにそこまで言うとは少し驚いたよ」
「意外でしたか?隠していたつもりはなかったんですけどね」
 少し照れて言うと、
『はい2人とも話が盛り上がっているところ申し訳ないけど遊びに来ているわけじゃないからね』
 念話で2人の間に割って入る真奈が注意する。
「わかっているさ。新宿エリアは見ての通り、今のところ特別変化が起きているように見えないけど、時光クンや志穂や美穂のいるエリアはどんな状況かな?」
 舞香にそう尋ねられて各エリアを回っている3人の状況を伝える。
『そうね。まず時光のいる吉祥寺エリアは確認出来た数が女性3名と男性1名、志穂と美穂がいる渋谷エリアで女性が6名で注意レベルの確認がとれているわ。幸いにも貴女たちのいる新宿エリアはまだそのレベルに至る人は確認出来ていないわ』
 2人は内心ホッとして気持ちを切り替え、恵が尋ねる。
「では引き続き巡回は続けますが、先輩か志穂さんと美穂さんのいるエリアで注意レベルの他に何か変わった意見はありますか?」
 すると真奈が2人にこう持ち掛ける。
『それについてだけど2人とも背後に張り付いたような感覚はなかった?』
「張り付いたような感覚?」
 舞香が繰り返し言葉で真奈に投げかけると、
『というのも時光が現場に到着して数十分経ってそう言葉にしていたから。具体的な比喩表現がなかったからそうとしか言えないけど改めてどうかな?』
 2人は顔を合わせて答える。
「現場に着いて結構時間が経つけど私たちのエリアからは時光クンの言っていた感覚はないよ」
「舞香さんと同じく。あればお伝え出来たかもしれなかったんですが…。仮にもしその気配の正体が判明したとしてどう対処しますか?」
 際どい質問に悩み答えを出す。
『私の独断だけど、相手から何も仕掛けてこない限りは手を出さずに泳がせてみて。もし命を脅かすほどのことをしてくれば、それに応じた力で防ぐ形をとって周囲の人に被害が及ばないようにお願い出来るかしら?』
「簡単に言ってくれるようだけどやるのは私たちだよ」
『無神経で申し訳ないと思っているわ。でも出来ると信じているから』
 強めに毒づく舞香の言葉に、しょぼんと言う真奈であるが、
「なんてね、ちょっと意地悪言ってみただけ。そんなしょぼくれなくて大丈夫だよ」
『相変わらず舞香は意地悪なんだから』
「フフッ」
 2人のやり取りを見ていた恵がふと目の前を歩く女性を目にした。
 足元がふらついているのが見てとれた。
 比較的距離が近かったため、悟られずに念話で修助に確認する。
『修助さん、今私たちの目の前にいる女性ですが確認お願い出来ますか?』
『大丈夫。恵さんの見立て通り、その女性から17%の注意レベルの数値が確認出来たよ。恵さんが気付くよりも早く綾菜さんが救急を手配したから後は女性の説得をお願い出来るかな?』
『わかりました』
 舞香も状況を察して女性の説得に入る。
「あのすいません、今お時間よろしいですか?」
「……あっ、はい…」
 恵が声をかけると、わかりやすく反応が遅れて女性が返事する。
「突然で申し訳ありませんが医療機関で検査を受けていただきたいのですが、ご都合は大丈夫ですか?」
 舞香が単刀直入に話を持ちかけると女性は頭を下げる。
「はいお願いします。今自分でも連絡を入れようかと思っていたところなので助かります」
「確認のため近日中に注射をされているようでしたら打った方の腕を見せていただけますか?」
「ええ…。どうぞ」
 恵の要求に応じた女性は左腕を見せる。
 ほとんど注射跡はなく確認しづらいが証拠はあった。
「ちなみに注射を打った目的といつ頃なのかお聞かせ願えますか?」
「はい…。打った目的は予防接種のために2~3日前に近くの総合病院で…」
「わかりました。お聞かせいただきありがとうございます」
 舞香の質問にも応じて改めて女性は頭を下げ、その数分後に救急車が到着する。そこに、
「歩果⁉医療機関で待機しているはずじゃなかったの⁉」
 車内に同行していた歩果が出てきた。
「私もそのつもりでしたが絵実先生が医療機関に搬送される直前と着いてからの状態を確認してきてほしいということで来ました」
 まずは自分の経緯を説明した後にこう伝える。
「近々先生からお呼びがかかりメンバーに大切なお話があるそうで、結論から言えば今回複雑な事情が絡んでいる可能性が高いとのことです。医療機関はもちろん、捜査機関という立場でも」
 表情が穏やかではないところを見て深くは追求しなかった。
「嫌でも今後ハッキリわかる、そういうことだね?」
「ええ、今はその解釈で助かります。ではこちらにいる女性を連れて行きますのでまた」
 舞香の短い答えに頷き歩果は女性を優しく救急車の中に誘導してその場を後にした。
「嵐の前の静けさといったところですね」
「うん。悪い方向に傾かなければそれがいいんだろうけど怪しくなってきたね」
「もしそうなっても返り討ちにしましょう舞香さん」
「もちろんそのつもりだよ。さて引き続き調査していこう」
「はい」
 こうして時間の許される限り新宿エリアを見まわる2人であった。
 
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