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第2章 血の追求者
2-05:アナザー捜査
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「救急の方が今こちらに向かっていますので恐れ入りますが詳細はそちらの方でお願いします」
「はい」
東京都池袋の駅付近を中心に人通りの多いところで怜司が巡回をしている。
時光たちとはまた違ったエリアで例の注射をされている人たちがいないか、その確認に回っているため総監からの任務は一時停止している。
必要とあらばまた遂行する形をとっている。
そして今その通りがかりの女性の反応に僅かな違和感があったので呼び止めて簡単な検査をして医療機関に搬送するところだった。
「今の女性を含め一通り確認してきたけど他はいなかったかな?」
『うん、今のところ大丈夫だよ。簡単な観測だけど目立って反応が鈍かったり怪しい行動をとっている人は見られなかったよ』
「そうか」
怜司の確認に対して、警視庁の本部からインカム越しで朱実はその街並みから受ける印象を述べる。
「岩方警視長に繋いでくれるかな?」
『わかった。ちょっと待ってね』
少し間が空くが、すぐに総矢の連絡が来る。
『こちら岩方、怜司何かあったのか?』
「いえ、こちら池袋エリアを確認出来るだけ捜査して一旦落ち着いたのでそのご報告を」
『そうか、お疲れ様。気付いたことはあったか?』
そう問われ今まで見てきたことをまとめて伝える。
「コレといって特別に変わったことは何も。ただこれまで簡易的ではありますが検査した人の割合で6割が女性とやや偏った形で結果が出ました。年齢層も20~30代の世代が中心だという印象ですね」
女性という観点にしてもそうだが年齢層が集中していることに怜司はそう考えている。
『俺が受けた印象とほぼ同じだな。六本木駅周辺を見て回ったが女性の割合が若干多かった。それだけではなく怜司が会議でメンバーに伝えた正確無比な注射、そこについても焦点を充ててみたが気味が悪いほどに正確だった。もちろん女性の体格や背丈を含めて』
「そうでしたか…」
これはいよいよ自分が考えたくもない方向に当てはまりそうなことだと思い、これから起こることについて如何に未然に防ぐかを整理すると同時に改めて起きたことについて朱実に尋ねる。
「朱実さん、まだ事件として大きく取り上げられていないけど、どう見ている?」
インカム越しではあるが、複雑な気持ちであることには違いないとわかった上で怜司は女性目線の意見を求める。
数十秒の沈黙の後、朱実は話を切り出す。
『まだハッキリとコレだという結論は出せないけど、きっと今回自分の支配出来る範囲で私たち組織を襲撃してくるんじゃないかと思っているよ。それも対処するのにかなり厄介な形でね。今の段階では私たちの行動や自分が投資したものの効果の様子見といったところかな。罪のない人に対して不謹慎な言い方になるけど…』
最後は消え入りそうな申し訳ないように言うと怜司がフォローする。
「朱実さんがそこまで畏まることないよ。私の聞き方に非があったから申し訳ない。それでも率直な意見ありがとう」
『ううん。そう言ってもらえると助かるよ。これまで出し合ってきた意見を踏まえて2人の意見よろしいですか?』
朱実の問いにまず怜司から答える。
「そうだね。まずは朱実さんが先ほど言っていた自分が投資したもの、これは話に何度も出てきた注射の効力でどれほど持続するのか、それも生命の危機に晒されないギリギリを見極めて打ったものと見ていいかなと。性別問わず体格にあった適量を体内に注射することで自分が求めている効果を実現させたいように進めていると考えられるかな」
続いて総矢が切り出す。
『怜司が言っていた体内に注射することの効果、俺の考えは俺たちの行動を妨害することで本部を容易に潰すための狙いではないかと考えている。相手の立場を考えた物言いになるが、欲を言ってしまえばその注射された人の効力の勢いで俺たちも潰せることが出来れば儲けといったところだな』
不確定要素が多い中、2人が可能な限り深く掘り下げて先を読む。
その2人の推測を聞いた朱実は総矢に確認する。
『岩方警視長、今のことメンバーや馬堂総監や村富警視監にお伝えしますか?』
その問いに総矢は即座に答える。
『いいや、まだこのことは伝えなくていい。あくまでまだ仮定の話にしか過ぎないし証拠もない。ギリギリまで相手の行動を見てからでも遅くはない』
『わかりました。必要になったら言ってください』
『ああ、その時は頼む』
確認がとれたところで怜司が2人に更に踏み込んだ話をする。
「これまで掘り下げられるところまで話を進めて推測してきたことを踏まえて実際に起きたことを想定しよう。未然に防ぐことがかなり厳しいけど、せめて被害を最小限に抑えるにあたって対策があればその考えをお願いします」
口で言うには簡単だが実際に行動で示すとなると今まで以上に慎重にとらなければ状況次第であっという間に自分が思う以上に悪くなることは2人とも理解している。
これまでよりも長い沈黙が続くが総矢から切り出す。
『言わずともわかってはいるが、首謀者を取り押さえるのが最善だが簡単にはいかないだろう。予防接種や献血目的で注射した人の流れを読み取りそこから範囲を割り出し追跡した方が妥当だろう。相手の土俵を如何に上手く利用するか、今後はそれが重要になるだろう』
その言葉に続いて朱実も切り出す。
『私の方からは可能な限り救急の方を早めに手配することはもちろん、それに加えて今まではただ注射された人の搬送までだったけど、医療機関で搬送された人の記憶の鑑定を依頼して上手くいけば注射した人の顔が割り出せるかもしれないからやってみることにするよ』
2人の異なる着眼点を聞き怜司がまとめる。
「かなり答えづらい問いに対しての考案をありがとうございます。改めて岩方警視長の人の流れを読み取り範囲の割り出し、朱実さんの医療機関に搬送される人の記憶の鑑定、これを主軸として首謀者に先回りされないため動いていきます。相手がどんな手を打ってくるかわからない以上、深追いはしないことを念頭に捜査を進めていきますがよろしいですか?」
『『了解!』』
口を揃えて短く力強い返事がくる。
左耳に着けているインカムをオフにしてその場を後に次の場所に怜司は向かうのであった。
「はい」
東京都池袋の駅付近を中心に人通りの多いところで怜司が巡回をしている。
時光たちとはまた違ったエリアで例の注射をされている人たちがいないか、その確認に回っているため総監からの任務は一時停止している。
必要とあらばまた遂行する形をとっている。
そして今その通りがかりの女性の反応に僅かな違和感があったので呼び止めて簡単な検査をして医療機関に搬送するところだった。
「今の女性を含め一通り確認してきたけど他はいなかったかな?」
『うん、今のところ大丈夫だよ。簡単な観測だけど目立って反応が鈍かったり怪しい行動をとっている人は見られなかったよ』
「そうか」
怜司の確認に対して、警視庁の本部からインカム越しで朱実はその街並みから受ける印象を述べる。
「岩方警視長に繋いでくれるかな?」
『わかった。ちょっと待ってね』
少し間が空くが、すぐに総矢の連絡が来る。
『こちら岩方、怜司何かあったのか?』
「いえ、こちら池袋エリアを確認出来るだけ捜査して一旦落ち着いたのでそのご報告を」
『そうか、お疲れ様。気付いたことはあったか?』
そう問われ今まで見てきたことをまとめて伝える。
「コレといって特別に変わったことは何も。ただこれまで簡易的ではありますが検査した人の割合で6割が女性とやや偏った形で結果が出ました。年齢層も20~30代の世代が中心だという印象ですね」
女性という観点にしてもそうだが年齢層が集中していることに怜司はそう考えている。
『俺が受けた印象とほぼ同じだな。六本木駅周辺を見て回ったが女性の割合が若干多かった。それだけではなく怜司が会議でメンバーに伝えた正確無比な注射、そこについても焦点を充ててみたが気味が悪いほどに正確だった。もちろん女性の体格や背丈を含めて』
「そうでしたか…」
これはいよいよ自分が考えたくもない方向に当てはまりそうなことだと思い、これから起こることについて如何に未然に防ぐかを整理すると同時に改めて起きたことについて朱実に尋ねる。
「朱実さん、まだ事件として大きく取り上げられていないけど、どう見ている?」
インカム越しではあるが、複雑な気持ちであることには違いないとわかった上で怜司は女性目線の意見を求める。
数十秒の沈黙の後、朱実は話を切り出す。
『まだハッキリとコレだという結論は出せないけど、きっと今回自分の支配出来る範囲で私たち組織を襲撃してくるんじゃないかと思っているよ。それも対処するのにかなり厄介な形でね。今の段階では私たちの行動や自分が投資したものの効果の様子見といったところかな。罪のない人に対して不謹慎な言い方になるけど…』
最後は消え入りそうな申し訳ないように言うと怜司がフォローする。
「朱実さんがそこまで畏まることないよ。私の聞き方に非があったから申し訳ない。それでも率直な意見ありがとう」
『ううん。そう言ってもらえると助かるよ。これまで出し合ってきた意見を踏まえて2人の意見よろしいですか?』
朱実の問いにまず怜司から答える。
「そうだね。まずは朱実さんが先ほど言っていた自分が投資したもの、これは話に何度も出てきた注射の効力でどれほど持続するのか、それも生命の危機に晒されないギリギリを見極めて打ったものと見ていいかなと。性別問わず体格にあった適量を体内に注射することで自分が求めている効果を実現させたいように進めていると考えられるかな」
続いて総矢が切り出す。
『怜司が言っていた体内に注射することの効果、俺の考えは俺たちの行動を妨害することで本部を容易に潰すための狙いではないかと考えている。相手の立場を考えた物言いになるが、欲を言ってしまえばその注射された人の効力の勢いで俺たちも潰せることが出来れば儲けといったところだな』
不確定要素が多い中、2人が可能な限り深く掘り下げて先を読む。
その2人の推測を聞いた朱実は総矢に確認する。
『岩方警視長、今のことメンバーや馬堂総監や村富警視監にお伝えしますか?』
その問いに総矢は即座に答える。
『いいや、まだこのことは伝えなくていい。あくまでまだ仮定の話にしか過ぎないし証拠もない。ギリギリまで相手の行動を見てからでも遅くはない』
『わかりました。必要になったら言ってください』
『ああ、その時は頼む』
確認がとれたところで怜司が2人に更に踏み込んだ話をする。
「これまで掘り下げられるところまで話を進めて推測してきたことを踏まえて実際に起きたことを想定しよう。未然に防ぐことがかなり厳しいけど、せめて被害を最小限に抑えるにあたって対策があればその考えをお願いします」
口で言うには簡単だが実際に行動で示すとなると今まで以上に慎重にとらなければ状況次第であっという間に自分が思う以上に悪くなることは2人とも理解している。
これまでよりも長い沈黙が続くが総矢から切り出す。
『言わずともわかってはいるが、首謀者を取り押さえるのが最善だが簡単にはいかないだろう。予防接種や献血目的で注射した人の流れを読み取りそこから範囲を割り出し追跡した方が妥当だろう。相手の土俵を如何に上手く利用するか、今後はそれが重要になるだろう』
その言葉に続いて朱実も切り出す。
『私の方からは可能な限り救急の方を早めに手配することはもちろん、それに加えて今まではただ注射された人の搬送までだったけど、医療機関で搬送された人の記憶の鑑定を依頼して上手くいけば注射した人の顔が割り出せるかもしれないからやってみることにするよ』
2人の異なる着眼点を聞き怜司がまとめる。
「かなり答えづらい問いに対しての考案をありがとうございます。改めて岩方警視長の人の流れを読み取り範囲の割り出し、朱実さんの医療機関に搬送される人の記憶の鑑定、これを主軸として首謀者に先回りされないため動いていきます。相手がどんな手を打ってくるかわからない以上、深追いはしないことを念頭に捜査を進めていきますがよろしいですか?」
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