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第1章 始まりの壁
1-31:残された爪痕
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「してやられたわね」
「まさかここまでとは」
「本当に驚きだよ。でもどうして…」
真奈と修助が苦い顔で、綾菜が不安と疑念を抱きつつ複雑な気持ちでそれぞれ述べる。
達人との戦闘で時光が討ち勝ったことによって起きた突然の出来事である。
フロア全体のシステムが停止してしまい保存されてあるデータも消去されて騒然とした。
物理的な意味で本部に目立った損害はないが、、また何が起こるかわからない以上、本部内にいるのは危険と判断して外に避難していた頃合いで鉄茂と鉢合わせして警視庁の会議室で待機するように言われて現在に至る。
後から会議室に入って来た時光たちから話を聞きメンバーそれぞれ気持ちの整理がついていない様子である。
「若弥のことに関して追求したいところではあるが、今の状態で意見がまとまりそうにないから後日、落ち着いた時にしよう」
「うん。その方がゆっくり話が出来るから」
「それがいいと思います」
メンバーのそれぞれの状況を理解した上で提案した時光に舞香と恵が賛同する。
「若弥に関してはそれでいいとして問題はその抜けた穴をどうするかよね」
「「言われてみれば確かに」」
真奈の厳しい意見に口を揃えて志穂と美穂が険しい顔をする。
「ここにいる皆の中で総監から何か話はなかったの?」
綾菜がメンバーに尋ねても誰も答えられなかった。
少し沈黙が続いた後に扉が開く。
「どうやら全員揃っているようだな」
「総監!」
時光が振り向き様にそう言うとメンバーも鉄茂を見やる。
「まあそう怖い顔せず席に座ってもらえると助かる」
メンバーを席に座るように促して確認出来たところで自分もメンバーの前にある席まで行き話を始める。
「もう既に知っていると思うが、改めて小堂君が組織を脱退しただけではなく今後、我々の敵として立ちはだかることは間違いない」
鉄茂から改めて話をされると少しずつメンバーの気持ちの中で現実として滲み出ていることが雰囲気から読み取れて本題に入る。
「もし彼がここにいる皆を含め罪のない人々の命を脅かす行為を仕掛けてきたその時は彼を抹殺しても構わないと官房長から話があった」
その言葉にメンバー全員が目を見開き息を飲む。
ことの大きさは理解していたが官房長からの正式な発表に改めて思い知らされた。
複雑な心境を抱きつつ鉄茂は話を続ける。
「決定事項ではないから状況次第で殺さずに済むのであれば捕獲で構わない。ただし最終的に、もし束になって小堂君を捕獲し切れず皆の命を脅かすようであれば最高責任者である私が小堂君を抹殺する」
「お言葉を返すようですが総監、本気で仰っているのですか!」
恵が勢いよく椅子から立ち上がり鉄茂に尋ねると、鉄茂は真っ直ぐと無言で頷く。
「そんな…」
「恵、殺したくない気持ちはわかるけど、その時がきてしまったらやるしかないのよ」
真奈も恵と同じく可能であれば抹殺を避けたいと思うが現実を見据えて、あえて厳しくそう口にする。
「だったら抹殺しなくても済むように俺たちが強くなればいいだけのこと。そうだろ?」
時光がメンバーに向けてそう言うと、
「フフッ。時光クンらしいや」
「なんとなくそう言うんじゃないかと思っていたよ」
舞香と修助が場を和ませるように言う。
「簡単に言ってくれるけど勝算はあるの?」
真奈が呆れ気味に尋ねると、
「コレといって今はないけど、ここにいる皆とであればきっといけるんじゃないかと信じているだけだよ」
「あのねえ…」
「まあまあ意気込みがあるだけでもいいんじゃないかな」
誤魔化すようにして笑う時光の意見に溜息を吐く真奈に、やんわりと綾菜が宥める。
「話が変わりますが、今ここにいない怜司さんはこのことを把握されていますか?」
「ああもちろん。私がメッセージを送ったものの数秒で「確かに承りました」と返信が来たよ。彼のことだから私が伝えずともわかっていたんじゃないかな」
「そうでしたか」
恵の質問に鉄茂がそう答えると胸を撫で下ろしホッとする。
更に鉄茂は話を続ける。
「それと今後、氷山君は任務の時間の合間を見てここにいる皆のサポートに回るから安心して臨んでほしいことと、小堂君が抜けてしまった枠に新しいメンバーを紹介する。入ってきてどうぞ」
「はい」
鉄茂にそう言われ扉の前で待機していた女性が入って来る。
綾菜と同じくらいの背丈に黒色のセミロングヘア―で目がパッチリした綺麗寄りの女性である。
「「あっ」」
「あらっ」
舞香と綾菜が口を揃えて、女性は口元に手を添えて少し驚いたように見せる。
「「マイカちゃんとアヤナちゃんの知り合い?」」
ここでも同じく口を揃えて志穂と美穂が尋ねると、先に舞香が答える。
「うん、私の場合は今回起きた事件の容疑者2名の行きそうであろう工場を探している時に道を尋ねた際に教えてくれた上に地図のアップデートもしてくれた人だよ」
「そうだったんだ」
「それじゃあアヤナちゃんは?」
志穂が関心する矢先に美穂が綾菜に問う。
「私は、日本医療機関の研修生時代に絵実先生のもとで一緒に指導を受けてそれから話をして仲良くなれたんだ」
そう言うと綾菜は小さく手を振り、女性はニコッと微笑み返す。
「どうやら知っている人とそうでない人がいるみたいだから改めて自己紹介を頼む」
「はい」
鉄茂に促されメンバーの方を見て軽く会釈して挨拶する。
「改めまして日本医療機関から配属しました三重月歩果と申します。本日から綾さんと一緒の位置で皆さんの怪我や病気はもちろん、精神面でも支援させていただきますのでよろしくお願いします」
ふんわりした柔らかい印象で綾菜とはまた違った優しく安心出来る雰囲気のあるメンバーが加入した。
「まさかここまでとは」
「本当に驚きだよ。でもどうして…」
真奈と修助が苦い顔で、綾菜が不安と疑念を抱きつつ複雑な気持ちでそれぞれ述べる。
達人との戦闘で時光が討ち勝ったことによって起きた突然の出来事である。
フロア全体のシステムが停止してしまい保存されてあるデータも消去されて騒然とした。
物理的な意味で本部に目立った損害はないが、、また何が起こるかわからない以上、本部内にいるのは危険と判断して外に避難していた頃合いで鉄茂と鉢合わせして警視庁の会議室で待機するように言われて現在に至る。
後から会議室に入って来た時光たちから話を聞きメンバーそれぞれ気持ちの整理がついていない様子である。
「若弥のことに関して追求したいところではあるが、今の状態で意見がまとまりそうにないから後日、落ち着いた時にしよう」
「うん。その方がゆっくり話が出来るから」
「それがいいと思います」
メンバーのそれぞれの状況を理解した上で提案した時光に舞香と恵が賛同する。
「若弥に関してはそれでいいとして問題はその抜けた穴をどうするかよね」
「「言われてみれば確かに」」
真奈の厳しい意見に口を揃えて志穂と美穂が険しい顔をする。
「ここにいる皆の中で総監から何か話はなかったの?」
綾菜がメンバーに尋ねても誰も答えられなかった。
少し沈黙が続いた後に扉が開く。
「どうやら全員揃っているようだな」
「総監!」
時光が振り向き様にそう言うとメンバーも鉄茂を見やる。
「まあそう怖い顔せず席に座ってもらえると助かる」
メンバーを席に座るように促して確認出来たところで自分もメンバーの前にある席まで行き話を始める。
「もう既に知っていると思うが、改めて小堂君が組織を脱退しただけではなく今後、我々の敵として立ちはだかることは間違いない」
鉄茂から改めて話をされると少しずつメンバーの気持ちの中で現実として滲み出ていることが雰囲気から読み取れて本題に入る。
「もし彼がここにいる皆を含め罪のない人々の命を脅かす行為を仕掛けてきたその時は彼を抹殺しても構わないと官房長から話があった」
その言葉にメンバー全員が目を見開き息を飲む。
ことの大きさは理解していたが官房長からの正式な発表に改めて思い知らされた。
複雑な心境を抱きつつ鉄茂は話を続ける。
「決定事項ではないから状況次第で殺さずに済むのであれば捕獲で構わない。ただし最終的に、もし束になって小堂君を捕獲し切れず皆の命を脅かすようであれば最高責任者である私が小堂君を抹殺する」
「お言葉を返すようですが総監、本気で仰っているのですか!」
恵が勢いよく椅子から立ち上がり鉄茂に尋ねると、鉄茂は真っ直ぐと無言で頷く。
「そんな…」
「恵、殺したくない気持ちはわかるけど、その時がきてしまったらやるしかないのよ」
真奈も恵と同じく可能であれば抹殺を避けたいと思うが現実を見据えて、あえて厳しくそう口にする。
「だったら抹殺しなくても済むように俺たちが強くなればいいだけのこと。そうだろ?」
時光がメンバーに向けてそう言うと、
「フフッ。時光クンらしいや」
「なんとなくそう言うんじゃないかと思っていたよ」
舞香と修助が場を和ませるように言う。
「簡単に言ってくれるけど勝算はあるの?」
真奈が呆れ気味に尋ねると、
「コレといって今はないけど、ここにいる皆とであればきっといけるんじゃないかと信じているだけだよ」
「あのねえ…」
「まあまあ意気込みがあるだけでもいいんじゃないかな」
誤魔化すようにして笑う時光の意見に溜息を吐く真奈に、やんわりと綾菜が宥める。
「話が変わりますが、今ここにいない怜司さんはこのことを把握されていますか?」
「ああもちろん。私がメッセージを送ったものの数秒で「確かに承りました」と返信が来たよ。彼のことだから私が伝えずともわかっていたんじゃないかな」
「そうでしたか」
恵の質問に鉄茂がそう答えると胸を撫で下ろしホッとする。
更に鉄茂は話を続ける。
「それと今後、氷山君は任務の時間の合間を見てここにいる皆のサポートに回るから安心して臨んでほしいことと、小堂君が抜けてしまった枠に新しいメンバーを紹介する。入ってきてどうぞ」
「はい」
鉄茂にそう言われ扉の前で待機していた女性が入って来る。
綾菜と同じくらいの背丈に黒色のセミロングヘア―で目がパッチリした綺麗寄りの女性である。
「「あっ」」
「あらっ」
舞香と綾菜が口を揃えて、女性は口元に手を添えて少し驚いたように見せる。
「「マイカちゃんとアヤナちゃんの知り合い?」」
ここでも同じく口を揃えて志穂と美穂が尋ねると、先に舞香が答える。
「うん、私の場合は今回起きた事件の容疑者2名の行きそうであろう工場を探している時に道を尋ねた際に教えてくれた上に地図のアップデートもしてくれた人だよ」
「そうだったんだ」
「それじゃあアヤナちゃんは?」
志穂が関心する矢先に美穂が綾菜に問う。
「私は、日本医療機関の研修生時代に絵実先生のもとで一緒に指導を受けてそれから話をして仲良くなれたんだ」
そう言うと綾菜は小さく手を振り、女性はニコッと微笑み返す。
「どうやら知っている人とそうでない人がいるみたいだから改めて自己紹介を頼む」
「はい」
鉄茂に促されメンバーの方を見て軽く会釈して挨拶する。
「改めまして日本医療機関から配属しました三重月歩果と申します。本日から綾さんと一緒の位置で皆さんの怪我や病気はもちろん、精神面でも支援させていただきますのでよろしくお願いします」
ふんわりした柔らかい印象で綾菜とはまた違った優しく安心出来る雰囲気のあるメンバーが加入した。
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