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第1章 始まりの壁
1-27:仕掛けられた罠
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「ここが例のビルだな」
「みたいですね」
時光と恵がそう口にすると、「精神念話」から真奈の連絡が来る。
『今のところビル周辺に変わった様子はなさそうね』
「ああ不審人物も今のところは」
時光の確認がとれたところで真奈が一つ注意を告げる。
『それじゃあビルに入ってから注意を促せないから私が支援出来るのはここまでよ』
「と言いますと?」
『さっき総監から連絡が届いたから今そのメッセージを送るから各自で確認してね』
恵の言葉に真奈は自分で説明するより鉄茂から送られてきたメッセージをメンバーのスマホに送信した。
ビルには見えない壁が展開されていて、その中に入ってしまうと連絡や索敵が遮断されること、屋上には間違いなく若弥がいること、そして今回事件を起こした張本人の達人が潜伏していること、送信が完了して改めて真奈から告げる。
『警視庁の方からも捜査官を配備させているから時光たちは権藤さんを確実に捕獲してね』
「わかった。それじゃあ行ってくるよ」
『気を付けて行ってらっしゃい』
お互いそう言葉を交わして連絡を切ると時光がメンバーに呼びかける。
「皆気を引き締めて行くよ」
その言葉に頷き決意を固める。
ビルの自動ドアが開き中に入って行くと薄暗く不気味なくらいシンとしていて誰もいない様子である。
想像していた以上に空気は重く息も詰まりそうな雰囲気が充満していて、エレベーターやエスカレーターも正常に稼働していたが何があるかわからない以上、利用するのは危険と見てゆっくりと階段から行くことにする。
「それにしても気持ち悪いくらい何もないですね」
「確かに、それほど相手は勝つ自信があるんだろうね」
恵の言葉に周囲を警戒しながら時光が答える。
「いくら自信があるとはいえ罠を一つも張らないとは一体何を考えているんだろうね」
「「まったくだよ」」
疑問を口にした舞香と少し侮られていることに腹を立てているのか、頬を膨らませて愚痴る志穂と美穂に時光は自分の考えを述べる。
「皆の言うことに一理あるよ。だからこそ罠を張らずに正面から俺たちと力比べすることで自分が俺たちより上だと証明することに加えて、俺たちに立ち直れないくらいの精神的ダメージを与えようとする魂胆があるように思えるね」
「それが本当なら尚更負けられませんね」
恵が時光の推測に固く賛同する。
「牽制して相手の出方を見たいところだけど、迂闊に手を出したら危険だね」
「それに人質に取られているワカちゃんのこともあるし」
「時間をかけている余裕もなさそうだし」
舞香、志穂、美穂もそれぞれ述べる。
「まあ今ここで議論するより権藤さんに追求すれば嫌でもわかるさ」
そうこう話して階段を上っていると、ようやく屋上階まで到達する。
「「着いたぁ」」
「まあまあ時間かかったね」
「もう少し早めに歩いた方が良かったですか?」
口を揃えて小さく万歳する志穂と美穂に、涼しい顔してまだ余裕のある舞香に、思っていたよりも遅くなってしまったことにポツリとそう口にする恵である。
そんな中、時光がドアを開けようとする前に確認をとる。
「皆、本題はここから。準備はいい?」
その言葉にメンバーはコクッと頷くと時光が勢いよくドアを開けて屋上に踏み込むと、そこにはメッセージに添付されていた映像のものと同じく若弥がフェンスに括りつけられていた。
状態は悪化して血も濃く滴り落ちていることがわかる。
「「ワカちゃん・ワカ君!」」
「2人とも待つんだ!」
若弥を助け出そうとした志穂と美穂に時光が強く止めに入ったその時、
「ようやくお越しいただけましたか。待ちくたびれましたよ」
目の前の空間から姿を現したのは会議室で見た映像よりも落ち着き払った権藤達人である。
向かい合っているだけでも吐き気がするような覇気を纏わせて有無を言わせない凄みが健在している。
一瞬たりとも気を抜けば、あっという間にやられてしまう強さが伝わり時光たちは身構える。
「何故このようなくどいやり方を?貴方の目的は何ですか?」
今一度改めて達人の口から割り出そうとする時光だが達人はやんわりと切り返す。
「それは私に勝てたらお答えしましょう」
そう言って手を前に翳して時光の前にいた志穂と美穂を宙に浮かせる。
「「えっ⁉ちょっと⁉」」
慌てた2人はなす術なく屋上の隅に置かされた。
続けて時光の後ろにいた舞香と恵も宙に浮かされる。
「時光クン!」
「先輩!」
2人はそう叫び志穂と美穂のいる場所に置かされた。
「抵抗せずとも黙っていれば危害を加えるつもりはありませんよ。森園君でしたね?私は貴方に用があるのですよ」
「嬉しくないものですね」
軽く嫌味の一つ言いながら少しずつ力を加えて身構える時光に達人は4人を隅に置いた周辺に見えない壁を展開させ出られないようにした。
「さてもう既にご存じだと思いますが改めて私が権藤達人です。名称は変わっているようですが私たちの後任がどれほどの力なのか見せていただきますよ」
「お望み通りご覧いただきましょう」
時光がそう言うと早速、抜刀の構えを取る。
「灯絶つことなき心眼の礼、一気一炎が見極めたる生々流転の地、炎裁持って悪行を払う!業尭・炎羅極刀!」
展開された魔法陣から刀を抜き取り、中段に構える。
「さあ始まりです」
達人も態勢を整えて戦いを始める。
「みたいですね」
時光と恵がそう口にすると、「精神念話」から真奈の連絡が来る。
『今のところビル周辺に変わった様子はなさそうね』
「ああ不審人物も今のところは」
時光の確認がとれたところで真奈が一つ注意を告げる。
『それじゃあビルに入ってから注意を促せないから私が支援出来るのはここまでよ』
「と言いますと?」
『さっき総監から連絡が届いたから今そのメッセージを送るから各自で確認してね』
恵の言葉に真奈は自分で説明するより鉄茂から送られてきたメッセージをメンバーのスマホに送信した。
ビルには見えない壁が展開されていて、その中に入ってしまうと連絡や索敵が遮断されること、屋上には間違いなく若弥がいること、そして今回事件を起こした張本人の達人が潜伏していること、送信が完了して改めて真奈から告げる。
『警視庁の方からも捜査官を配備させているから時光たちは権藤さんを確実に捕獲してね』
「わかった。それじゃあ行ってくるよ」
『気を付けて行ってらっしゃい』
お互いそう言葉を交わして連絡を切ると時光がメンバーに呼びかける。
「皆気を引き締めて行くよ」
その言葉に頷き決意を固める。
ビルの自動ドアが開き中に入って行くと薄暗く不気味なくらいシンとしていて誰もいない様子である。
想像していた以上に空気は重く息も詰まりそうな雰囲気が充満していて、エレベーターやエスカレーターも正常に稼働していたが何があるかわからない以上、利用するのは危険と見てゆっくりと階段から行くことにする。
「それにしても気持ち悪いくらい何もないですね」
「確かに、それほど相手は勝つ自信があるんだろうね」
恵の言葉に周囲を警戒しながら時光が答える。
「いくら自信があるとはいえ罠を一つも張らないとは一体何を考えているんだろうね」
「「まったくだよ」」
疑問を口にした舞香と少し侮られていることに腹を立てているのか、頬を膨らませて愚痴る志穂と美穂に時光は自分の考えを述べる。
「皆の言うことに一理あるよ。だからこそ罠を張らずに正面から俺たちと力比べすることで自分が俺たちより上だと証明することに加えて、俺たちに立ち直れないくらいの精神的ダメージを与えようとする魂胆があるように思えるね」
「それが本当なら尚更負けられませんね」
恵が時光の推測に固く賛同する。
「牽制して相手の出方を見たいところだけど、迂闊に手を出したら危険だね」
「それに人質に取られているワカちゃんのこともあるし」
「時間をかけている余裕もなさそうだし」
舞香、志穂、美穂もそれぞれ述べる。
「まあ今ここで議論するより権藤さんに追求すれば嫌でもわかるさ」
そうこう話して階段を上っていると、ようやく屋上階まで到達する。
「「着いたぁ」」
「まあまあ時間かかったね」
「もう少し早めに歩いた方が良かったですか?」
口を揃えて小さく万歳する志穂と美穂に、涼しい顔してまだ余裕のある舞香に、思っていたよりも遅くなってしまったことにポツリとそう口にする恵である。
そんな中、時光がドアを開けようとする前に確認をとる。
「皆、本題はここから。準備はいい?」
その言葉にメンバーはコクッと頷くと時光が勢いよくドアを開けて屋上に踏み込むと、そこにはメッセージに添付されていた映像のものと同じく若弥がフェンスに括りつけられていた。
状態は悪化して血も濃く滴り落ちていることがわかる。
「「ワカちゃん・ワカ君!」」
「2人とも待つんだ!」
若弥を助け出そうとした志穂と美穂に時光が強く止めに入ったその時、
「ようやくお越しいただけましたか。待ちくたびれましたよ」
目の前の空間から姿を現したのは会議室で見た映像よりも落ち着き払った権藤達人である。
向かい合っているだけでも吐き気がするような覇気を纏わせて有無を言わせない凄みが健在している。
一瞬たりとも気を抜けば、あっという間にやられてしまう強さが伝わり時光たちは身構える。
「何故このようなくどいやり方を?貴方の目的は何ですか?」
今一度改めて達人の口から割り出そうとする時光だが達人はやんわりと切り返す。
「それは私に勝てたらお答えしましょう」
そう言って手を前に翳して時光の前にいた志穂と美穂を宙に浮かせる。
「「えっ⁉ちょっと⁉」」
慌てた2人はなす術なく屋上の隅に置かされた。
続けて時光の後ろにいた舞香と恵も宙に浮かされる。
「時光クン!」
「先輩!」
2人はそう叫び志穂と美穂のいる場所に置かされた。
「抵抗せずとも黙っていれば危害を加えるつもりはありませんよ。森園君でしたね?私は貴方に用があるのですよ」
「嬉しくないものですね」
軽く嫌味の一つ言いながら少しずつ力を加えて身構える時光に達人は4人を隅に置いた周辺に見えない壁を展開させ出られないようにした。
「さてもう既にご存じだと思いますが改めて私が権藤達人です。名称は変わっているようですが私たちの後任がどれほどの力なのか見せていただきますよ」
「お望み通りご覧いただきましょう」
時光がそう言うと早速、抜刀の構えを取る。
「灯絶つことなき心眼の礼、一気一炎が見極めたる生々流転の地、炎裁持って悪行を払う!業尭・炎羅極刀!」
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