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Ⅳ 第4の審判
chapter 16 第4の審判 -4
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4 9月2日 第4の審判③
ガララ――
平森が陽太の名前を言おうとしたとき、教室後方のドアが開いた。
そして、そのドアから桜が顔を出し、そのまま倒れた。
桜の顔は物凄い熱があるようで赤く、汗で髪の毛が張り付いている。
息も荒く大きく肩で呼吸を繰り返している。
「桜……」
陽太は呟いた。
生徒たちの視線が一斉に桜へと向けられた。
「桜!」
陽太が声を上げ桜に駆け寄ろうとしたとき平森が笑った。
そして、陽太の前を遮るようにして桜のもとに駆け寄った。
「胡桃沢さん。辛そうだね、可哀相に」
「桜から離れろ」
陽太が平森を睨みいった。
「ふふふ」と低い笑い声を発して、平森は桜の髪の毛を掴んだ。
「いっ……」
桜から苦痛の声が漏れる。
「やめろ!」
陽太が声を荒げる。
桜の髪を掴んだまま、平森は教室の中央へと桜を引きずり込んだ。
「いやぁ……痛いっ」
悲痛な声を上げる。
「平森、お前! 桜から手を離せ!」
平森は陽太と桜を交互に睨みやって、そのまま桜を投げ捨てるように髪を離した。しかし以前として陽太から桜を遮るようにして立つ。
「桜に手を出すんじゃねえ」
「ははは。神谷陽太。キミのその感じが、僕は物凄く嫌いなんだ」
陽太は怒りの表情で、平森に近づこうとした。
「僕に近づかないことをお勧めする」
陽太が平森の手に目をやると、彼はポケットからカッターナイフを取り出していた。
「!」
陽太の足が止まる。
「平森君。今ならまだ間に合う。もうやめにしよう」
霧島が宥めるように告げた。
「間に合う? まるで犯罪者にでも使う言葉だね。寧ろ僕こそが正義だというのに」
平森はしゃがみ込み、息をするのも辛そうな桜の頬にカッターナイフをあてがった。
「胡桃沢さん、いや桜さん、弱いね。それに頼りない友人に囲まれて不幸だ」
「はあ……はあ……」
桜は怯えているように身体をびくつかせている。
「でもさあ。僕はこんなに身体の弱い人間もクラスにとっては、これほどない足手まといだと思うわけだよ……」
平森は桜に顔を近づけ告げた。
「他よりも一歩遅れて着いて来ることしかできない人間は進歩を妨げるからね。僕にとっては邪魔でしかない」
「……」
「平森てめえ!」
陽太は激昂し平森を睨みつけたが、平森も横目で陽太を睨み返した。
「一歩遅れることが許されるのは伴侶だけだ」
平森は無表情でいった。
「……なんだと?」
陽太の顔から血の気が引いた。
次の瞬間、平森は桜の唇に顔を近づけ、自らの唇を交わらせた。
「!」
脱力。
陽太の身体から全てのちからが抜けていった気がした。
桜は嫌がり、必死のちからで平森を突き放した。
そして、必死に唇を擦り、拭いている。
「ははははっ!」
平森は自らの唇をぺろっと舐めて言った。
「僕さ。桜さんのことが好きだった」
「!」
平森の一言に衝撃がはしった。
霧島でさえも驚きを隠しきれない表情をしている。
「なにを……」
陽太は拳に力を込めていた。
桜を人質に取られていなかったら、何も構わずに平森を殴っているはずのようであった。
桜は疑惑の目を平森に向けた。
「う、そ……」
「本当さ」
平森は屈託無い笑みを浮かべる。
「だけど。桜さんは、神谷陽太のことが好きみたいだね」
「……」
桜は黙り込んだまま、平森を睨み佇む陽太のことを見つめた。
平森はそんな桜の表情から全てを察したらしく冷徹な眼差しへと変貌した。
「でもね。僕は、僕以外に目を向けているようなクソビッチはいらないんだよ!」
平森は桜の顔を踏み押さえた。
「いゃっ……」
「平森いいいいい!」
陽太の激昂を霧島が抑えた。
「神谷君、危険だ!」
平森はカッターナイフを陽太の方へと向けた。
そうしたままで、桜を見下ろし告げた。
「桜さん。キミに選ばせてあげるよ」
「……え?」
「僕と神谷陽太。どちらが自分のために、ふさわしい人間か」
「……なにを、言っているの……」
桜は息を切らしながら小さく声を漏らした。
「神谷陽太を選べば、キミは人の告白を残酷にも踏みにじった罪人だ」
「……」
平森は陽太を睨みつけた。
「僕を選んだら、キミは成功者の伴侶だ。僕がキミを一生、罪人という隷属な悪の手から守ってあげるよ」
平森は不敵に唇を指でなぞり、釣り上げた。
「そして神谷陽太は罪人になって死ぬ」
陽太も桜も、驚愕し、絶望した。
「きゃははははははははははは!」
教室中の全てが、平森の狂気とともに邪悪な空気に包まれていた。
ガララ――
平森が陽太の名前を言おうとしたとき、教室後方のドアが開いた。
そして、そのドアから桜が顔を出し、そのまま倒れた。
桜の顔は物凄い熱があるようで赤く、汗で髪の毛が張り付いている。
息も荒く大きく肩で呼吸を繰り返している。
「桜……」
陽太は呟いた。
生徒たちの視線が一斉に桜へと向けられた。
「桜!」
陽太が声を上げ桜に駆け寄ろうとしたとき平森が笑った。
そして、陽太の前を遮るようにして桜のもとに駆け寄った。
「胡桃沢さん。辛そうだね、可哀相に」
「桜から離れろ」
陽太が平森を睨みいった。
「ふふふ」と低い笑い声を発して、平森は桜の髪の毛を掴んだ。
「いっ……」
桜から苦痛の声が漏れる。
「やめろ!」
陽太が声を荒げる。
桜の髪を掴んだまま、平森は教室の中央へと桜を引きずり込んだ。
「いやぁ……痛いっ」
悲痛な声を上げる。
「平森、お前! 桜から手を離せ!」
平森は陽太と桜を交互に睨みやって、そのまま桜を投げ捨てるように髪を離した。しかし以前として陽太から桜を遮るようにして立つ。
「桜に手を出すんじゃねえ」
「ははは。神谷陽太。キミのその感じが、僕は物凄く嫌いなんだ」
陽太は怒りの表情で、平森に近づこうとした。
「僕に近づかないことをお勧めする」
陽太が平森の手に目をやると、彼はポケットからカッターナイフを取り出していた。
「!」
陽太の足が止まる。
「平森君。今ならまだ間に合う。もうやめにしよう」
霧島が宥めるように告げた。
「間に合う? まるで犯罪者にでも使う言葉だね。寧ろ僕こそが正義だというのに」
平森はしゃがみ込み、息をするのも辛そうな桜の頬にカッターナイフをあてがった。
「胡桃沢さん、いや桜さん、弱いね。それに頼りない友人に囲まれて不幸だ」
「はあ……はあ……」
桜は怯えているように身体をびくつかせている。
「でもさあ。僕はこんなに身体の弱い人間もクラスにとっては、これほどない足手まといだと思うわけだよ……」
平森は桜に顔を近づけ告げた。
「他よりも一歩遅れて着いて来ることしかできない人間は進歩を妨げるからね。僕にとっては邪魔でしかない」
「……」
「平森てめえ!」
陽太は激昂し平森を睨みつけたが、平森も横目で陽太を睨み返した。
「一歩遅れることが許されるのは伴侶だけだ」
平森は無表情でいった。
「……なんだと?」
陽太の顔から血の気が引いた。
次の瞬間、平森は桜の唇に顔を近づけ、自らの唇を交わらせた。
「!」
脱力。
陽太の身体から全てのちからが抜けていった気がした。
桜は嫌がり、必死のちからで平森を突き放した。
そして、必死に唇を擦り、拭いている。
「ははははっ!」
平森は自らの唇をぺろっと舐めて言った。
「僕さ。桜さんのことが好きだった」
「!」
平森の一言に衝撃がはしった。
霧島でさえも驚きを隠しきれない表情をしている。
「なにを……」
陽太は拳に力を込めていた。
桜を人質に取られていなかったら、何も構わずに平森を殴っているはずのようであった。
桜は疑惑の目を平森に向けた。
「う、そ……」
「本当さ」
平森は屈託無い笑みを浮かべる。
「だけど。桜さんは、神谷陽太のことが好きみたいだね」
「……」
桜は黙り込んだまま、平森を睨み佇む陽太のことを見つめた。
平森はそんな桜の表情から全てを察したらしく冷徹な眼差しへと変貌した。
「でもね。僕は、僕以外に目を向けているようなクソビッチはいらないんだよ!」
平森は桜の顔を踏み押さえた。
「いゃっ……」
「平森いいいいい!」
陽太の激昂を霧島が抑えた。
「神谷君、危険だ!」
平森はカッターナイフを陽太の方へと向けた。
そうしたままで、桜を見下ろし告げた。
「桜さん。キミに選ばせてあげるよ」
「……え?」
「僕と神谷陽太。どちらが自分のために、ふさわしい人間か」
「……なにを、言っているの……」
桜は息を切らしながら小さく声を漏らした。
「神谷陽太を選べば、キミは人の告白を残酷にも踏みにじった罪人だ」
「……」
平森は陽太を睨みつけた。
「僕を選んだら、キミは成功者の伴侶だ。僕がキミを一生、罪人という隷属な悪の手から守ってあげるよ」
平森は不敵に唇を指でなぞり、釣り上げた。
「そして神谷陽太は罪人になって死ぬ」
陽太も桜も、驚愕し、絶望した。
「きゃははははははははははは!」
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