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Ⅰ 第1の審判
chapter 1 罪人 -1
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1 9月16日 罪人
今は、生徒たちが騒ぐ授業の合間の休憩時間。
生徒たちは閉鎖された教室という空間から解放され、この廊下という次なる閉鎖空間にて自由を味わう。
生徒たちは自分自身がいかにこの限られた青春の一時を謳歌しているかを語り合う。
もしくは友人たちと楽しげな仮面を被り、豊かな時間を作り出そうとお決まりの台詞を掛け合う。
随分とお気楽で滑稽で無様な時間である。
そこに不釣合いな男子生徒が廊下の向こうからゆっくり歩いてきた。
その足取りは重く、ふらふらと不恰好だ。
髪もボサボサで、まるでずっと洗髪していないかのようだ。きょろきょろと周りを見回しては何かを警戒している。
もはやその様子は周囲全てに対し『恐怖』を感じていると言ったほうが正しいかもしれない。
ずっと何かに怯えており、ぶつぶつと何かを呟いている。
そのとき、その怯えた男子生徒はとある教室から飛び出してきた女子生徒とぶつかってしまい、ともに転倒してしまった。
瞬間、男子生徒は驚愕し、動揺し、絶望し、眼球はぐらぐらと焦点を掴めなくなり、
「う、うわああああああっ! ご、ご、ごめんなさいっ! 許してください! お願いします! この通りです!」
と、その女子生徒に向かって土下座して謝り始めた。
女子生徒はその様子を見て困惑し続けているが、男子生徒は顔面を床に叩きつけるように泣きじゃくりながら、ひたすら謝り続けている。
その額には血も滲み出す。
そんな学校の廊下での奇妙な異端者を周りの生徒は警戒し、
「気持ち悪い」「気味が悪い」
とでもいうような目付きで見下し、一定の距離を空ける。
関わり合いたくないとでもいうように。
急に男子生徒は目を見開いて、天を見上げ、大きな叫びを上げた。
「あああああああああああああああああ!」
この世の終わりとでもいうような叫びを。
「きゃああっ!」
「うわっ! 何やってんだ、こいつ!」
周りの生徒たちは男子生徒から離れていく。
男子生徒は着ていた制服のYシャツを脱ぎ捨て、自分の爪を腹部に勢いづけて刺し込んでいた。
「ぐあああ、いだい……ご、ごめんなざい……ゆ、ゆるじて……くだ、ざ……」
涙と恐怖でぼろぼろになった顔とはかけ離れ、男子生徒の指はまるで何者かに操られているかのように腹部をえぐり裂いていく。
生温い血が男子生徒の腹部からだらだらと垂れ流れていく。
「ああああああ、あああ、あ……あ、あ」
そして男子生徒の長い断末魔は途切れ、その場に倒れこみ、絶命した。
そこ残ったのは恐怖と絶望と悲鳴を浴びた空間と生臭い血の匂いだけだった。
その男子生徒の腹部には血と傷で『罪人』という文字が刻み込まれていた。
今は、生徒たちが騒ぐ授業の合間の休憩時間。
生徒たちは閉鎖された教室という空間から解放され、この廊下という次なる閉鎖空間にて自由を味わう。
生徒たちは自分自身がいかにこの限られた青春の一時を謳歌しているかを語り合う。
もしくは友人たちと楽しげな仮面を被り、豊かな時間を作り出そうとお決まりの台詞を掛け合う。
随分とお気楽で滑稽で無様な時間である。
そこに不釣合いな男子生徒が廊下の向こうからゆっくり歩いてきた。
その足取りは重く、ふらふらと不恰好だ。
髪もボサボサで、まるでずっと洗髪していないかのようだ。きょろきょろと周りを見回しては何かを警戒している。
もはやその様子は周囲全てに対し『恐怖』を感じていると言ったほうが正しいかもしれない。
ずっと何かに怯えており、ぶつぶつと何かを呟いている。
そのとき、その怯えた男子生徒はとある教室から飛び出してきた女子生徒とぶつかってしまい、ともに転倒してしまった。
瞬間、男子生徒は驚愕し、動揺し、絶望し、眼球はぐらぐらと焦点を掴めなくなり、
「う、うわああああああっ! ご、ご、ごめんなさいっ! 許してください! お願いします! この通りです!」
と、その女子生徒に向かって土下座して謝り始めた。
女子生徒はその様子を見て困惑し続けているが、男子生徒は顔面を床に叩きつけるように泣きじゃくりながら、ひたすら謝り続けている。
その額には血も滲み出す。
そんな学校の廊下での奇妙な異端者を周りの生徒は警戒し、
「気持ち悪い」「気味が悪い」
とでもいうような目付きで見下し、一定の距離を空ける。
関わり合いたくないとでもいうように。
急に男子生徒は目を見開いて、天を見上げ、大きな叫びを上げた。
「あああああああああああああああああ!」
この世の終わりとでもいうような叫びを。
「きゃああっ!」
「うわっ! 何やってんだ、こいつ!」
周りの生徒たちは男子生徒から離れていく。
男子生徒は着ていた制服のYシャツを脱ぎ捨て、自分の爪を腹部に勢いづけて刺し込んでいた。
「ぐあああ、いだい……ご、ごめんなざい……ゆ、ゆるじて……くだ、ざ……」
涙と恐怖でぼろぼろになった顔とはかけ離れ、男子生徒の指はまるで何者かに操られているかのように腹部をえぐり裂いていく。
生温い血が男子生徒の腹部からだらだらと垂れ流れていく。
「ああああああ、あああ、あ……あ、あ」
そして男子生徒の長い断末魔は途切れ、その場に倒れこみ、絶命した。
そこ残ったのは恐怖と絶望と悲鳴を浴びた空間と生臭い血の匂いだけだった。
その男子生徒の腹部には血と傷で『罪人』という文字が刻み込まれていた。
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