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日常11【side.パスカル】――友人への誓い
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しおりを挟む「あ、あとさ! なんかその……エロい話も出てきたことだし? その流れでついでに質問していい?」
「何?」
「お前がアニキと付き合い始めてからずっと気になってたんだけど……してる、よな?」
「そんな話を訊いてどうするの?」
「終わったあと、アニキのことを適当に放置してないかなって心配だった」
「……ごめん、そういう意味ね。たぶん心配いらないと思うよ? タケル先生みたいに優しくはないけど、あれこれ喋って楽しく過ごしてる」
始める前から終わったあとまで、文句や不満はしょっちゅう言われるが。ただのじゃれ合いだ。
本当に嫌な思いをさせてしまった場合、エリックは何も言わず俺を避けると知っているから。恨み節をぶつけられるところまで込みで楽しんでいると言ってもいい。
「俺たちがどんなふうにしてるのか気になる?」
「え、えっと、アニキとするときもお前が入れる方なのかな……ってのはぶっちゃけ気になってた。アニキには絶対そんなこと訊けないから」
「俺が抱く方だよ」
「マ、マジか……あんなシブい男のアニキが……そっち、なんだ……」
「そういうキミは? アニキみたいにワイルドな男を目指す身として、自分が上になりたい願望はないの?」
「……そっ、それはそのっ……オレは……」
「あ、やっぱりいいや。何となく想像ついちゃって聞く気が失せた」
以前エリックに恋していた子だ。あの人を想いながら一人でしていただろう――きっと、憧れの格好いい男に自分が抱かれる側として。
「オレは別に、タケルのしたい方に合わせてやってもいいと思ってるけど? お前はアニキに無理強いしてねーよな?」
「んー……。最初は『逆だろ』って文句言われたけど、今はたぶん、下で満足してくれているんじゃないかな」
「なんで?」
「顔や反応を見れば……ねぇ。これ以上のことは秘密」
ノアの顔面は真っ赤だ。
過去の恋愛とはいえ、彼はエリックと一緒に暮らしている身でもある。あの人のエッチな姿を頭に浮かべてほしくない。話題を変えようとした直後、ノアの顔に影が差した。
「今更だけど……タケルは大丈夫かな? お前の本音を知ったら心配になってきた」
「どういうこと?」
「……あんま思い出したくないけどさ。タケルもアニキに対して、お前と似たことしてるじゃん? 表面上はアニキと楽しそうに喋ってるけど……お前みたいに負い目とか恐怖を隠して、オレのために無理やり仲良しのフリしてたらどうしよう」
「……タケル先生だけ? エリックがトラウマで苦しんでいるかもしれないとは思わないの?」
「アニキはその件について、自分の気持ちを語ってくれたから。オレはそのときの言葉を信じてる。昨日タケルを誘ったのもアニキだし、『ノアの相手がタケルで良かった』とも言ってくれた」
タケル先生の恋が叶った直後。
俺はエリックに本音を訊ねている。
そのとき彼は「相手がタケルで良かったとまでは言えないが、ノアが幸せなら構わない」と言っていた。その後二人の様子を見ているうちに心境が変化したのだろう。
「でも……タケルには『二度とその話をするな』って言ってあるし、あいつの口から詳しく聞かされたら冷静でいられる自信もないし。アニキのことをどう思ってるのかちゃんと聞いたことなくて、本音は分からない。もし無理してアニキと付き合ってるならオレもしんどいな」
タケル先生は良くも悪くも真っ直ぐすぎる。融通が利かなくて暑苦しい。
空気や感情の機微を読めるタイプでなく、世渡り上手とは言いがたい――これはあの人に恋をして追い掛けながら感じたこと。俺とは違う意味で敵を作りやすそうだ、とも思う。
俺みたいにどす黒い感情をひた隠しにして、平然と仲良しのふりができるほど器用ではない。これを短所と呼ぶか長所と呼ぶかは状況次第だろう。
ノアの誕生日プレゼントの件も、俺より前にエリックへ相談している。仮に負い目を感じているなら「迷惑を掛けた相手に相談するなど貴重な時間を奪う行為。断じて赦されない」とでも言いそうだ。
そもそも論として、タケル先生がノアを騙し続けられるとも思えない。
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