【完結/おまけ追加中】幻惑の華 ※次回のNewシナリオ追加は3月21日~予定です

双葉

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日常7【side.エリック】――対照的な二組

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 十二月下旬。
 二学期の終業式が直前に迫り、様々な雑務に追われていた今日。

 残業を終えて帰宅した直後、「もういい、勝手にしろっ!」という苛立ちの声が耳を貫いた。また・・始まったか……?

 愚痴祭り覚悟でリビングへ入る。
 ノアはソファにもたれ、スマホを睨みつけていた。

「お前、またタケルと喧嘩したんだろ」

「だって! あいつマジ酷いんだもん!」

「先日はデレデレニヤニヤとメールしてたくせに。お前たちの関係、浮き沈みの激しいジェットコースターみたいだな」

「デレデレもニヤニヤもしてねーよっ!」

「コレはアレだよな……〝ケンカップル〟とか言うヤツ。傍から見る分には面白いが、ノアにとっちゃ死活問題だよな。今日は何にキレてんだ?」

「土曜に会う約束、勝手にキャンセルされた」

 今週土曜――終業式の翌日か。
 就職組のノアは冬休み丸々オフだが、進学組の生徒は補習などで登校する。と同時に、三年の担任も受験生のフォローで忙しい。俺含め、日程調整に苦労している教師が多いはずだ。

「大人ってのはいろいろ大変なんだ。ワガママ言っても仕方な――」

「ちげーんだよ! 仕事で忙しいとか疲れてるとかならオレだって納得するし! そうじゃなくて……『少し距離を置く』って言われた」

 ……何だ、その不穏な発言は。
 まだ両想いになって一ヶ月程度。一緒に暮らす計画まで立てているというのに、もう駄目になりそうということか? 仮にノアがワガママ放題で振り回したとしても、あのタケルがそう簡単に冷めると思えないが……。

「何があったのかイチから話せ」

「……うん。先にメシ準備するよ」

 今夜の夕食はカレー。
 ダイニングテーブルに着いて食事を摂りつつ、ノアは経緯を説明してくれた。

 発端は今日の放課後。
 ノアは日直だったらしい。
 ホームルームのあとで日誌を書き、教室に残っていたタケルに提出したというが――。

「漢字の間違いが多いから直すようにって言われてさ。タケルの指示で書き直してたんだけど……教室に二人きりだし? ちょっとくらいいいかなーと思って手を握ったらブチギレられた」

「……それで?」

「さっき電話が掛かってきて……そのときと全く同じことを注意されたんだ。ちゃんと『学校で触るのは絶対ダメって言われてたのにごめん』って謝ったんだぜ? なのに――」

 タケルの言い分はこうだ。

『ノアは事の重大さを理解できていない。教師と生徒が関係を持っているなど、表沙汰になれば大問題に発展する。公私の区別をきちんとつけられないのなら土曜の約束はキャンセルだ』

 ――と一方的に突きつけられ、ノアもムキになってしまった。売り言葉に買い言葉で喧嘩勃発という流れだったらしい。

「『オレがせっかく時間空けてやったんだから会えよ』って言ったら、『何故そんなに上から目線なんだ』ってキレられた」

「素直に『会いたい』と言えないノアもノアだが、タケルは相変わらずツンデレ対処が下手だな」

「……それでさ! 『先に好きになったのはお前だから』って返して、『君も好きと言ってくれたのだから対等だ』って言われて。『好きなら誰もいない教室で触るくらいいいじゃん』、『好きだからこそ君との関係を確実に守りた――」

「だーもー、恥ずかしい奴らだな! 好き好き言い合いながら喧嘩してんじゃねーよ。新手のノロケか?」

「ちげーよっ! あいつ『そもそも都合が合うたび部屋に招いていたら〝卒業まで正式交際しない〟という約束の意味もない。自制心を持つために少し距離を置いた方がいいな』って自己完結しやがったもん。酷くね?」

 心情的には、可愛い弟を全面擁護してやりたいが。第三者として意見を述べるのであれば〝どっちもどっち〟としか……。


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