91 / 194
日常5【side.ノア】――愛言葉(アイコトバ)
5
しおりを挟む《申し訳ないが
ちょっと遅くなる
帰る前に連絡入れるから
好きに過ごしていてくれ》
もしかしたら、向こうもオレたちと似た会話をしていたかもしれない。
メール画面をタケルに見せる。
その視線がスマホ画面からオレに移ると、どちらともなくキスをした。
……もう抑えなくていいよな?
二人でオレの部屋へと移動した。
さっき我慢した影響もあるのだろう、ベッドに上がる前から身体は完全な興奮状態。
タケルの唇がオレの肌を撫でていく。時折ちくっと痛みが走るが、それすら心地いい。熱い手がオレのいたるところを這い、つま先から頭の先まで敏感になっていく。
「――ノア。君の中に入ってもいいか?」
タケルの瞳がオレを見下ろしている。色気を孕んだ眼差しに耐え切れず、顔を背けた。
「わざわざ確認しなくていいってば」
「もっとじっくり愛撫してほしいと言われたらその気持ちを優先したいんだ」
「もう大丈夫だから。早く来いよ」
タケルの熱がオレの中へ。
この瞬間は毎回緊張する。
痛みが全くないわけじゃない。
でも幸せでドキドキする。
身体に負担が掛からないようにと、タケルはオレの顔を見つめながら、丁寧すぎるくらい慎重に事を進めていく。もどかしさで身体が疼き、ぎゅっとシーツを握り締めた。タケルの眉間に皺が寄る。
「……締め付けが強いな」
「ご、ごめん。痛かった?」
「大丈夫だ。気持ちいい」
握り締めていたシーツを手放す。それと同時に深い息が漏れた。前と後ろ、どちらもタケルの身体で快楽へと導かれる。油断すると変な声が出てしまいそうで、きゅっと唇を結んだ。
「声、我慢しなくていいぞ?」
「やだっ。一人だけめちゃくちゃ興奮してるみたいでハズイもん」
「そんなことはない」
深いキスとともに何度も突かれ。快感と愛情が幾重にも傾れ込んでくる。ずっとこのままでいられたらいいのに――そんな考えが頭に浮かんだ。心も身体もおかしくなりそうだ。
「た、たけるっ……好きっ」
普段は照れくさくて言えない言葉が、思わず口から出てしまった。タケルの動きがぴたりと止まる。
「そんなことを言われたら……」
「な、なんだよっ」
「すまない。大人げないが冷静さを欠いてしまいそうだ」
荒々しい口付け。身体の奥深くまで喰らいつこうとするかのように何度も貫かれた。全身が痺れそうなほどの興奮に支配されていく。
唇を離したタケルがオレのモノを掴んだ。手と腰の動きがいっそう激しくなる。
「ま、待って! 手はそんな速くしたら無理だから!」
「ノア、君は僕のものだ」
「それ――」
「言っていいのだろう?」
「――あ、もうダメっ!」
オレがイった直後、タケルも強く脈打った。
……あんなの耐えられるわけない。
気持ちよすぎだっての。
繋がったまま、タケルはオレの頬に指を添えた。
「本当はもう少し時間を掛けたかったんだが、君があまりにも嬉しいことを言ってくれるから。抑えられなかった」
「……ま、まぁ、たまにはオレも言わねーと不公平だし? たまに……だからなっ」
「それでもいい。君の心の中に『好き』という想いがあるのなら、僕は幸せだ」
「……なかったらヤらねーよっ」
タケルはオレの額にキスを落とし、「愛してる」という言葉をくれた。
……行為の時間も大好きだけど。
好きな人のくれる「愛してる」が、結局のところ一番嬉しいかもしれない。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる