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みんなドキドキ実践訓練のお時間です。
初めての賞与がかかっていることもあり、団員達は漲っています。

試験内容は至って簡単。
討伐する魔物ランクで決まります。
だけど誰の協力も得ず己の力のみで討伐するとなると、果たしてどのランクに挑めるか。
試験管は団長・副団長。それぞれ自分たちの部下を見てもらいますよ。
不正発覚は最下位ランクです。正々堂々頑張りましょう。

万が一があるので、1部隊ずつスタート。
他の部隊は要塞でお留守番。
午前中出来なかったお仕事をしていてね。

ソロとなると討伐ランクはD・Eが多いようだ。
たまにCに挑む者もいるけど、命の危険が迫りハインたちに保護されている。
どの部隊も単独でCはまだ無理らしい。

全ての部隊が試験を終える頃には日が暮れ始めていた。
最後、団長・副団長クラスの実践訓練だ。

見るのも勉強ということで、団員たちは希望者のみ観戦。
夜勤の方はお仕事頑張ってください。

副団長ペアはアインハードさんがかなり粘ってBランクの討伐に成功。
コニーさんはCを討伐した。

強大な魔物を討伐する上官の姿に団員たちは白熱して大盛り上がりだ。
今この場でワインでも配れば、すごく儲かる気がする。しないけど。

そしてとうとう団長ペア。

奥へと進む団長ペア、途中遭遇する魔物を薙ぎ払うので、こっそり回収。
え? 新商品開発のために魔物素材は大事なのですよ。

そして相対するBランク。
ホーエナウ伯爵は結界で身を守り、様々な魔術を駆使して討伐。

Aランクに挑戦してみては? と問うと「魔力不足で倒れてしまうよ」と笑っていた。

そして最後はハインだ。

「……モリガン様」

「なに?」

「俺がAランクを討伐したら愛人にしてください」

「は!?」

「約束ですよ。あの時の“ご褒美”頂きますね」

クレイトン様をエスコートした件ですね。
忘れてません。いえ、忘れてないよ?
ただ抜けてただけです。あははっ……。

拒否する間もなく、ハインは魔物の元へ。
相手はAランク。炎を吐き出す猪だ。

猪突猛進! と駆け出してくる猪を剣で受け止め去なす。
そして剣を振り下ろした。
が、予想以上に硬くて斬れないようだ。

騎士とはいえ、魔力があれば魔術が使えるから、何名かは魔術も駆使して魔物討伐をしていた。
だがハインの使う魔術は上位魔術だ。
魔術師団員が使うレベルと同じ。

それにプラスあの剣技。
こりゃチートだ。

けど、相手だって強者だ。
そう簡単にはやられまいと攻撃を繰り出す。
何発か当たり口の中が切れたのか、ハインは血を吐き出していた。

「危ない!」

「ッ!」

猪の体当たり攻撃が当たり、ハインが吹っ飛ばされてしまった。
着地はするものの、身体に傷が増えていく。

「Aランクってこんな強いのか……」
「てか、団長やばくね? いけるのか?」

ハラハラしながら見ていると、ハインと目が合った。
その目に諦めはない。

けれど、猪も負けじと交戦している。
お互い満身創痍だ。

「諦めない」

「ハイン……」

そこまでなんで……。

愛人なんておかしいでしょ。
私はそんな器用じゃないから、誰か一人しか愛せないよ。
殿下という婚約者がいる今、恋愛はできないし、する気もない。
だって私は……故郷に帰るつもりだから。


「団長!」
「あぶない!」


「~~~~わかった! 分かったから負けないで!!」



「……言質、取りましたよ」


突然、猪が飛ばされた。
地面に打ち付けられた猪は、追い討ちに氷魔術のダメージを与えられ動かなくなった。


「手を抜いていた罰とはいえ、痛かったですね」


「へ?」


手を抜いていた?
その言葉に私を含め団員も混乱。

ホーエナウ伯爵と副団長ペアは、呆れた様子で溜息。
アインハードさんは「そこまでして閣下を欲するとは、団長も男ですね」と笑っていた。
ホーエナウ伯爵は「お前があんな小物に苦戦するなんてどこか具合でも悪いのかと思ったぞ」と言っていた。
三人は演技だと見抜いていたの?


「え、まさか……演技?」
 
「そうですな。ブルゴー領騎士団長にとってあの程度敵ではないということですな。
いやはや恐れ入る」

「伯爵こそ、本気を出せば宜しいのに」

「私はそこそこ歳だからね。
全力を出す根性がないのだよ」

「ご冗談を」


剣に付いた血を振り払い鞘に納めると、途端団員たちの歓声が湧き上がった。
上官達の圧倒的な強さに興奮しているようだ。
自分達の目標は上官だと、理解したに違いない。

私の心中は大騒ぎだけど、い、一応労いの言葉をかけなければ……!


「ホーエナウ伯爵、お疲れ様でした」

「ブルゴー伯爵。いやいや、歳にはかないませんな」

「何を仰る。随分余裕に見えましたよ?」

ホーエナウ伯爵、本気を出したらAも討伐出来るんじゃないかな。
そう思わざるおえないほど、余裕ある戦いだった。

そして、ハイン……の方へ向く勇気がない。
冷ややかなアンナの視線が突き刺さる! 痛い。痛すぎるよ、アンナ!


「閣下」


どっきーん!


「ご褒美は後ほど。二言は許しませんよ」

「は、はい……」

私の言質を取るためにわざと苦戦させて見せ、いざ倒すとなったらあっさりAランクを討伐してしまうなんて、さすがはヴァレンロード侯爵の分家当主。
その実力は計り知れない。
倒された猪を回収し、今晩のおかずにしよう。
これだけ大きければ全員分あるでしょう。




────





夕飯はみんなが頑張って狩った魔物肉を使ってバーベキュー。
外に大きな網を持ち出して、薪を焼べて火をおこし、焼き上げる。

大人数のため、10箇所で焼きながらセルフでどうぞ。

こんな時ご飯欲しいと思うのは、やはり私は日本人なんだなぁ。

みんなを労うためワインを用意した。
夜勤の人には私が回復魔術をかけ、お仕事をお願いし、仕事終わりに飲むワインを瓶で渡した。楽しんでね。


「モリガン様」

「うぐっ!」

「大丈夫ですか?」

「げほ、ごほ……ダイジョウブデス」

大丈夫じゃないですよ。
今貴方と関わるのは控えたいと思っているところなんですけど。
先程の件で!

アンナの冷ややかな視線を感じながら、有無言わさぬ笑顔を向けてきたハインが私の手を取り立ち上がらせると要塞の中へ。
そんな私達の背中を見つめる騎士・魔術師団のみんなが、私達をネタに賭け事を始めていたとかなんとか。

ある一定の距離を保ちつつ、アンナが背後にいるのが分かるからまだ安心していたのに、ハインが手を挙げ合図を送ってしまったがためにアンナはお辞儀して更に距離を置くことに。

ああぁ、いかないでぇ……。


「……やっと二人きりになれましたね」

「言っておくけど回復魔術はかけないよ」

「えぇ、貴女を嵌めたお仕置き……でしょう?」

言い回しがいちいち色っぽいのは何で!
聞いてるこっちが恥ずかしいじゃない。
拗ねて視線を逸らすと、厚みのある手が私の頬に添えられた。
目だけをハインに向ければ、ッ! ……何その表情。反則……!
とろけるような甘い笑顔。
甘やかしたくて仕方ない、愛おしいと、これでもかと伝えてくる彼の表情に私の“女”が反応する。

近づく唇。
拒否……できる人がいるなら会ってみたい。

「ん……」

「っは、足りません」

「は、ん……」

自分のことを愛してやまないと触れてくる色男を拒む術など持っていない。
婚約者はいるものの、仮であり、自ら望み愛した相手とはちょっと違う。
ふしだら! だらしない! と言われても仕方ないけど、なら貴女はこのイケメンたちに勝てますか!?
自分のことを最高の女だと言い張るイケメンを拒めるなら聞いてやろうじゃないか。


「ハ、イン……これ以上は」

「まだ貴方の味を覚えきれていない」

「っん……も、ぉ」

本当に味わられている気がする。
葉をなぞり、舌を絡めては私の唾液を吸っている。
こっちの世界の人ってなんでこんなにキスが上手いの?
ソファーに座らされているとはいえ、腰にきちゃう。

「はっ……可愛い」

「ッ!」

ほらまただ。
その表情に勝てる気がしない。
濡れた唇を舐められ、誘うかのように優しいキスを落とすイケメンめ。

余裕のある殿下とは違い、心から求めてくるハイン。
どちらの男性も私には勿体なさすぎるほどのいい男だ。

耳を撫でられ、愛していいかと聞かれれば頷かずにはいられない。
頬を染め、目を細めて嬉しそうに微笑まれ、もう死んじゃいそう。

「ひっ、ぁ! んん…」

「こちらがお好きで?」

「よ、わい……だけッ!」

「いい反応ですね」

「ふぁ!」

中までじっくり舐められ、腰が跳ねる。
力が抜け、ソファーに崩れてしまえば、ハインが覆いかぶさってきた。

「殿下とはどこまで愛し合いましたか」

「え? ん、ンンッ……どこまでって」

「婚前とはいえ、溺愛している殿下の事だ。貴女を愛さずにはいられないはず」

「そんな、っあ!」

「ここには触れられましたか?」

ココと指されたのは胸。
あの時殿下にされた事を思い出してしまい、顔に熱が集まる。
恥ずかしがる私を見たハインは躊躇することなく服を脱がせ始めた。
慌てて止めるものの、ベストもブラウスも全開になり、押し潰し隠していた胸が露わになる。

「こんな締め付けて苦しいでしょう。
今、緩めます」

「だめ、あ!」

くそ、貴族の男はコルセットの外し方を心得ているのか!
すんなり緩められたコルセットから溢れる乳房が揺れた。

「綺麗だ……

「ッ! な、まえ……なんでっあ!」

「貴女の本名ぐらい知っている。
……俺が惚れた女はモリガン・ブルゴーじゃない。“モリガ カオリ”だ」

「ふぁ、ッんん……やっ」

涙が出た。
自分の本当の名前を久しぶりに聞いたからだろうか。

「ハイン……だめ、やめ……ひゃ!」

「強くされるのが好きなんだな。
強くて可愛くてエロいなんて、最高にいい女だ。ソソられる」

「~~~ッあ、あ!」

ハインの手が胸を弄ぶ。
弾力を愉しむように揉み、突起を摘み私を快楽へ落とそうとしている。
まんまとハマっていく気がする。
本当の名前を呼ばれた事で身体が素直になってしまった。

「カオリ、好きだ……」

「も、ここ……だめぇ、ンンッ」

「押し潰して隠すほど大きいとは誤算だった。
魔王討伐時もこうしていたのか?」

「だってぇ……じゃ、まだから……」

「邪魔なんてことあるか。
……いや、こんなそそる身体を見せられちゃ隊員が暴走してしまうな。
見るのも触るのも俺だけでいい」

「舐めちゃいやぁ……ッ、ハイン!」

「っ、カオリはどこも甘いな」

「~~~ッ!!」

もうお願いだから名前で呼ばないで。
身体がいう事を聞かなくなって、ただ与えられる快楽に開いているのが分かる。

耳元で甘く囁かれ、名前を呼ばれて、自分が本当は誰なのか知らされる事で今まで我慢してきたものが溢れていく気がする。

流れる涙を舐め取られ、額にキスが落ちる。
ぐずぐずになるまで甘やかされ、撫でられる腰と尻が喜ぶように反応していた。

「……殿下より先に、なんて打首だな。
俺は愛人らしくを貰うからな?」

「ひっ!? ふぁ……そ、んなとこ……」

「今日はしない。
また今度、ゆっくり味わせてもらう」

布越しに尻の割れ目をなぞられ、ぞくぞくと新しい感覚が体中に走った。
これからイケナイ事をされる気がして、変に身体が高揚している。


「そこ、ぞくぞくする……」

「ココを触られるのは初めてか」

「ンンッ……そんなとこ、触る人いな、いよぉ……」

はろくな男がいないみたいだな。
こんなにいい反応するのに、誰も触った事がないなんて。
いや……それはそれで俺は最高に嬉しいが」

「やぁ……も、いやだってばぁ……」

「イヤ? いいの間違いだろ」

「んん!!」

お尻がこんなに気持ちいいなんて初めて知った。
こういう行為は初めてじゃないし、処女でもない。
人並みに経験あるけど、ここまで濃い行為は初めてだった。
焦らされている身体は早く早くと彼を求めて開いていて、割れ目をなぞる指が際どい所まで下りてくると水音が響いてしまう。

「濡れてる」

「あ、言わないで……ッ」

「こんなに濡らして誘ってくるなんて、カオリはエロいな。
殿下はココも触ったのか?」

「さわってない……」

「……ならまだ触るわけにはいかないな」

なんでそこだけ律儀なのよ!
騎士様の王族への忠誠はそこまで達するのか!

「~~っあん、そこ、やだぁ……」

「もどかしい?」

「うん……! うん……!」

「ッ煽るなよ……触りたくなるだろ」

「だってぇ……ぁ、我慢できな……」

「ックソ!」

「あっ!~~~っあぁ!」

とうとうハインの手が熟れて熟した下部へ移動した。
とはいえ、本当に殿下以上のことはしないつもりなのか、手の平で蕾を包み込み上下に動かしている。
その刺激でさえ、焦らされ続けた身体は飛ぶ様に喜び、更に蜜を垂らし始めた。

「すげ……ぐちゃぐちゃ」

「ひっ、あ……あぁ、ん!」

「直接触らなくても硬くなってるのが分かるな。
ククッ…………えろっ」

「んん~~!! やら、つぶしちゃ……」

「潰せるほど勃ってるが悪い。
ほら、隠さないとまた押すぞ」

「ひゃあ! やだぁ……ふぁ」

「もうそろそろか……」

部屋中に反響する水音と耳の中を犯す水音が、もはやどちらの音かも分からない。
理性などとっくに手放してしまった私は、早く絶頂を迎えたいと自ら彼の手に腰を擦り付けてしまう。
そんな私を見てハインは嬉しそうに微笑み、息が出来ないほどの濃厚なキスをしてきた。

「んっ!? んん、っん!」

「は……ッカオリ」

「んん~~ッ!! んっんっ……ふあぁ」

息が出来なくなると身体は快楽のみ拾ってしまうから、私はあっさり達してしまった。
ハインの首元に腕を回し、傍から見れば私がハインを求め抱きついているように見えるだろう。

力抜けソファーにそのまま横たわる私を見ながら、ハインは掌にべっとり付いた液を舐めた。
その姿があまりにもいやらしくて、羞恥で私の顔は赤くなっただろう。

「クスッ……気持ちよかった?」

「~~~~ッ! ば、ばか!!」

いつの間にか砕けた口調が、私達の関係を確定させた事を意味しているのだろうか。
額に落ちる優しいキスもこの笑顔も、彼の汗も。

私は殿下を裏切ってしまった。



「……そんな顔するなよ」

「んっ……」

真っ直ぐ好意を抱いてくれる二人の男性を傷付けはしないだろうか。
私はやっぱり器用な人間ではない。

「愛人っていうのは、貴族間ではよくあることだ」

「え……?」

「貴族は政略結婚だ。
だからこそ、“愛する人”は別にいる。
結婚相手とは政治を。愛人とは恋愛を。
それが貴族間のルールだ。
王族である殿下が知らないわけないだろ」

「ンッ……もうキスはいいから……」

「やだね」

「ンッ……ふぁ」

「カオリとキスするの、ハマりそうだ」

私が落ち込んでいるのを見兼ねてフォローしてくれたんだね。
そこまで優しくされてしまえば、私は……ハインの中に入ってしまう。

本当に私とのキスが好きなのか、嬉しそうに何度もキスをしてくるハインが可愛く見えてきているのは、もう末期かもしれない。


「俺はカオリの“愛する人”だ。
モリガ カオリという異世界人を愛し、故郷に帰りたくなくなる程甘やかして、俺なしじゃ生きていけなくなるようにしてやるから……愛してる。カオリ」



これはやばい。
……勝てる気がしない。
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