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魔物討伐隊の試験はスムーズに終わった。
驚くことに、予想よりも多くの人が試験を受けに来てくれた。
元騎士団から平民まで様々な人がいて、平民でも魔術が使える人も多く、剣や槍が使えたりしたり。
ハプスブル王国では考えられない、各々腕の立つ平民ばかりだった。
20名ほど採用し、一度水鳥討伐に皆で出た。
私は何かあった時のために控え、討伐隊メンバーを4グループに分け、それぞれ討伐にあたった。
問題なく討伐できたグループは2つ。
出来なかったグループは要訓練。
ウィルスに任せ、週一で報告を義務付けた。
寝具開発部門はというと、持ち主のいなくなった貴族の邸を改装し、工場にした。
水鳥一羽から取れる胸毛のみで作る品と羽の部分と混ぜて低価格で作る品の2種類を作成。
貴族向けと庶民向けに分けることにした。
料理部門はというと、まずは領内で振る舞う準備をしている。
塩唐揚げをフライドチキンと改名し、メニューを増やして食堂を開くつもり。
そして今日は、その商品片手にハプスブル王国商業ギルドを訪問した。
「これはこれは。
マクシミリアン殿下、お久しゅうございます」
「堅苦しい挨拶は不要。
今日はブルゴー領主の婚約者兼経理者として来ている」
「左様でございますか。
で、そちらのお方がお噂の……?」
「モリガン・ブルゴーでございます。
貴重なお時間を頂き、感謝申し上げます」
「お美しい女性と時間を共にできるのであれば、いくらでも」
淑女の礼をし挨拶をすると。私の手の甲に口付けするふりをする。
その人は、商業ギルドマスターのアントン・ヴェルザー。
ヴェルザー家は商業ギルドを牛耳る一家であり、唯一鑑定魔法が使える血であるという。
大陸中にある商業ギルドの長は、ヴェルザーの血縁者なのだ。
「ほぉ……これはなかなか」
「ヴェルザー男爵、斬られたいか」
「いま魔法陣が見えましたけど、もしかして私に鑑定をかけられたのですか?」
「さすがは殿下。我らの専売特許を駆使されるお方だ。
王族でなければ、我がギルドの副官に就かれるほどのお力、実に惜しいです。
そしてブルゴー伯爵も気づかれるとは恐れ入る」
「鑑定魔法を人に向けて無断使用は禁止されているはずだが?」
「ははは! これはお厳しい。
鑑定魔法の魔法陣は通常見えぬもの。
我が血以外気付かれたのは初めてです。
それにしても、ブルゴー伯爵。
その美しい装の下に隠した宝。
さそがし殿下を満足させていらっしゃるのでしょう」
「なっ…」
「ヴェルザー」
「おぉ、怖い怖い。
それではお二人のお話を伺うと致しましょうか」
なんて笑っているけど失礼じゃない。
後ろで控えるアンナとセバスチャンの放つ雰囲気がピリピリしているし、殿下に至っては殺気ダダ漏れです。
対人鑑定を禁ずる理由はこれか。
けれど、ギルドマスターは大して気にしていない様子。
そうか、もう駆け引きは始まっているんだ。
「これは?」
「魔物を素材とした、寝具と料理です」
「ほぉ?興味深いですな。
鑑定させて頂きます」
アンナとセバスチャンに運ばせた商品をテーブルへ置くと、初めて見る素材にギルドマスターは興味津々。
手に取り、匂いを嗅ぎ、鑑定をかける。
すると、大きな寝具に鑑定をかけた瞬間、マスターの顔つきが変わった。
かかった。
私は事前にアンナから渡された扇子を広げ、口元を隠す。
アンナからは、表情を殺せない時に使えと言われているからね。
慌てた様子で料理と少量ずつ持参した魔物肉にも鑑定をかけ、更に目を見開いた。
「……驚きました。
まさか魔物がこれほど価値のあるものだとは。
魔物といえば焼却するのが当たり前でしたが、今まで損をしていたということですか」
そうそう、これらには大きな価値があるのですよ。
交渉、スタートです。いいですね?殿下。
頷き頂きました。
「これらを商品登録したいのですわ。
勿論、魔物を素材とした商売特許も含めます」
マスターの眉が動いた。
「壟断されると?」
「ならば返そう。
ヴェルザー男爵家は違うと?」
品質保証は鑑定魔法をかけて得るため、売買目的をするにあたり、必ず商業ギルドを通さなくてはならない。
品質保証=国の保証
鑑定料、そして商品登録料、特許料など、様々な料金を請求し、全てにおいて金銭を要求するのだ。
「壟断なんて酷いですね。
魔物を素材とするには狩ることを前提とし、そして得た素材が害かどうか鑑定をしなければ、無暗に手を出す者が現れるのは明らか。
民を守るためでもあるのですよ?」
「聞こえはいいですがね」
マスターは大きな利益を目の前に、手を出せないことに屈辱の色を滲ませる。
私は扇子を閉じ、まっすぐ彼を見つめた。
私だってやればできるんですよ? なにせ日本では社畜ですからね。
「他でもない私が言うのです。
魔物狩りは危険で、命を落とすことも容易い。
貧困に悩む平民の多くの命を守り、栄えることが目的ですわ」
「この寝具の価格は、我ら王族が使う羽毛寝具の1割にすぎない。
つまり、少しの努力で平民でも手に入るというわけだ」
「い、1割ですか!?
羽毛寝具と変わらぬ質をたった金貨30枚で販売すると!?
そんなの──」
「ちなみに、こちらの混合素材寝具は金貨2枚です」
「2枚!?」
通常の綿寝具は銀貨50枚。
王族御用達羽毛寝具は金貨300枚。
銀貨100枚で金貨1枚になる。
労働階級の月収が平均銀貨80枚。
少し頑張れば買える金額だ。
(銀貨=日本円でいう100円)
「それを許可すれば商況が激変してしまうではありませんか」
「その通りだ」
今まで貴族相手に高額請求していた羽毛商会には大きなダメージだ。
「労働階級の人々にも、寒い冬を乗り越える術を。
食貧小な民たちに膳を与えたいのです」
「はっ。さすがは勇者様だ。
勇者の次は神にでもなるつもりか?」
随分と嫌味ですね。
「ふふ、神になどなりたくもありませんわ。
ねぇ、ヴェルザー男爵。
我が領土になぜ商業ギルドを設けられないのでしょうか?」
「死の街に愛する家族を送り込む奴などいないだろう」
「そうね」
死の街。
我が領を他領はそう呼んでいると、アンナから聞いていた。
初めは怒りを覚え、悔しくてたまらなかった。
私にとって、ブルゴー領は今を生きる場所。愛着がある。
「その死の街はこれから他領を上回る大領に変わる。
今この時、我が領土で開設の判断をしなければならないのではなくて?」
「構わないぞ。ヴェルザー男爵。
魔物素材の特許を受理しないのであれば、直接他領との取引を行うだけだ。
先代ルーカス・ヴェルザーの失敗を生かし、ここまで大きなギルドに導いた男爵なら、容易く理解できるのではないか?」
ここまでギルドマスターが渋る理由はひとつ。
利益の独占を防ぎたいからだ。
売買取引において品質保証が必須のハプスブル王国は必然的に商業ギルドへ依頼が必要だが、こちらには殿下がいる。
ハプスブル王国第三王子、ハプスブルの天使が保証するとなれば、疑うものはいないだろう。
ならこちらは個人で動けばいいのだが、私たちの目的は他にある。
「ヴェルザー男爵、私は商いにおいて素人。
だからこそ、貴方様のお力添えを頂きたいの」
ここは強気でにっこり微笑みましょ?
そうすれば、相手に拒否権が無いことを理解させられる。
「一応、聞きましょうか」
商談成功の秘訣。
ひとつ、相手の興味を引け。
この商談を聞かねば損と感じさせよ。
「今回、この業を行うにあたり、商会を設立致します。
名前はブルゴー商会。
そしてそのひとつに魔物討伐隊を設立します。
そこでヴェルザー男爵、いえ、ギルドマスター様。
各所に存在する商業ギルドで魔物素材の買取を行って頂きたいのです」
ふたつ、利益ある取引だと思わせろ。
長期にわたり、どれほどの利益を生むのか算出させよ。
「勿論、無償なんて言うつもりは毛頭ございません。
ギルドマスター様、買取窓口を受けていただいた際、私の商会から買取金額の2割をお渡しいたします。
貴重な鑑定魔法を使用頂き、適切な対応をお願いしたいのです」
いわば、代理業務だ。
大陸全土に散った魔物達が素材として価値があるか判断するのに、鑑定魔法が必要。
毎度殿下にお願いするわけにもいかない。
そこで代理料を支払い、引き受けてもらうのが、今回の交渉内容だ。
「なるほど。実に惹かれる内容です。
ですが、我らの負担を増やすからにはもう少し増して頂かないと話になりませんな」
「仰る通りですわ。
名高きヴェルザー家の魔法を使用頂きますものね」
「3だ。
3割なら引き受けても良いだろう。
魔物素材を用いた商売の要を得るのであれば、こちらとしても味のある話……いや、契約だ」
「いえ、2割ですわ」
「ほぉ?強気ですね。
それでは商談を逃してしまい──」
「ただし、当商会品の購入を全て2割引させて頂くのをお約束します」
そしてみっつ。
相手の要求を断り、主導権はこちらにあることを示せ。
そして、将来利益を提示し、有無を言わせてはならない。
「……決まりだな」
殿下は手を差し出すと、アンナが契約書を渡した。
そしてそれを私の前へ。
私はマスターの表情を見て、にっこり微笑んだ。
時は有限。
商人の好きな言葉だって、いけ好かない宰相が言っていたもの。
この場で契約を交わすとしよう、
「参りました。
まさかモリガン様がここまで出来る方とは嬉しい誤算です」
「ふふ、ありがとうございます。
アントン様」
契約書にサイン、頂きました。
殿下にお渡しし、しっかり不備がないか確認してもらうと、一枚はマスターへ、もう一枚はアンナへ手渡した。
「本日は実に有益な時間でございました。
この商品の宣伝はお任せください」
「あら、宜しいの?」
「勿論。買取引が多くなければこちらの手取りも少なくなってしまいますからね。
それと、先程の無礼の詫びでございます」
「全くだ。次はない」
「ハプスブルの天使が溺愛するのは強き勇者。
なかなか面白いですね」
そう言ってギルドマスターは微笑んだ。
驚くことに、予想よりも多くの人が試験を受けに来てくれた。
元騎士団から平民まで様々な人がいて、平民でも魔術が使える人も多く、剣や槍が使えたりしたり。
ハプスブル王国では考えられない、各々腕の立つ平民ばかりだった。
20名ほど採用し、一度水鳥討伐に皆で出た。
私は何かあった時のために控え、討伐隊メンバーを4グループに分け、それぞれ討伐にあたった。
問題なく討伐できたグループは2つ。
出来なかったグループは要訓練。
ウィルスに任せ、週一で報告を義務付けた。
寝具開発部門はというと、持ち主のいなくなった貴族の邸を改装し、工場にした。
水鳥一羽から取れる胸毛のみで作る品と羽の部分と混ぜて低価格で作る品の2種類を作成。
貴族向けと庶民向けに分けることにした。
料理部門はというと、まずは領内で振る舞う準備をしている。
塩唐揚げをフライドチキンと改名し、メニューを増やして食堂を開くつもり。
そして今日は、その商品片手にハプスブル王国商業ギルドを訪問した。
「これはこれは。
マクシミリアン殿下、お久しゅうございます」
「堅苦しい挨拶は不要。
今日はブルゴー領主の婚約者兼経理者として来ている」
「左様でございますか。
で、そちらのお方がお噂の……?」
「モリガン・ブルゴーでございます。
貴重なお時間を頂き、感謝申し上げます」
「お美しい女性と時間を共にできるのであれば、いくらでも」
淑女の礼をし挨拶をすると。私の手の甲に口付けするふりをする。
その人は、商業ギルドマスターのアントン・ヴェルザー。
ヴェルザー家は商業ギルドを牛耳る一家であり、唯一鑑定魔法が使える血であるという。
大陸中にある商業ギルドの長は、ヴェルザーの血縁者なのだ。
「ほぉ……これはなかなか」
「ヴェルザー男爵、斬られたいか」
「いま魔法陣が見えましたけど、もしかして私に鑑定をかけられたのですか?」
「さすがは殿下。我らの専売特許を駆使されるお方だ。
王族でなければ、我がギルドの副官に就かれるほどのお力、実に惜しいです。
そしてブルゴー伯爵も気づかれるとは恐れ入る」
「鑑定魔法を人に向けて無断使用は禁止されているはずだが?」
「ははは! これはお厳しい。
鑑定魔法の魔法陣は通常見えぬもの。
我が血以外気付かれたのは初めてです。
それにしても、ブルゴー伯爵。
その美しい装の下に隠した宝。
さそがし殿下を満足させていらっしゃるのでしょう」
「なっ…」
「ヴェルザー」
「おぉ、怖い怖い。
それではお二人のお話を伺うと致しましょうか」
なんて笑っているけど失礼じゃない。
後ろで控えるアンナとセバスチャンの放つ雰囲気がピリピリしているし、殿下に至っては殺気ダダ漏れです。
対人鑑定を禁ずる理由はこれか。
けれど、ギルドマスターは大して気にしていない様子。
そうか、もう駆け引きは始まっているんだ。
「これは?」
「魔物を素材とした、寝具と料理です」
「ほぉ?興味深いですな。
鑑定させて頂きます」
アンナとセバスチャンに運ばせた商品をテーブルへ置くと、初めて見る素材にギルドマスターは興味津々。
手に取り、匂いを嗅ぎ、鑑定をかける。
すると、大きな寝具に鑑定をかけた瞬間、マスターの顔つきが変わった。
かかった。
私は事前にアンナから渡された扇子を広げ、口元を隠す。
アンナからは、表情を殺せない時に使えと言われているからね。
慌てた様子で料理と少量ずつ持参した魔物肉にも鑑定をかけ、更に目を見開いた。
「……驚きました。
まさか魔物がこれほど価値のあるものだとは。
魔物といえば焼却するのが当たり前でしたが、今まで損をしていたということですか」
そうそう、これらには大きな価値があるのですよ。
交渉、スタートです。いいですね?殿下。
頷き頂きました。
「これらを商品登録したいのですわ。
勿論、魔物を素材とした商売特許も含めます」
マスターの眉が動いた。
「壟断されると?」
「ならば返そう。
ヴェルザー男爵家は違うと?」
品質保証は鑑定魔法をかけて得るため、売買目的をするにあたり、必ず商業ギルドを通さなくてはならない。
品質保証=国の保証
鑑定料、そして商品登録料、特許料など、様々な料金を請求し、全てにおいて金銭を要求するのだ。
「壟断なんて酷いですね。
魔物を素材とするには狩ることを前提とし、そして得た素材が害かどうか鑑定をしなければ、無暗に手を出す者が現れるのは明らか。
民を守るためでもあるのですよ?」
「聞こえはいいですがね」
マスターは大きな利益を目の前に、手を出せないことに屈辱の色を滲ませる。
私は扇子を閉じ、まっすぐ彼を見つめた。
私だってやればできるんですよ? なにせ日本では社畜ですからね。
「他でもない私が言うのです。
魔物狩りは危険で、命を落とすことも容易い。
貧困に悩む平民の多くの命を守り、栄えることが目的ですわ」
「この寝具の価格は、我ら王族が使う羽毛寝具の1割にすぎない。
つまり、少しの努力で平民でも手に入るというわけだ」
「い、1割ですか!?
羽毛寝具と変わらぬ質をたった金貨30枚で販売すると!?
そんなの──」
「ちなみに、こちらの混合素材寝具は金貨2枚です」
「2枚!?」
通常の綿寝具は銀貨50枚。
王族御用達羽毛寝具は金貨300枚。
銀貨100枚で金貨1枚になる。
労働階級の月収が平均銀貨80枚。
少し頑張れば買える金額だ。
(銀貨=日本円でいう100円)
「それを許可すれば商況が激変してしまうではありませんか」
「その通りだ」
今まで貴族相手に高額請求していた羽毛商会には大きなダメージだ。
「労働階級の人々にも、寒い冬を乗り越える術を。
食貧小な民たちに膳を与えたいのです」
「はっ。さすがは勇者様だ。
勇者の次は神にでもなるつもりか?」
随分と嫌味ですね。
「ふふ、神になどなりたくもありませんわ。
ねぇ、ヴェルザー男爵。
我が領土になぜ商業ギルドを設けられないのでしょうか?」
「死の街に愛する家族を送り込む奴などいないだろう」
「そうね」
死の街。
我が領を他領はそう呼んでいると、アンナから聞いていた。
初めは怒りを覚え、悔しくてたまらなかった。
私にとって、ブルゴー領は今を生きる場所。愛着がある。
「その死の街はこれから他領を上回る大領に変わる。
今この時、我が領土で開設の判断をしなければならないのではなくて?」
「構わないぞ。ヴェルザー男爵。
魔物素材の特許を受理しないのであれば、直接他領との取引を行うだけだ。
先代ルーカス・ヴェルザーの失敗を生かし、ここまで大きなギルドに導いた男爵なら、容易く理解できるのではないか?」
ここまでギルドマスターが渋る理由はひとつ。
利益の独占を防ぎたいからだ。
売買取引において品質保証が必須のハプスブル王国は必然的に商業ギルドへ依頼が必要だが、こちらには殿下がいる。
ハプスブル王国第三王子、ハプスブルの天使が保証するとなれば、疑うものはいないだろう。
ならこちらは個人で動けばいいのだが、私たちの目的は他にある。
「ヴェルザー男爵、私は商いにおいて素人。
だからこそ、貴方様のお力添えを頂きたいの」
ここは強気でにっこり微笑みましょ?
そうすれば、相手に拒否権が無いことを理解させられる。
「一応、聞きましょうか」
商談成功の秘訣。
ひとつ、相手の興味を引け。
この商談を聞かねば損と感じさせよ。
「今回、この業を行うにあたり、商会を設立致します。
名前はブルゴー商会。
そしてそのひとつに魔物討伐隊を設立します。
そこでヴェルザー男爵、いえ、ギルドマスター様。
各所に存在する商業ギルドで魔物素材の買取を行って頂きたいのです」
ふたつ、利益ある取引だと思わせろ。
長期にわたり、どれほどの利益を生むのか算出させよ。
「勿論、無償なんて言うつもりは毛頭ございません。
ギルドマスター様、買取窓口を受けていただいた際、私の商会から買取金額の2割をお渡しいたします。
貴重な鑑定魔法を使用頂き、適切な対応をお願いしたいのです」
いわば、代理業務だ。
大陸全土に散った魔物達が素材として価値があるか判断するのに、鑑定魔法が必要。
毎度殿下にお願いするわけにもいかない。
そこで代理料を支払い、引き受けてもらうのが、今回の交渉内容だ。
「なるほど。実に惹かれる内容です。
ですが、我らの負担を増やすからにはもう少し増して頂かないと話になりませんな」
「仰る通りですわ。
名高きヴェルザー家の魔法を使用頂きますものね」
「3だ。
3割なら引き受けても良いだろう。
魔物素材を用いた商売の要を得るのであれば、こちらとしても味のある話……いや、契約だ」
「いえ、2割ですわ」
「ほぉ?強気ですね。
それでは商談を逃してしまい──」
「ただし、当商会品の購入を全て2割引させて頂くのをお約束します」
そしてみっつ。
相手の要求を断り、主導権はこちらにあることを示せ。
そして、将来利益を提示し、有無を言わせてはならない。
「……決まりだな」
殿下は手を差し出すと、アンナが契約書を渡した。
そしてそれを私の前へ。
私はマスターの表情を見て、にっこり微笑んだ。
時は有限。
商人の好きな言葉だって、いけ好かない宰相が言っていたもの。
この場で契約を交わすとしよう、
「参りました。
まさかモリガン様がここまで出来る方とは嬉しい誤算です」
「ふふ、ありがとうございます。
アントン様」
契約書にサイン、頂きました。
殿下にお渡しし、しっかり不備がないか確認してもらうと、一枚はマスターへ、もう一枚はアンナへ手渡した。
「本日は実に有益な時間でございました。
この商品の宣伝はお任せください」
「あら、宜しいの?」
「勿論。買取引が多くなければこちらの手取りも少なくなってしまいますからね。
それと、先程の無礼の詫びでございます」
「全くだ。次はない」
「ハプスブルの天使が溺愛するのは強き勇者。
なかなか面白いですね」
そう言ってギルドマスターは微笑んだ。
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