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【case1:血に染まる少女の独白】
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【翅を染めた天使達の話】
赤黒く、錆びた鉄のような生臭い匂い
目に写る光景は到底キレイな物ではなかった
起きたら【全てが無かった事に】
辛かったあの日々が全て消えてなくなって
手を伸ばしても届きはしなかった
【宝物】を掴み取って幸せな生活に……。
そんな夢を見ていた
目を瞑って、ひたすらに
これが現実じゃない事だけを
ただ祈っていたんだ
あの奇病が流行り出したのはいつだったか
その病は【美しい天使の様な白い翼】を
まだ幼い子供達に与えるという
何処にも飛んで行けることはない翅
子供達に苦痛を与え続ける事と引き換えに
その命尽きるまで蝕み喰らい育つ翅を授け
いつかは本当に天使のよう天の国へと誘う病
これは
そんな残酷で美しい病に罹った子供達のお話
???
『さぁさぁ寄ってらっしゃい
此れは世にも奇妙で、けれど儚く美しい
[天使]達の哀しく愛しい御話
如何ぞ、最後迄…このドール[人形]達の
演じる終幕を…貴方の眼で…。
どうか…見届けてくれます様に…。』
【 】は手招く、其の妖美な手付きで
美しく儚い[人形劇場]へと誘うのだ
???
『其れでは…第一話…始まりのFanfareを』
【case1:血に染まる少女の独白】
とある町のとある家に
優しく博識で自慢の父と
柔らかく微笑う料理上手な母と
小さく可憐な少女の3人で
幸せに暮らしていた家族がおりました。
そんな幸せな生活の終わりを告げる日
少女の誕生日の日全ては
狂い崩れ落ちてしまったのです。
最初に狂ったのは
幸せが崩れ始めたのは何時だったか?
----------------------------------------
[CASEⅠ:堕ちゆく天使へ捧げるワルツを]
パパとママが私に優しい笑顔で
1つ縫いぐるみをプレゼントしてくれた
【私が10歳の誕生日を迎える素敵な日】
パパとママが居なくなっちゃった悲しい日
助けることもできずに泣くしかなかった私
翅なんて、神様なんて大嫌いだって
その日私は思った………▽
いつだったのか。
少女は泣き虫で
毎日部屋の隅1人で泣いていた
そんな少女へ、まるで罰が与えられたように
背中から小さな翅が生えてきたのです。
その翅は歩くたびに背中も翼も全身も
もがれ抉られる程の酷い激痛を与え
体を蝕んでいく
けれど其の翅は天使や鳥の様な翅ではなくて
【自由に何処へでも飛んで行ける翅】
そんなものではありませんでした。
ある日苦しみ泣いている少女を見つけた母
母は少女の翼を見ると
少女の頭を撫で抱き締めながら
父に少女が【病気】になってしまったと
溢れる涙と嗚咽と共に打ち明けました。
父は隠すことなく少女の手を優しく握ると
少女の病気の話、街中の子供達が罹っている
いつかは【本当の天使】みたいに
子供のままの無垢な躰で、痛みと引き換えに
羽が綺麗に育ち終わったら天の国へ行く
そんな病気だと悲しそうな顔で教えたのでした。
それでも両親は少女が病気になっても
今までと変わらずに優しい父と母で
身動きが取れなくなってしまった少女を
大切に可愛がり【私達の愛しい宝物】
【だから何があっても絶対に護る】
天の国へなんて行かせたりなどしない
そう微笑いながら毎日優しく介抱してくれたのです。
そんな日々が続き、少女が生まれて
10回目の誕生日の日【その日は特別】で
両親が少女に【楽しい1日にしてみせる】
そう約束した
【幸せな1日】になる筈だった日の事でした
幸せが壊れてしまうのは呆気ないもので
【3人の家】に【男】がいきなり入ってきて
この日、少女の幸せの全てが終わりを告げました。
少女と母の前、男は容赦無く
父を何回も何回も動かなくなるまで
銀色に光るナイフが赤に染まり切るまで
何回も何回も刺し貫き
少女を抱き締め震えていた母を
抱き寄せ頭を撫でると背中を一突き
動かなくなった母にキスをして
カタカタ震えて動けない
少女の頭を撫でながら言いました
『これは秘密の出来事だよ。
誰かに言ったら【叔父さん】がイヴを
【パパとママと同じに】しちゃうからね?
良い子なイヴは【叔父さんとの約束】
………守れるよね?』
歪に歪んだ笑顔、あまりにも理不尽な約束
両親の赤に染まった服、手で
少女を抱き締め微笑うから
弱虫で1人じゃ何もできない少女には
【叔父さん】との約束を
守る事しか出来ませんでした。
【叔父さん】は【ママが好き】で
【パパが嫌い】でした
【叔父さんからママを取ったんだ】と
父の体を切り刻みながら少女に告げるのです
【だから仕方ないんだ】
【これは罰なんだ】と、【叔父さん】は
ニッコリと無邪気な子供のように
少女に微笑い掛け幸せそうに
『イヴはマリアに良く似ているからね』
少女は母に似ているから
少女は母の代わりになれるから
【わざと残したんだ】と教えてくれたのです
その日、少女の誕生日の日から
少女と叔父さんの2人の暮らしが始まりました……▽
----------------------------------------
[CASEⅱ:天使の鳥籠]
翅が生え日に日に育っていくたびに
何もかも1人じゃ出来なくなっていく
逃げることもできない少女を見て
【叔父さん】は心底幸せな表情をし
母に似ているから綺麗だから
【愛しているよ】と
毎日毎日【呪い】のように繰り返し繰り返し
言い続けました
少女が綺麗だから奪われたくないと
【痛い事】【怖い事】もする様になり
傷を痛みを痣を証を残していく日々
『誰も神様だって私を助けてはくれない』
そんな少女の心の拠り所は大好きな両親から
誕生日に貰った【お人形】だけになりました。
そのお人形を抱きしめて少女は、お人形に
【ジル】と言う、名前をつけました
父の書斎にあった
まだ難しそうな本に書いてあった名前
少しでも父を感じられるように
ジルは《報復》と言う意味だと知った上で
決して【この気持ち】を忘れないように
両親の事を思いながら
生き続けようと強く決めたのです
ある日【叔父さん】が
少女にプレゼントをくれました。
『やっぱりイヴの細くて綺麗な首には
首輪が良く似合うね…綺麗で愛おしいよ』
嬉しそうに、幸せそうに
【叔父さん】が少女に与えたのは
【何処にも逃げることが出来ない枷】
首輪と手枷、足枷
鎖を無理やり引かれるたび
痛くて苦しくてたまらなかった
そんな少女を見て【叔父さん】は
いつも笑顔で幸せそうにするのです。
少女の中で【何か】が壊れていく音がしました
翼が大きく育っていく度
痛みで気が狂いそうで
いっそこのまま消えることが出来たらとすら
考える日々
【叔父さん】は
少女の翼に全身に撫でて触れて
少女が痛みで涙を流す顔すら【綺麗だ】と
歪んだ愛を吐き続けました
少女はただ願いました
『私はこのまま生きていたくない
閉じ込められた【この部屋】で
生涯を終えるなんて耐えられない』と
涙と嗚咽を溢れさせ願う
【少女の想い】が届いたのでしょうか?
それは突然ことでした。
【叔父さん】と少女の部屋に
警察官達が当然入ってきて
少女を助けにきたのだと
婦警がブランケットを優しく羽織らせ
暴れ叫ぶ【叔父さん】を他の警官達が押さえつけ
何処かに連れて行く姿
『助かったの?私を助けに来てくれたの?』
部屋には何もなかったから
ブランケットを羽織らせてくれた婦警に
少女は『今日は何月何日?』と尋ねました
その日は皮肉にも少女が11歳になる日でした
そこから何があったのかは覚えていないし
今でも思い出せないけれど
沢山の大人達から
【今までの事】を聞かれた後
少女を引き取って保護したいという
白髪の柔らかに微笑う
本当の天使のような男が現れ
その【御主人様】が
少女の書類上、名義上の保護者となりました
少女が【御主人様】に優しく手を引かれ
連れてこられ来た場所は
【天の国】とは正反対
まさに【地獄】の場所でした。
少女を引き取った【御主人様】は
【サーカス団を率いる団長様】
団長様が少女に告げたのは残酷な事実
『天使の翅を持つ貴方は美しいから
沢山の方々が、貴方を欲するのでしょうね』
淡々と優しい声音で言う【御主人様】
少女はその日から
【御主人様】のサーカスで【見せ物】として
生きる事になりました。
----------------------------------------
[CASEⅲ:見世物小屋の天使様]
【御主人様】のサーカス団にいる子供達は
みんな何処か欠けていました
手足がない子、美しい薔薇の痣が浮かぶ子
躰に見惚れるほど煌めく鱗がある子
そんなサーカスの中
少女は2人の双子の少年に出逢いました
少年は瓜二つの綺麗な顔で踊りも歌も演技も
笑顔も全て完璧に調律され
誰もが見惚れる看板役者でした。
少女は翅のせいで身動きも出来ないからと
サーカスの見せ物小屋で【見せ物】にされ
【御客様】の【御相手】をする事で
生き続けました
【何も出来ない商品】…サーカス団員は
団長様が全て【廃棄】してしまうから
団員のみんなは生きるために必死でした
疲れて身体中が痛もうと気持ちが悪くても
毎日毎日、自分を
【御客様】に売り生き抜いてきたのです。
少女は、そんな日々に疲れ果て
消えてしまいたいと思いながら
仲良くなった双子の少年たちと
御客様が来る時間までの間一緒に話し
日々を乗り越え過ごしてきました。
よく話すようになった
双子の少年達に少女は沢山の事を教わりました
2人は、物知りで少女の役に立つようにと
素敵な御話や歌を教えてくれました
そうして、その楽しい時間の最後には
少女に、いつも繰り返すように
【愛している】も、自分達がどれだけ
【その人】を【愛していても】
『愛は還らないんだよ』と教え
2人は決まって
少女の頭を撫でてから舞台へと向かいます
少女も解っていたけれど
解らないふりをしていたかった
団長様を【御主人様】を愛しても叶わないと
痛いくらいに解っている
だからこそ【知らないふり】を
【解らないふり】をし続ける
それしか少女には出来ませんでした。
【御主人様】は少女が頑張れた時
『有難うイヴ。優しい子…愛していますよ』
そう告げ微笑って冷たく温もりのない手で
少女の頭を撫でてくれました
けれど少女には、それが
【それ以上の関係】になれなくても
心地よいもので【自分を繋ぎ止める】
ある種の鎖になりました
『私だって女の子だもの"分かる"のよ
愛してるの意味をママから聞いていたから』
『私も団長様を愛してます』
今自分は、どんな顔なのだろう?
ちゃんと笑えているのだろうか?
綺麗でいなきゃ、美しくいなきゃ
【御主人様に捨てられてしまう】
団長様は…【御主人様】は
【この翅の生えた異形の躰】を、姿を
【売り物】としてみているのだから
恋愛感情なんてないことくらい解ってる
ならせめて【売り物】として
いつでも望み通りに振る舞わなくては
そうじゃなきゃ【愛しい御主人様】と
離れ離れになってしまうから
それだけは耐えられないから
だから他のどんな人間達に
『愛しているよ』と言われ触れられても
【御主人様】の【愛している】以外
全て真っ黒で澱んで見え聞こえてきた
【御主人様】以外の人達の愛は全部
【真っ黒な嘘】
少女を【二番目の御人形】として
自分達の哀しみ苦しみ辛さを紛らわせる為
その為だけに【縋り付くための空言】
それも少女が従順な御人形で居続けたから
【ミンナ笑顔で私を可愛がってくれた】
少女の体は痛みを増して辛いだけだったけれど
それでいい…【御主人様】の側にいる事が
出来るなら【それがいい】と思っていた矢先
星空が綺麗な夜の事だった
いつも少女に優しく話してくれていた
双子の少年達が少女の部屋に来て
口を揃えていいました
『このサーカスを焼き払う。』
だから先に逃げてと。
少女は痛みで体を動かす事が出来ないから
2人が抱き抱え安全な場所へと
案内保護してくれる人の元へ連れていった
双子の少年達は
これでお別れだと言うように最期まで
少女へ言い聞かせるように
『愛を信じちゃダメだよ』と微笑うと
サーカスのテントに戻っていきました。
少しするとサーカスから沢山の悲鳴と
赫い赫い焔に包まれる光景
少女は双子に紹介された、【お姉さん】と
サーカスから逃げる馬車の中
その光景を見ていることしかできずに
『嗚呼、また失った』
"また"【何か】を失う音を聞きながら
心の中はポッカリと開いたままで。
【お姉さん】に手を引かれて最期に
【アダム】…アーちゃんの居る
孤児院へと連れてこられたのです……▽
----------------------------------------
[CASE ⅳ:天使の安息は]
孤児院は表向きには【優しい院長先生】と
整った設備で何不自由なく
町や村で流行っていた子供だけが患う奇病
翅が生え息絶える子供達を保護し生活する
素晴らしい場所と評判でした。
だけどそれは、あくまで【表向き】の話
裏では【院長先生】が気に入った子を
遊びと称して部屋へ子供を連れ込み弄び
サーカスの見せ物小屋に居た時のよう
里親を名目に
毎週開かれる子供達の見せ物と身売り
人身売買で成り立っていた孤児院でした。
けれど悪いことばかりでもなく
孤児院で出会った青年【アダム】
アダムは孤児院の中で少女に優しく
少女が、もう躰もボロボロになり
"1人では何も出来ない"と解ると
食事や身の回りの介助世話をしてくれました
青年も少女と同じ病気で
翅は生えていたけれど、羽は朽ち果て
翅の骨格だけが残っている末期の状態でした
それでも青年は笑顔を絶やすことすらなく
絶望こそ見せはしませんでしたが
『俺の翅はイーちゃんみたいに綺麗じゃないから』と
少女の頭を撫でて悲しそうにしていました。
夜眠る時も、何をするのも常に一緒になり
【サーカスの時もずっと一緒】だった
【ジル】を、青年の部屋のベットまで連れて
一緒に眠るのが少女の幸せな日課
青年がいると不思議と全てが漠然と怖くなく
翅が躰が痛んで、涙が止まらない時
青年は優しく懸命に痛む場所と、翅を撫で
安心するようにと抱きしめてくれました
青年と過ごし丁度一年が立つ夜の日
その日も星が輝きを放つ美しい日でした
青年が少女を揺さぶり起こし
『一緒に逃げよう』
そう言って少女を抱き抱え
みんなが寝静まる中孤児院の外
門まで走りぬけました
けれど、門の前には
ニヤリと歪に嗤う【院長先生】が待っていて
院長先生は、青年と少女に向かって
難しい話を沢山してきました。
青年は怒った顔を初めて少女に見せましたが
けれど、直ぐに何時もの青年に戻り
『目を瞑っていてね』と優しく抱きしめた後
少女を木下へ座らせました
青年の言う通り目を瞑っていた少女の耳には
パァンッ…という音が鳴り響き
驚いた少女が思わず目を開けた先、視界には
愛しい両親が少女から奪われた日の赤と
青年の右腕が地面に転がり
青年が沢山の赤を流す光景
青年は血だらけ、きっと激痛で
立つことすらままならないはずなのに
少女に微笑って【安心してね】
そう言って頭を撫でました
ですが、沢山血が流れたからでしょうか?
青年の顔は見る見るうちに真っ青になり
地面に倒れ伏してしまいます。
青年と少女の前
嗤う院長先生が少女を見下ろしながら
何かを伝えていますが少女には醜さと
恐怖しかありません。
少女は怖さで震えながら
けれど青年を失うことだけは嫌だと
青年の上に覆いかぶさり精一杯で庇うように
ぎゅぅっと目を瞑りました
目を瞑り涙を流しながら流れ込んできたのは
【今までの思い出】
そこでようやく、少女は初めて感情が
何処にもぶつけられない怒りが疑問が
湧き出してきたのです。
支えられて【共存する】
人形として操られる生き方しか出来ない
支えて【漬け込んで依存して】
必要とされる生き方しかできない
【惨めな自分】【弱い自分】
なんで、なんで、なんで!私を生かしたの?
私をあの時どうして殺してくれなかったの?
どうして私だけ生き残ってしまったの?
私だけ、私達だけなんでこんな目にあって
苦しみ続けなきゃいけないんだ!
神様がいるなら
翅なんて私にくれるなら
私の言葉くらい聞いてよ!!
こんなに泣き出したいのに!!
笑顔しか浮かべられないなんて
どうして!どうして、どうして!!
叫びが溢れてやまない
そんな少女を我に帰すように
少女のワンピースをクイクイッと引っ張り
首を傾げ少女を見上げる大切な御人形の姿
あまりにも奇怪な出来事
『【ジルちゃん】が動いて…る?』
何がおこったのか解らず
院長先生が【化け物】だと
ライフル銃を【ジルちゃん】に向け
撃とうとした瞬間
青年が大事にしていた御人形
【アイロニー】が、すっと立ち上がり
気がついたら院長先生を倒して
何が起こっているのか起こったのか解らない少女に【アイロニー】が
青年の溢れ続ける血を止めるため
自分に巻かれていた包帯で止血し
少女にカタコトな喋り方で話してきたのです
『応急処置がスミマシタ、イーちゃん
イタイデスが少しアルクの頑張れマスカ?』
いつもの青年のように頭を撫でて
可愛らしく首を傾げ尋ねます
少女の側にいた、少女の御人形【ジル】が
ぴょんぴょん飛び跳ねて
『オヒメサマ。イヴ。オヒメサマ。
ジルてつだう』
少女の手をぎゅっと握り話します
しばらく、ジルとアイロニーに
手を引かれ青年を連れ歩いた先
休める場所を見つけて
アイロニーに
『ココで休んで、
明日フタリヲ安全なバショにツレテイキマス』
だから安心して寝なさい、そう言われ
大事な青年を抱きしめ、温もりを感じ
膝の上で、止血がすみ眠りについている
青年が起きるのを待ち
皆んなで安息のできる居場所を見つける為の旅をする事になったのでした……▽
__ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ _
[血に染まる少女の独白]
私は【アーちゃん達】に介助を受けながら
日々想う……。誰もきっと私の気持ちを
奥底を受け止め受け入れはしない。
そんな日は来ないだろう
双子のあの子達の言葉を今でも反芻する
私も歪に歪んでしまったのだろうな
【愛しても報われない】
【愛を還しては貰えない】
【愛しても愛してはもらえない】
すべては御伽噺の中だけの話だと。
でもね、私の向ける愛は本物よ
愛しい人にも、大事な子にも。
でも還る事はないと知っている
だから私は【今日も知らないふり】
何も知らない子供だと思えばいい
愛は報われない
【私達】は愛しても愛される事は叶わない
ねぇ……?そうでしょう?【アダム】
【end:愛なんて信じない天使様】
next▶︎
【case2:哀しみの哀に染まる少年の独白】
赤黒く、錆びた鉄のような生臭い匂い
目に写る光景は到底キレイな物ではなかった
起きたら【全てが無かった事に】
辛かったあの日々が全て消えてなくなって
手を伸ばしても届きはしなかった
【宝物】を掴み取って幸せな生活に……。
そんな夢を見ていた
目を瞑って、ひたすらに
これが現実じゃない事だけを
ただ祈っていたんだ
あの奇病が流行り出したのはいつだったか
その病は【美しい天使の様な白い翼】を
まだ幼い子供達に与えるという
何処にも飛んで行けることはない翅
子供達に苦痛を与え続ける事と引き換えに
その命尽きるまで蝕み喰らい育つ翅を授け
いつかは本当に天使のよう天の国へと誘う病
これは
そんな残酷で美しい病に罹った子供達のお話
???
『さぁさぁ寄ってらっしゃい
此れは世にも奇妙で、けれど儚く美しい
[天使]達の哀しく愛しい御話
如何ぞ、最後迄…このドール[人形]達の
演じる終幕を…貴方の眼で…。
どうか…見届けてくれます様に…。』
【 】は手招く、其の妖美な手付きで
美しく儚い[人形劇場]へと誘うのだ
???
『其れでは…第一話…始まりのFanfareを』
【case1:血に染まる少女の独白】
とある町のとある家に
優しく博識で自慢の父と
柔らかく微笑う料理上手な母と
小さく可憐な少女の3人で
幸せに暮らしていた家族がおりました。
そんな幸せな生活の終わりを告げる日
少女の誕生日の日全ては
狂い崩れ落ちてしまったのです。
最初に狂ったのは
幸せが崩れ始めたのは何時だったか?
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[CASEⅠ:堕ちゆく天使へ捧げるワルツを]
パパとママが私に優しい笑顔で
1つ縫いぐるみをプレゼントしてくれた
【私が10歳の誕生日を迎える素敵な日】
パパとママが居なくなっちゃった悲しい日
助けることもできずに泣くしかなかった私
翅なんて、神様なんて大嫌いだって
その日私は思った………▽
いつだったのか。
少女は泣き虫で
毎日部屋の隅1人で泣いていた
そんな少女へ、まるで罰が与えられたように
背中から小さな翅が生えてきたのです。
その翅は歩くたびに背中も翼も全身も
もがれ抉られる程の酷い激痛を与え
体を蝕んでいく
けれど其の翅は天使や鳥の様な翅ではなくて
【自由に何処へでも飛んで行ける翅】
そんなものではありませんでした。
ある日苦しみ泣いている少女を見つけた母
母は少女の翼を見ると
少女の頭を撫で抱き締めながら
父に少女が【病気】になってしまったと
溢れる涙と嗚咽と共に打ち明けました。
父は隠すことなく少女の手を優しく握ると
少女の病気の話、街中の子供達が罹っている
いつかは【本当の天使】みたいに
子供のままの無垢な躰で、痛みと引き換えに
羽が綺麗に育ち終わったら天の国へ行く
そんな病気だと悲しそうな顔で教えたのでした。
それでも両親は少女が病気になっても
今までと変わらずに優しい父と母で
身動きが取れなくなってしまった少女を
大切に可愛がり【私達の愛しい宝物】
【だから何があっても絶対に護る】
天の国へなんて行かせたりなどしない
そう微笑いながら毎日優しく介抱してくれたのです。
そんな日々が続き、少女が生まれて
10回目の誕生日の日【その日は特別】で
両親が少女に【楽しい1日にしてみせる】
そう約束した
【幸せな1日】になる筈だった日の事でした
幸せが壊れてしまうのは呆気ないもので
【3人の家】に【男】がいきなり入ってきて
この日、少女の幸せの全てが終わりを告げました。
少女と母の前、男は容赦無く
父を何回も何回も動かなくなるまで
銀色に光るナイフが赤に染まり切るまで
何回も何回も刺し貫き
少女を抱き締め震えていた母を
抱き寄せ頭を撫でると背中を一突き
動かなくなった母にキスをして
カタカタ震えて動けない
少女の頭を撫でながら言いました
『これは秘密の出来事だよ。
誰かに言ったら【叔父さん】がイヴを
【パパとママと同じに】しちゃうからね?
良い子なイヴは【叔父さんとの約束】
………守れるよね?』
歪に歪んだ笑顔、あまりにも理不尽な約束
両親の赤に染まった服、手で
少女を抱き締め微笑うから
弱虫で1人じゃ何もできない少女には
【叔父さん】との約束を
守る事しか出来ませんでした。
【叔父さん】は【ママが好き】で
【パパが嫌い】でした
【叔父さんからママを取ったんだ】と
父の体を切り刻みながら少女に告げるのです
【だから仕方ないんだ】
【これは罰なんだ】と、【叔父さん】は
ニッコリと無邪気な子供のように
少女に微笑い掛け幸せそうに
『イヴはマリアに良く似ているからね』
少女は母に似ているから
少女は母の代わりになれるから
【わざと残したんだ】と教えてくれたのです
その日、少女の誕生日の日から
少女と叔父さんの2人の暮らしが始まりました……▽
----------------------------------------
[CASEⅱ:天使の鳥籠]
翅が生え日に日に育っていくたびに
何もかも1人じゃ出来なくなっていく
逃げることもできない少女を見て
【叔父さん】は心底幸せな表情をし
母に似ているから綺麗だから
【愛しているよ】と
毎日毎日【呪い】のように繰り返し繰り返し
言い続けました
少女が綺麗だから奪われたくないと
【痛い事】【怖い事】もする様になり
傷を痛みを痣を証を残していく日々
『誰も神様だって私を助けてはくれない』
そんな少女の心の拠り所は大好きな両親から
誕生日に貰った【お人形】だけになりました。
そのお人形を抱きしめて少女は、お人形に
【ジル】と言う、名前をつけました
父の書斎にあった
まだ難しそうな本に書いてあった名前
少しでも父を感じられるように
ジルは《報復》と言う意味だと知った上で
決して【この気持ち】を忘れないように
両親の事を思いながら
生き続けようと強く決めたのです
ある日【叔父さん】が
少女にプレゼントをくれました。
『やっぱりイヴの細くて綺麗な首には
首輪が良く似合うね…綺麗で愛おしいよ』
嬉しそうに、幸せそうに
【叔父さん】が少女に与えたのは
【何処にも逃げることが出来ない枷】
首輪と手枷、足枷
鎖を無理やり引かれるたび
痛くて苦しくてたまらなかった
そんな少女を見て【叔父さん】は
いつも笑顔で幸せそうにするのです。
少女の中で【何か】が壊れていく音がしました
翼が大きく育っていく度
痛みで気が狂いそうで
いっそこのまま消えることが出来たらとすら
考える日々
【叔父さん】は
少女の翼に全身に撫でて触れて
少女が痛みで涙を流す顔すら【綺麗だ】と
歪んだ愛を吐き続けました
少女はただ願いました
『私はこのまま生きていたくない
閉じ込められた【この部屋】で
生涯を終えるなんて耐えられない』と
涙と嗚咽を溢れさせ願う
【少女の想い】が届いたのでしょうか?
それは突然ことでした。
【叔父さん】と少女の部屋に
警察官達が当然入ってきて
少女を助けにきたのだと
婦警がブランケットを優しく羽織らせ
暴れ叫ぶ【叔父さん】を他の警官達が押さえつけ
何処かに連れて行く姿
『助かったの?私を助けに来てくれたの?』
部屋には何もなかったから
ブランケットを羽織らせてくれた婦警に
少女は『今日は何月何日?』と尋ねました
その日は皮肉にも少女が11歳になる日でした
そこから何があったのかは覚えていないし
今でも思い出せないけれど
沢山の大人達から
【今までの事】を聞かれた後
少女を引き取って保護したいという
白髪の柔らかに微笑う
本当の天使のような男が現れ
その【御主人様】が
少女の書類上、名義上の保護者となりました
少女が【御主人様】に優しく手を引かれ
連れてこられ来た場所は
【天の国】とは正反対
まさに【地獄】の場所でした。
少女を引き取った【御主人様】は
【サーカス団を率いる団長様】
団長様が少女に告げたのは残酷な事実
『天使の翅を持つ貴方は美しいから
沢山の方々が、貴方を欲するのでしょうね』
淡々と優しい声音で言う【御主人様】
少女はその日から
【御主人様】のサーカスで【見せ物】として
生きる事になりました。
----------------------------------------
[CASEⅲ:見世物小屋の天使様]
【御主人様】のサーカス団にいる子供達は
みんな何処か欠けていました
手足がない子、美しい薔薇の痣が浮かぶ子
躰に見惚れるほど煌めく鱗がある子
そんなサーカスの中
少女は2人の双子の少年に出逢いました
少年は瓜二つの綺麗な顔で踊りも歌も演技も
笑顔も全て完璧に調律され
誰もが見惚れる看板役者でした。
少女は翅のせいで身動きも出来ないからと
サーカスの見せ物小屋で【見せ物】にされ
【御客様】の【御相手】をする事で
生き続けました
【何も出来ない商品】…サーカス団員は
団長様が全て【廃棄】してしまうから
団員のみんなは生きるために必死でした
疲れて身体中が痛もうと気持ちが悪くても
毎日毎日、自分を
【御客様】に売り生き抜いてきたのです。
少女は、そんな日々に疲れ果て
消えてしまいたいと思いながら
仲良くなった双子の少年たちと
御客様が来る時間までの間一緒に話し
日々を乗り越え過ごしてきました。
よく話すようになった
双子の少年達に少女は沢山の事を教わりました
2人は、物知りで少女の役に立つようにと
素敵な御話や歌を教えてくれました
そうして、その楽しい時間の最後には
少女に、いつも繰り返すように
【愛している】も、自分達がどれだけ
【その人】を【愛していても】
『愛は還らないんだよ』と教え
2人は決まって
少女の頭を撫でてから舞台へと向かいます
少女も解っていたけれど
解らないふりをしていたかった
団長様を【御主人様】を愛しても叶わないと
痛いくらいに解っている
だからこそ【知らないふり】を
【解らないふり】をし続ける
それしか少女には出来ませんでした。
【御主人様】は少女が頑張れた時
『有難うイヴ。優しい子…愛していますよ』
そう告げ微笑って冷たく温もりのない手で
少女の頭を撫でてくれました
けれど少女には、それが
【それ以上の関係】になれなくても
心地よいもので【自分を繋ぎ止める】
ある種の鎖になりました
『私だって女の子だもの"分かる"のよ
愛してるの意味をママから聞いていたから』
『私も団長様を愛してます』
今自分は、どんな顔なのだろう?
ちゃんと笑えているのだろうか?
綺麗でいなきゃ、美しくいなきゃ
【御主人様に捨てられてしまう】
団長様は…【御主人様】は
【この翅の生えた異形の躰】を、姿を
【売り物】としてみているのだから
恋愛感情なんてないことくらい解ってる
ならせめて【売り物】として
いつでも望み通りに振る舞わなくては
そうじゃなきゃ【愛しい御主人様】と
離れ離れになってしまうから
それだけは耐えられないから
だから他のどんな人間達に
『愛しているよ』と言われ触れられても
【御主人様】の【愛している】以外
全て真っ黒で澱んで見え聞こえてきた
【御主人様】以外の人達の愛は全部
【真っ黒な嘘】
少女を【二番目の御人形】として
自分達の哀しみ苦しみ辛さを紛らわせる為
その為だけに【縋り付くための空言】
それも少女が従順な御人形で居続けたから
【ミンナ笑顔で私を可愛がってくれた】
少女の体は痛みを増して辛いだけだったけれど
それでいい…【御主人様】の側にいる事が
出来るなら【それがいい】と思っていた矢先
星空が綺麗な夜の事だった
いつも少女に優しく話してくれていた
双子の少年達が少女の部屋に来て
口を揃えていいました
『このサーカスを焼き払う。』
だから先に逃げてと。
少女は痛みで体を動かす事が出来ないから
2人が抱き抱え安全な場所へと
案内保護してくれる人の元へ連れていった
双子の少年達は
これでお別れだと言うように最期まで
少女へ言い聞かせるように
『愛を信じちゃダメだよ』と微笑うと
サーカスのテントに戻っていきました。
少しするとサーカスから沢山の悲鳴と
赫い赫い焔に包まれる光景
少女は双子に紹介された、【お姉さん】と
サーカスから逃げる馬車の中
その光景を見ていることしかできずに
『嗚呼、また失った』
"また"【何か】を失う音を聞きながら
心の中はポッカリと開いたままで。
【お姉さん】に手を引かれて最期に
【アダム】…アーちゃんの居る
孤児院へと連れてこられたのです……▽
----------------------------------------
[CASE ⅳ:天使の安息は]
孤児院は表向きには【優しい院長先生】と
整った設備で何不自由なく
町や村で流行っていた子供だけが患う奇病
翅が生え息絶える子供達を保護し生活する
素晴らしい場所と評判でした。
だけどそれは、あくまで【表向き】の話
裏では【院長先生】が気に入った子を
遊びと称して部屋へ子供を連れ込み弄び
サーカスの見せ物小屋に居た時のよう
里親を名目に
毎週開かれる子供達の見せ物と身売り
人身売買で成り立っていた孤児院でした。
けれど悪いことばかりでもなく
孤児院で出会った青年【アダム】
アダムは孤児院の中で少女に優しく
少女が、もう躰もボロボロになり
"1人では何も出来ない"と解ると
食事や身の回りの介助世話をしてくれました
青年も少女と同じ病気で
翅は生えていたけれど、羽は朽ち果て
翅の骨格だけが残っている末期の状態でした
それでも青年は笑顔を絶やすことすらなく
絶望こそ見せはしませんでしたが
『俺の翅はイーちゃんみたいに綺麗じゃないから』と
少女の頭を撫でて悲しそうにしていました。
夜眠る時も、何をするのも常に一緒になり
【サーカスの時もずっと一緒】だった
【ジル】を、青年の部屋のベットまで連れて
一緒に眠るのが少女の幸せな日課
青年がいると不思議と全てが漠然と怖くなく
翅が躰が痛んで、涙が止まらない時
青年は優しく懸命に痛む場所と、翅を撫で
安心するようにと抱きしめてくれました
青年と過ごし丁度一年が立つ夜の日
その日も星が輝きを放つ美しい日でした
青年が少女を揺さぶり起こし
『一緒に逃げよう』
そう言って少女を抱き抱え
みんなが寝静まる中孤児院の外
門まで走りぬけました
けれど、門の前には
ニヤリと歪に嗤う【院長先生】が待っていて
院長先生は、青年と少女に向かって
難しい話を沢山してきました。
青年は怒った顔を初めて少女に見せましたが
けれど、直ぐに何時もの青年に戻り
『目を瞑っていてね』と優しく抱きしめた後
少女を木下へ座らせました
青年の言う通り目を瞑っていた少女の耳には
パァンッ…という音が鳴り響き
驚いた少女が思わず目を開けた先、視界には
愛しい両親が少女から奪われた日の赤と
青年の右腕が地面に転がり
青年が沢山の赤を流す光景
青年は血だらけ、きっと激痛で
立つことすらままならないはずなのに
少女に微笑って【安心してね】
そう言って頭を撫でました
ですが、沢山血が流れたからでしょうか?
青年の顔は見る見るうちに真っ青になり
地面に倒れ伏してしまいます。
青年と少女の前
嗤う院長先生が少女を見下ろしながら
何かを伝えていますが少女には醜さと
恐怖しかありません。
少女は怖さで震えながら
けれど青年を失うことだけは嫌だと
青年の上に覆いかぶさり精一杯で庇うように
ぎゅぅっと目を瞑りました
目を瞑り涙を流しながら流れ込んできたのは
【今までの思い出】
そこでようやく、少女は初めて感情が
何処にもぶつけられない怒りが疑問が
湧き出してきたのです。
支えられて【共存する】
人形として操られる生き方しか出来ない
支えて【漬け込んで依存して】
必要とされる生き方しかできない
【惨めな自分】【弱い自分】
なんで、なんで、なんで!私を生かしたの?
私をあの時どうして殺してくれなかったの?
どうして私だけ生き残ってしまったの?
私だけ、私達だけなんでこんな目にあって
苦しみ続けなきゃいけないんだ!
神様がいるなら
翅なんて私にくれるなら
私の言葉くらい聞いてよ!!
こんなに泣き出したいのに!!
笑顔しか浮かべられないなんて
どうして!どうして、どうして!!
叫びが溢れてやまない
そんな少女を我に帰すように
少女のワンピースをクイクイッと引っ張り
首を傾げ少女を見上げる大切な御人形の姿
あまりにも奇怪な出来事
『【ジルちゃん】が動いて…る?』
何がおこったのか解らず
院長先生が【化け物】だと
ライフル銃を【ジルちゃん】に向け
撃とうとした瞬間
青年が大事にしていた御人形
【アイロニー】が、すっと立ち上がり
気がついたら院長先生を倒して
何が起こっているのか起こったのか解らない少女に【アイロニー】が
青年の溢れ続ける血を止めるため
自分に巻かれていた包帯で止血し
少女にカタコトな喋り方で話してきたのです
『応急処置がスミマシタ、イーちゃん
イタイデスが少しアルクの頑張れマスカ?』
いつもの青年のように頭を撫でて
可愛らしく首を傾げ尋ねます
少女の側にいた、少女の御人形【ジル】が
ぴょんぴょん飛び跳ねて
『オヒメサマ。イヴ。オヒメサマ。
ジルてつだう』
少女の手をぎゅっと握り話します
しばらく、ジルとアイロニーに
手を引かれ青年を連れ歩いた先
休める場所を見つけて
アイロニーに
『ココで休んで、
明日フタリヲ安全なバショにツレテイキマス』
だから安心して寝なさい、そう言われ
大事な青年を抱きしめ、温もりを感じ
膝の上で、止血がすみ眠りについている
青年が起きるのを待ち
皆んなで安息のできる居場所を見つける為の旅をする事になったのでした……▽
__ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ __ _
[血に染まる少女の独白]
私は【アーちゃん達】に介助を受けながら
日々想う……。誰もきっと私の気持ちを
奥底を受け止め受け入れはしない。
そんな日は来ないだろう
双子のあの子達の言葉を今でも反芻する
私も歪に歪んでしまったのだろうな
【愛しても報われない】
【愛を還しては貰えない】
【愛しても愛してはもらえない】
すべては御伽噺の中だけの話だと。
でもね、私の向ける愛は本物よ
愛しい人にも、大事な子にも。
でも還る事はないと知っている
だから私は【今日も知らないふり】
何も知らない子供だと思えばいい
愛は報われない
【私達】は愛しても愛される事は叶わない
ねぇ……?そうでしょう?【アダム】
【end:愛なんて信じない天使様】
next▶︎
【case2:哀しみの哀に染まる少年の独白】
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