魔力なしの私と魔術師を目指した少年

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16.ミネルヴァ視点

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祝賀パーティーでは私は注目の的!
バルドルは遅れてくると言われて、お父様のエスコートで入場した。

入場のコールと共に集まる視線。

「まぁ、美しい。あの方がディアナ様?」
「噂通り、ピンクの髪が輝くようで素敵。」
「あのドレスと宝石。最高級品ですわ!」
「バルドル様が長年想っていたとか?なんてロマンチックなんでしょう!」

女性達の感嘆と羨望の声が聞こえる。
男性達だって私の美しさに目を奪われ熱の篭った視線を向けてくる。

会場中の視線を浴びて肌がピリピリする心地よい緊張感。

「失礼。ディアナ・カッスル様ですね。私はレイリー・サバンヌと申します。以後お見知りおきを。」
「私は………。」

次々と貴族が私とお父様に挨拶にやってくる。
英雄であるバルドルと繋がりを持ちたい貴族が多いようだ。
私と握手を交わす男性のねっとりした視線。英雄の婚約者として、私は優雅に微笑んで応じてみせた。


★★★


会場がざわざわと騒がしくなった。

もうすぐバルドルが入場するようだ。

会場の視線が入り口に集まる。
私は感動の再会の演出をどうしようか考えながら入り口の方に目を向けた。

「えっ、どういう事?」
「ディアナ様とは別の人をエスコートしてるわ。」

彼が姿を表した途端、会場にどよめきが広がる。
周囲の人々より頭一つ背の高い黒髪の青年。彼は同じく黒髪の令嬢をエスコートしていた。

その顔は………

「……ディアナ……。」

その時、会場に陛下の威厳のある声が響いた。

「カッスル男爵、その娘ミネルヴァ、此方へ。」

捨てたはずの名前、ミネルヴァ。
その名前を呼ばれて反応しそうになり、全身がピンと張り詰めた。

お父様が陛下の傍へと小走りで駆けつけ跪くのが見えた。

「ミネルヴァ。」

陛下の目は真っ直ぐに私を射抜く。
私を見ているのは明らかだ。
その強い視線は、もうこれ以上の嘘はつけないと思うのに充分だった。

私は父親の後ろへ移動して同じく跪いた。

「カッスル男爵、お主は何故余を欺いた?」
全て分かっているのだろう。
陛下は最低限の質問だけを口にした。

「なっ、なんの事でしょう?」

愚かな父親はこの期に及んで惚けようとした。
時間稼ぎをして、言い訳を考えているのだろう。目がキョロキョロと動いて視線が覚束無い。
こうして陛下の前で狼狽している父親は、なんて狭小なんだろう。
家で見る姿との違いが滑稽ですらある。

「ミネルヴァをディアナと偽りこの場に連れてきた事だ。この国の危機を救った英雄への褒賞。このような間違いは故意でなければ起こり得ないが?」

陛下の毅然とした声は父親を静かに追い詰めた。

「ディアナは魔力無しにございます。」

「ん?」

魔力無しの言葉に会場の空気がざわりと動いた。
陛下は殆ど表情を変えない。けれども僅かに片眉がヒクリと動くのが見えた。
会場の反応に手応えを感じたのか、父親は更に言葉を続けた。

「我が国の英雄に魔力無しを嫁がせる訳には参りません。それ故、ミネルヴァにディアナの振りをさせました。我が国を、そして英雄を思ってのことです。」

陛下が目を細め、その冷気を纏ったような雰囲気にヒヤリとした。

その時、

「待ってください。」

今まで黙って様子を見ていたバルドルが、大きな声を上げた。







ーーーーー
※小話でリックさんの名前がアレクさんになっていました。すみません。訂正しました。
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