魔力なしの私と魔術師を目指した少年

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「ディナ!お客さんから注文入ったよ。洗い物はいいから、オムレツ作ってね。」 
「はいっ!」

この食堂にディナとしてお世話になり2年が経とうとしていた。
私がお世話になることになった食堂はイリーザさんとリックさんというご夫妻でやっていた。
初めは食器洗いや片付けをしていたが、徐々に野菜を切ったり下拵えを手伝うようになり、今では卵料理を任されている。

「ディナの作る茶碗蒸しとオムレツは評判が良いねぇ。看板メニューになりそうだよ。」
「ありがとうございます。」

農作物の値段が高くなったが、卵は比較的安く、私は卵料理を沢山練習させてもらった。
前世の記憶に残る卵料理を作ったらお客さんにも気に入って貰え、特に茶碗蒸しは大人気だ。

ガラガラガラガラーーー

「ハムちゃん、これ食べる?」
「キューーーーー!」

ハムちゃんは私が作った回し車で走って運動していたが、私がニンジンをあげるとちょこちょこと走って来て大切そうに受け取った。
モグモグと一心不乱に食べる姿が可愛い。

「じゃあ私はオムレツ作りに行くね。」
「キュー」

★★★

ここに来て直ぐに、ご夫妻にハムちゃんを紹介した。

「下位精霊だと思うんですけど…。ハムちゃんです。人の言葉が分かるし、ずっと一緒に過ごしてきたんです。一緒にいさせてください。お願いします。」
「キュッキューー!!」
「あら、可愛い。リック、この子なら良いわよね?」
「ああ。」
「キューーー!」

ハムちゃんを紹介するとき、彼は持ち前の愛くるしさを発揮し、易々とこの家で過ごす権利を得た。

ここは食堂をしていて、二階が住居になっている。
私の部屋も二階にある。
食堂をしているため、あらゆる場所に毒だんごやネズミとりが仕掛けてあるため、ハムちゃんが罠に掛からないよう一つ一つ説明して回った。
ハムちゃんは毒団子の匂いを嗅いで
「ジージーー。」
と怒っていた。
この様子なら引っ掛かることは無さそうだ。
そうして、ハムちゃんはお客さんには見つからないようにこの食堂の隅っこを走っている。

★★★

この食堂に来て野菜の切れ端を貰い食べているうちにハムちゃんはお腹が床に擦れて走るのが遅くなってしまった。

バルドルは魔獣の森にいるので、そんな場所にハムちゃんを遣いには出来ない。だから彼は今殆どの時間をこの家で過ごしていた。

運動不足で病気を心配した私は前世の記憶をたどり、回し車を作った。
でも上手く回らない………。

「おかしいなー?」
「何作ってんだ?これを回るようにしたいのか?」

上手く回るように作るのは難しくて、10回ほど失敗していたら、リックさんが見かねて手伝ってくれた。

ハムちゃんはこのお手製回し車で毎日運動中だ。



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