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8.バルドル視点
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魔術師協会の本部のあるオズの町に着いた。
魔術師協会は魔力の大きさで人選するが、元々魔力が高いものは貴族に多く、平民は少なかった。
それでもここは実力主義だと聞いている。
「君が今日からここで訓練するバルドルだね。」
「はい。」
「私が君を担当するアレクだ。よろしく。」
担当教官のアレク先生は柔らかい物腰と違って肉食獣のような鋭い眼光をしていた。
街の破落戸に囲まれても怖いと感じたことの無かった俺が初めて恐怖を感じた。
アレク先生の纏う覇気のような凄み。
気圧されて反らしそうになる目を堪えて、アレク先生の目を見返した。
「宜しくお願いします。」
「……うん。いいね。期待してるよ。」
アレク先生は満足したように頷くと、協会の宿舎を案内してくれた。
一通りの説明を受け、自分が使う部屋に入り荷解きをしていると、小さな生き物が目の前にいた。
「わっ!いつの間に??」
淡いピンクの手を合わせて私に俺の前に立ち此方を見上げている。
ディアナの言っていたハムちゃんか?
「ディアナの所から来たのか?」
黒目しかないその視線には何か訴えたい事があるような……。
「ん?」
よく見るとそのフワフワした身体にぐるりと紙を巻き付けてあるのに気が付いた。
「ちょっとごめんな。」
その小さな身体から紙を外して破れないように慎重に紙を広げる。
紙に書いてあったのは
『ありがとう』の文字。
わざわざ手紙に書くような事でもない。
けれど、『頑張れ』も『待ってる』も書けなかった彼女の気持ちを思う。
ハムちゃんは俺に返事を急かすように、ぴょんぴょん跳ねていた。
けど……
「お腹空いたんじゃないか?」
俺ですら移動に三日間掛かった道のりをこの小さな身体で走ってきたのだ。
良く見ると足も短い。
俺はさっき教えて貰ったばかりの厨房の場所を思い出し、野菜の切れ端を貰ってきた。
キャベツの芯を差し出すと、ピンクの鼻をヒクヒク動かして匂いを嗅いでから大事そうに両手で持ってモシャモシャと食べ出した。
「ディアナはちゃんとご飯は食べているのか?」
話せる訳ないのに思わず話し掛けた。
…………食べるのに夢中なようだ。
無理もない。
「ディアナは元気か?」
俺の問いに、汚れの無い真っ直ぐな瞳で答えてくれた。
「…これを頼む。」
俺はハムちゃんに手紙を括りつけた。
手紙には
『やくそくをおぼえていて』と書いた。
ハムちゃんの帰り道の弁当に残りの野菜を手渡す。
ハムちゃんは口の中にはみ出す程詰め込んで、外へと駆け出して行った。
……よほど美味しかったんだな。
今度は他の野菜も用意しておこう。
ディアナとのほんの小さな繋がりが嬉しかった。
★★★
ここに来た俺の目標はハッキリしていた。
やることはただ一つ。
国一番の魔術師になる。
ディアナを堂々と迎えに行くんだ。
それだけが俺の支えだった。
魔力拡張のための訓練に挫けそうになる時に目に浮かぶのはあの光景。
俺を助けるために走るディアナの後ろ姿。
頬を腫らしても笑っていた。
腕の傷も痕が残った。
それでも俺を責めたことなんて無い。
色鮮やかな花の絨毯の中でディアナが笑う。
想い出の中のディアナは綺麗なのに何故だか泣きたくなる。
この国では長年平和な時代が続いていたからか、無理に魔力拡張を受けるヤツは少なかった。
高位術者に無理に魔力を流し込まれ器を拡張するのだ。その時受ける身体を引き裂かれるような苦痛は、思い出しただけでゾッとする。
副作用も凄まじく三日三晩寝込むなんてザラにある。
だから志願するヤツは少ない。俺は精神に異常をきたさない範囲でできる限りの拡張を受けることを希望した。
魔術師協会は魔力の大きさで人選するが、元々魔力が高いものは貴族に多く、平民は少なかった。
それでもここは実力主義だと聞いている。
「君が今日からここで訓練するバルドルだね。」
「はい。」
「私が君を担当するアレクだ。よろしく。」
担当教官のアレク先生は柔らかい物腰と違って肉食獣のような鋭い眼光をしていた。
街の破落戸に囲まれても怖いと感じたことの無かった俺が初めて恐怖を感じた。
アレク先生の纏う覇気のような凄み。
気圧されて反らしそうになる目を堪えて、アレク先生の目を見返した。
「宜しくお願いします。」
「……うん。いいね。期待してるよ。」
アレク先生は満足したように頷くと、協会の宿舎を案内してくれた。
一通りの説明を受け、自分が使う部屋に入り荷解きをしていると、小さな生き物が目の前にいた。
「わっ!いつの間に??」
淡いピンクの手を合わせて私に俺の前に立ち此方を見上げている。
ディアナの言っていたハムちゃんか?
「ディアナの所から来たのか?」
黒目しかないその視線には何か訴えたい事があるような……。
「ん?」
よく見るとそのフワフワした身体にぐるりと紙を巻き付けてあるのに気が付いた。
「ちょっとごめんな。」
その小さな身体から紙を外して破れないように慎重に紙を広げる。
紙に書いてあったのは
『ありがとう』の文字。
わざわざ手紙に書くような事でもない。
けれど、『頑張れ』も『待ってる』も書けなかった彼女の気持ちを思う。
ハムちゃんは俺に返事を急かすように、ぴょんぴょん跳ねていた。
けど……
「お腹空いたんじゃないか?」
俺ですら移動に三日間掛かった道のりをこの小さな身体で走ってきたのだ。
良く見ると足も短い。
俺はさっき教えて貰ったばかりの厨房の場所を思い出し、野菜の切れ端を貰ってきた。
キャベツの芯を差し出すと、ピンクの鼻をヒクヒク動かして匂いを嗅いでから大事そうに両手で持ってモシャモシャと食べ出した。
「ディアナはちゃんとご飯は食べているのか?」
話せる訳ないのに思わず話し掛けた。
…………食べるのに夢中なようだ。
無理もない。
「ディアナは元気か?」
俺の問いに、汚れの無い真っ直ぐな瞳で答えてくれた。
「…これを頼む。」
俺はハムちゃんに手紙を括りつけた。
手紙には
『やくそくをおぼえていて』と書いた。
ハムちゃんの帰り道の弁当に残りの野菜を手渡す。
ハムちゃんは口の中にはみ出す程詰め込んで、外へと駆け出して行った。
……よほど美味しかったんだな。
今度は他の野菜も用意しておこう。
ディアナとのほんの小さな繋がりが嬉しかった。
★★★
ここに来た俺の目標はハッキリしていた。
やることはただ一つ。
国一番の魔術師になる。
ディアナを堂々と迎えに行くんだ。
それだけが俺の支えだった。
魔力拡張のための訓練に挫けそうになる時に目に浮かぶのはあの光景。
俺を助けるために走るディアナの後ろ姿。
頬を腫らしても笑っていた。
腕の傷も痕が残った。
それでも俺を責めたことなんて無い。
色鮮やかな花の絨毯の中でディアナが笑う。
想い出の中のディアナは綺麗なのに何故だか泣きたくなる。
この国では長年平和な時代が続いていたからか、無理に魔力拡張を受けるヤツは少なかった。
高位術者に無理に魔力を流し込まれ器を拡張するのだ。その時受ける身体を引き裂かれるような苦痛は、思い出しただけでゾッとする。
副作用も凄まじく三日三晩寝込むなんてザラにある。
だから志願するヤツは少ない。俺は精神に異常をきたさない範囲でできる限りの拡張を受けることを希望した。
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