病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

文字の大きさ
上 下
16 / 19

16.殿下の秘密

しおりを挟む

※すみません。下品です。
※純情な方は全くの意味不明だと思います。









 ルーファスから事の成り行きを聞いたお義父様は大変な怒りようだった。

「何てことをティアちゃんに言うのよ!あのボンクラっ!!」

 お義父様大丈夫かしら?かなり不敬なことを仰ってると思う……。

「許せないな。直ぐに抗議にいこう。安心してティアちゃん。ティアちゃんを家の弱点になんてさせないから。」

 女装したお義父様と男装したお義母様はその勢いのまま、皇宮に乗り込んだ。

 お義父様達、変装姿のまま、皇帝陛下に会っても構わないんだ……。

 スカートの裾を持ち上げてドスドス歩く後ろ姿はもう男性だか、女性だか……。






 幸い皇帝陛下は侯爵家の意向を汲んで下さった。皇太子殿下には陛下から、かなりのお叱りがあったらしい。
 私を少し脅すために兵士を用意していたそうだが、結果的に大騒ぎになってしまった。

「大丈夫よ。あのボンクラの後ろ楯は私達なんだから。皇位継承が出来なくなるって散々脅してやったからっ!!」

 そう言ってお義父様が見せてくれたのは皇太子殿下についての極秘ファイル。
 中には殿下の秘密の数々……。

「うわぁ~、殿下ってこんな表情なさるんですね?意外です。」

 流石は皇太子殿下ともなると、媚薬を盛られたりしたこともあるらしい。写っているのは、トロンとした目でにへらと笑う殿下のお顔。
 うん。可愛いかも……。

「そうなのよ。ティアちゃん嫌な思いしたでしょ?全部見せてあげる。」

 他にも豚さんの真似をして裸で四つん這いになっている姿もある。
 あれ?尻尾はどうしているんだろう?何かでくっつけてるのかしらん?

 「殿下って動物がお好きなんですね。」

 動物好きに悪い人はいないかも……。
 豚さんになりきるために金具を入れてお鼻を引っ張りあげている。
 かなり痛そう……。
 そこまでして豚さんになりきるなんて……。
 ファイルを捲っていくと、ウサギさんになった殿下も発見した。 

「これは色っぽいわ。殿下の脚線美……凄いわねー。私負けてるかも……。あれ?ウサギさんの服、尻尾だけ不自然な形。」

 楽しくなって次々ページを捲る。

 あっ!!
 これは……。
 オムツを着けている殿下もいる。
 大人になるまでオムツが外れなかったんだわ。これは恥ずかしいかも……。
 そっか……。乳離れも遅かったのね。
 皇后様大変だっただろうな……。
 よだれ掛けを着けているところを見ると、涎が多い性質たちなのかも……。そう言えばさっきのにへらとした笑顔の時も涎が垂れてた。

 ファイルを見ると色んな殿下の姿が分かって少し親近感が湧いたみたい。殿下への恐怖心も無くなった。

 ファイルをじっくりと眺めていたらルーファスが飛んできて私からファイルを取り上げた。

「オヤジっ!!なんてもの見せてるんだよっ!ティアの目が汚れるっ!!」
「大丈夫よう。ティアちゃんもスタンリー侯爵家の一員なんだから。」

 目が汚れるなんて……。ルーファスは何を怒っているのだろう?
私はルーファスを宥めるようにニッコリと微笑んだ。

「大丈夫よ、ルーファス。殿下が動物好きで意外に子供っぽい人だって分かったわ!きっと根はいい人なのね。」

「え?」

 ルーファスはキョトンとしている。彼は殿下の影の努力を知らないのかもしれない。

「だって鞭で拷問されてる姿もあったもの。きっと罪人の気持ちを身をもって体験しようと言う高い志をお持ちなんだわ。そうじゃなきゃ、鞭で打たれてあんなに嬉しそうなお顔なんてしないと思うのっっ。」

 皇家を理解することも臣下の務め。殿下のお気持ちに寄り添うことも必要かもしれない。

「そ、そうか……。」

 それからも皇太子殿下と会う機会は何度もあったが、私はあのファイルを思い出して少し笑っちゃう。
 特に哺乳瓶を咥えてる殿下の顔を思い出しちゃうのだ。

 『大丈夫です。殿下のことはちゃんと理解しています。』そんな思いを込めて殿下を見て微笑みかける。

 そして、皇太子殿下は何故か私から目を反らすようになった。


しおりを挟む
感想 192

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

貴方でなくても良いのです。

豆狸
恋愛
彼が初めて淹れてくれたお茶を口に含むと、舌を刺すような刺激がありました。古い茶葉でもお使いになったのでしょうか。青い瞳に私を映すアントニオ様を傷つけないように、このことは秘密にしておきましょう。

【完結】どうかその想いが実りますように

おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。 学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。 いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。 貴方のその想いが実りますように…… もう私には願う事しかできないから。 ※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗 お読みいただく際ご注意くださいませ。 ※完結保証。全10話+番外編1話です。 ※番外編2話追加しました。 ※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。 なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと? 婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。 ※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。 ※ゆるふわ設定のご都合主義です。 ※元サヤはありません。

婚約者は王女殿下のほうがお好きなようなので、私はお手紙を書くことにしました。

豆狸
恋愛
「リュドミーラ嬢、お前との婚約解消するってよ」 なろう様でも公開中です。

この声は届かない

豆狸
恋愛
虐げられていた侯爵令嬢は、婚約者である王太子のことが感知できなくなってしまった。 なろう様でも公開中です。 ※1/11タイトルから『。』を外しました。

処理中です...