病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

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14.ローレラ伯爵夫人視点

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※胸糞注意



 私は昔からあの女が大嫌いだった。

 ずっと仲良くはしているが、あの女が私を見下しているような気がしていた。

 その女の名前はバーバラ・トマンティノ。今はトマンティノ伯爵夫人に収まっている女。私はずっとアイロス・トマンティノと恋仲だったのに、バーバラがアイロスを奪っていった。

 私はずっとあの女に仕返ししたくて機会を窺っていた。

 お互いの子供の年齢も近くて、よく一緒に遊ばせた。子供同士は仲の良い幼馴染。そして私達は年齢の近い子供がいる女同士、色んな事を相談できる関係にまでなった。


 バーバラの娘とライアット侯爵子息の婚約話が持ち上がっていると噂を聞いた時、この計画を思い付いた。

 かつて、バーバラがアイロスを奪ったように、今度は私の娘がバーバラの娘の婚約者を奪うのだ。

 何とか私の娘をライアット侯爵令息の婚約者に選ばせたい。

 私は隣国に留学していた息子に、ある毒草の苗を手に入れるように連絡した。

その毒草はメイハン草。この毒は遅効性で、高級茶葉と見分けがつかない。
毒味役でも、ほとんど違いが分からないほど味も香りも高級茶葉にそっくり。
 ただ高熱を出して寝込むだけで特徴的な症状が無い。続けて服用すれば死に至る。遺体を調べても分からない、そんな毒薬だ。

 昔から王族などの暗殺に使われ、ほとんどの国で栽培が禁止されている毒草。
 サイハル王国では手に入らない。
 けれど、隣国には大きな植物研究所がありそこでならメイハン草も手に入るはずだった。

「母さん、この毒草何に使うつもり?」

 息子はメイハン草の使い道を聞いてきた。

「この毒草の栽培は禁止されてるけれど、高位貴族が欲しがる代物なのよ。完璧に隠して栽培してね。フィオナがライアット侯爵家に嫁いだ後は港から他国に輸出すると、高値で取引出来るわ。」

 そう言って、息子に極秘で領地の山奥に栽培施設を作らせた。

 息子も邪魔なライバルをメイハン草を使って暗殺したらしい。全くバレずに暗殺出来たことで、息子は興奮し、進んで栽培するようになった。

 私は、茶会に招待してメイハン草を煎じた毒茶をバーバラとその娘に飲ませた。

 飲んで数日から一週間でメイハン草の毒は全身の筋肉組織の炎症を引き起こす。
  
 バーバラの娘の命を奪うつもりはなかった。だから少量ずつ何回か服用させた。
 思惑通り、バーバラの娘は高熱を繰り返し、フィオナがライアット侯爵家の嫡男の婚約者に収まった。

 そして、我が家のお茶会で盛られた毒でバーバラは死んだ。

 計画は全て上手く行っていたのに……。

 フィオナが夜会中、侵入者に誘拐された。大勢の貴族の目の前で。

 例え、フィオナが無事に戻ってきても傷物でないと証明するのは難しい。もう侯爵家には嫁げないだろう。

 そして、フィオナの誘拐から数日後、兵士達が屋敷に来て私たち家族は捕らえられた。

「お、お前のせいで我が家は滅茶苦茶だっ!!」

「お母さんのせいで俺の人生が台無しだっ!!」

 夫と息子が私に恨み言を言う。自分たちだって良い思いをしてきたのに……。失敗すれば人のせい。

 だって、しょうがないじゃない。
 貴方たちは私の復讐の道具だった。

 既にメイハン草の栽培施設も、売買の帳簿も全て押さえられていた。

「まあ、いいわ。バーバラは死んだ。一番の目的は達成出来たもの。」

私たちは何故か裁判にもかけられず、ひっそりと処刑されることになった。

「仕返しなど企まなければ、幸せな人生を歩めたのに……。」

 刑が執行される前、祈りにきた神父がそう言って私を憐れんだ。

 もう既に私の夫と息子の刑は執行されたそうだ。

 私には大切にすべきものが他にもあった。今更、そんなことに気づいても遅いのに……。
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