私だけが家族じゃなかったのよ。だから放っておいてください。

文字の大きさ
上 下
1 / 12

いち

しおりを挟む

「もうっ、お姉ちゃんっ!お母さんたちが大変なんだよ?もう少し親身になってよっ」

 私の名前はレオナ。
 五年前に実家の男爵家を出て、今は亡くなった父方の祖母が用意してくれた小さな家で独り暮らしをしている。

 貴族令嬢だとは思えないほど、小さな家。 
 だけど、一人で身の回りのことを全部こなすには、丁度よい広さだった。

「ごめんね。今は自分のことだけでいっぱいいっぱいなの。何も手伝えることは無いわ」

 もう関係ないと思っていた実家から連絡が来たのはつい最近の事。
 色々あって家を出てからは、自分で働いたお金で質素な生活を送っていて、実家とは関わらないつもりだった。
 
 父親が新しい事業に失敗して巨額な借金を作ってしまったらしい。その噂は聞いたことがある。

 だけど、私にはたいしたお金は無いし、協力なんて出来ないと思って連絡しなかった。

「実家を出たからって……。こういうピンチの時にこそ協力するのが家族でしょ?」

「うーん。私はもう家を出たし……。ごめんね、力になれそうにない」

 私はなるべく早く会話を切り上げて業務に戻った。

 リリィは不満そうに私を見ているけれど、私はもうあの家族とは関わり合いたくない。

 冷たい?
 だけど……どうしてもあの家に戻りたくなかった。





リリィ視点


「もう!お姉ちゃんどういうつもりなんだろ?」

 私は帰宅した後、弟のジュードに相談していた。

「仕方ないだろ?元々偏屈で気難しいんだから。姉ちゃんのせいで、辞めさせたられた使用人や家庭教師は大勢いるんだろ?」

「うーん。でも、私の前でそんな素振り見せたこと無いけどね」

「そうだな。俺達の前では無口なだけで、そんな偏屈者って言うほど変でも無かったよな?でも、姉ちゃんのせいで辞めさせられた使用人が多いのは事実だし……。俺は一日中部屋に閉じ篭ってて、何考えてるか分からないレオナ姉ちゃんが不気味だったよ」
 
「そう?私は……お姉ちゃんなら助けてくれるって思ってたんだけどね」  

 うーん。
 お姉ちゃんの態度は、どうしても納得出来ない。
 
 我儘だった自分をここまで育ててくれたお母さんに感謝はないのかなぁ?

 
しおりを挟む
感想 90

あなたにおすすめの小説

わたくしのせいではありませんでした

霜月零
恋愛
「すべて、わたくしが悪いのです。  わたくしが存在したことが悪かったのです……」  最愛のケビン殿下に婚約解消を申し出られ、心を壊したルビディア侯爵令嬢。  日々、この世界から消えてしまいたいと願い、ついにその願いが叶えられかけた時、前世の記憶がよみがえる。    ――すべては、ルビディアのせいではなかった。 ※他サイトにも掲載中です。

お父様、ざまあの時間です

佐崎咲
恋愛
義母と義姉に虐げられてきた私、ユミリア=ミストーク。 父は義母と義姉の所業を知っていながら放置。 ねえ。どう考えても不貞を働いたお父様が一番悪くない? 義母と義姉は置いといて、とにかくお父様、おまえだ! 私が幼い頃からあたためてきた『ざまあ』、今こそ発動してやんよ! ※無断転載・複写はお断りいたします。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

もう、愛はいりませんから

さくたろう
恋愛
 ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。  王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

隣国へ留学中だった婚約者が真実の愛の君を連れて帰ってきました

れもん・檸檬・レモン?
恋愛
隣国へ留学中だった王太子殿下が帰ってきた 留学中に出会った『真実の愛』で結ばれた恋人を連れて なんでも隣国の王太子に婚約破棄された可哀想な公爵令嬢なんだそうだ

捨てた私をもう一度拾うおつもりですか?

ミィタソ
恋愛
「みんな聞いてくれ! 今日をもって、エルザ・ローグアシュタルとの婚約を破棄する! そして、その妹——アイリス・ローグアシュタルと正式に婚約することを決めた! 今日という祝いの日に、みんなに伝えることができ、嬉しく思う……」 ローグアシュタル公爵家の長女――エルザは、マクーン・ザルカンド王子の誕生日記念パーティーで婚約破棄を言い渡される。 それどころか、王子の横には舌を出して笑うエルザの妹――アイリスの姿が。 傷心を癒すため、父親の勧めで隣国へ行くのだが……

処理中です...