上 下
18 / 20

贈り物の行方

しおりを挟む
「カイベリンの使者がレースの生地を持ってきた。結婚式の衣装に使用して欲しいそうだ。」
「はい。ヨシュン、間に合うようにお願いね。」
私たちは結婚式の打ち合わせをしている。
各国から賓客を招くため、その宿泊場所の準備は大変だ。警備の問題もある。
また、式とは別に、各国の要人が集まる機会を生かして懇親パーティー等を企画している。
結婚式に使用する衣装、料理は王国内の特産品や友好国の輸入品を使用する等、気遣いも準備の方向性も多岐に渡る。

数ヶ月に渡る準備も漸く一段落を迎えてほっとしていると、殿下が言いにくそうに尋ねてきた。
「私が視察先から送ったリボンやネックレスは気に入らなかったか?」
思わぬ質問に目を丸くする。
「いえ、リボンは時々髪に編み込んで貰ってます。いつもの髪型もそうすると華が出て素敵ですのよ。ネックレスは……、そうですね、服装の雰囲気に合わせて使用しています。最近は結婚も控えていますので、大人っぽい雰囲気の服装を心がけていますので、使用回数は減っているかもしれませんね。」
「そうか。では、どういうものならリュルは毎日身に付けてくれる?」
「そ、そうですね、…。恥ずかしいんですけど…。バルの瞳の色の石が着いた髪止めが……。」
バルがパッと晴れやかに笑う。
「良いのか?独占欲を表すようで躊躇っていたのだが。」
「私も人並みにそういった贈り物には憧れますわ。どんな髪型でも付けられるように小さくてシンプルなものが良いです。」
「ポッカの町で私の瞳の色の石が付いたネックレスを見つけたんだ。ライラが薦めてきたんだが、リュルは大きな石は好まないって買わなかったんだが……。流石に女性だな。良く解ってる。」
ライラは本当に私の為に選んだのだろうか?
疑問だが、この際追及しないことにした。

バルは視察中もライラに靡くこと無く、私を一途に想っていてくれたようだ。
ライラの話によると、本当に眼中に無かったらしい。


私がバルを見つめていると
「ん?どうした?」
バルが優しげな声色で尋ねてくれる。
「ふふふ。私とバルとどっちの方が愛情が重いのかな?って考えてたんです。」
「じゃあ、私の方じゃないか?君のファンクラブも、サークルに来る奴らも潰したい。」
「そんな事を思ってたんですか?って、ファンクラブ?」
「まだ知らなかったのか?」
「え、ええ?私の?」
「君の。」
「いつから。」
「随分経つぞ。君の情報はファンクラブの会員に闇取引されていて、ハンナを専属から外して貰った。」
「え?」
「服のサイズから好きな食べ物、良く読む本まで結構細かく知られていたぞ。」
ナニソレ、怖い。 
「大丈夫だ。今はヨシュンがしっかり守ってくれている。」
ハンナは別のお屋敷に移った。そんな事をしていたなんて……。
私の顔色が悪いのに気付くとバルがそっと抱き寄せてくれた。
「悪い。怖がらせてしまった。」
こうしてバルの腕に包まれていると安心出来る。
バルと親しく話をするようになって、私は大切に守られ、何も知らずに過ごしていたのだと知った。


    
次回最終話です。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

外では氷の騎士なんて呼ばれてる旦那様に今日も溺愛されてます

刻芦葉
恋愛
王国に仕える近衛騎士ユリウスは一切笑顔を見せないことから氷の騎士と呼ばれていた。ただそんな氷の騎士様だけど私の前だけは優しい笑顔を見せてくれる。今日も私は不器用だけど格好いい旦那様に溺愛されています。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

もう一度だけ。

しらす
恋愛
私の一番の願いは、貴方の幸せ。 最期に、うまく笑えたかな。 **タグご注意下さい。 ***ギャグが上手く書けなくてシリアスを書きたくなったので書きました。 ****ありきたりなお話です。 *****小説家になろう様にても掲載しています。

【完結】婚約者が好きなのです

maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。 でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。 冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。 彼の幼馴染だ。 そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。 私はどうすればいいのだろうか。 全34話(番外編含む) ※他サイトにも投稿しております ※1話〜4話までは文字数多めです 注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)

処理中です...