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殿下視点(10歳)
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私には6歳の時から、親に決められた婚約者がいる。
第一王子という立場でもうすぐ立太子する事になるのだから、この年での婚約は当然の事だ。
私は立場を理解し同意している。
しかし、我が婚約者殿は少し精神的に幼い所があり、勉強や鍛練に忙しく過ごす私の予定を考慮することなく、王宮に訪れる。勿論、婚約者を無下にすることなど出来ないのだから、丁寧に対応しているが…。正直うんざりしていた。
私に好意を持ってくれているのは有り難いが、有能なフェヘルグ侯爵がどうして娘をそのまま放置しているのか不思議に思っていた。
そんな時、婚約者であるティシアリュル嬢が病気で臥せって意識が戻らないとの連絡が届いた。
フェヘルグ侯爵に連絡して病状を尋ねた。
「それが、高熱で意識が戻らず呼吸は安定しているのですが…どうなるか…。」
私に純粋に好意を寄せてくれた令嬢への今までの自分の態度を思い出して激しく後悔した。
私は侯爵に面会を申し込むが意識が戻らないと断られていた。ティシアリュル嬢は日に日に衰弱しているようだ。居ても立っても入られず毎日侯爵家に通った。
そして五日後、彼女の意識が戻ったと連絡が入った。
侯爵に面会を申し込むが、「本人がまだ体調が万全では無いと言っているんです。」と断られてしまった。
それ以降も面会は断られ続けた。
「病気以降、娘は泣いている事が多くなり食も進まずかなり痩せてしまいました。未来の王太子妃として職務を全う出来ないかもしれません。ご迷惑をお掛けする前に婚約を白紙に戻したい。」
とうとう侯爵から私と陛下に婚約解消の申し出があった。
陛下は私がティシアリュル嬢を疎んじていた事を知っている。
「どうする?決めるのは早い方が良いが。」
決断を迫られ、私は陛下に懇願した。
「お願いです。私は婚約解消はしたくない。」
「ティシアリュル嬢の体調に合わせて少しずつ王妃教育を始めよう。それに耐えられないほど虚弱ならば、婚約解消も致し方ないと心得よ。」
「はい。」
私は必ず彼女を支えようと心に決めた。
私は侯爵家に彼女のお見舞いに訪れた。
応接室に入ってきた彼女は別人のように白く細くなり、儚げで今にも消えてしまいそうだ。
外見だけでなく、中身も別人になったようだった。面会した時の彼女は慎み深く会話には私への明確な拒絶があった。
今まで、彼女の目を見て微笑めば頬を染めて微笑みを返してくれていたが、今日は硬い作られた笑顔があるだけだった。
熱で私の事を忘れてしまったのだろうか?
毎日泣き暮らしていたと聞いた。それを支えられない自分を情けなく思う。
彼女に寄り添っていたなら彼女を支える権利を得ていたのだろうか?
今なら分かる。侯爵は私のティシアリュル嬢の態度に不満を感じ婚約解消を狙って彼女の行動を放置していたのだ。
第一王子という立場でもうすぐ立太子する事になるのだから、この年での婚約は当然の事だ。
私は立場を理解し同意している。
しかし、我が婚約者殿は少し精神的に幼い所があり、勉強や鍛練に忙しく過ごす私の予定を考慮することなく、王宮に訪れる。勿論、婚約者を無下にすることなど出来ないのだから、丁寧に対応しているが…。正直うんざりしていた。
私に好意を持ってくれているのは有り難いが、有能なフェヘルグ侯爵がどうして娘をそのまま放置しているのか不思議に思っていた。
そんな時、婚約者であるティシアリュル嬢が病気で臥せって意識が戻らないとの連絡が届いた。
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「それが、高熱で意識が戻らず呼吸は安定しているのですが…どうなるか…。」
私に純粋に好意を寄せてくれた令嬢への今までの自分の態度を思い出して激しく後悔した。
私は侯爵に面会を申し込むが意識が戻らないと断られていた。ティシアリュル嬢は日に日に衰弱しているようだ。居ても立っても入られず毎日侯爵家に通った。
そして五日後、彼女の意識が戻ったと連絡が入った。
侯爵に面会を申し込むが、「本人がまだ体調が万全では無いと言っているんです。」と断られてしまった。
それ以降も面会は断られ続けた。
「病気以降、娘は泣いている事が多くなり食も進まずかなり痩せてしまいました。未来の王太子妃として職務を全う出来ないかもしれません。ご迷惑をお掛けする前に婚約を白紙に戻したい。」
とうとう侯爵から私と陛下に婚約解消の申し出があった。
陛下は私がティシアリュル嬢を疎んじていた事を知っている。
「どうする?決めるのは早い方が良いが。」
決断を迫られ、私は陛下に懇願した。
「お願いです。私は婚約解消はしたくない。」
「ティシアリュル嬢の体調に合わせて少しずつ王妃教育を始めよう。それに耐えられないほど虚弱ならば、婚約解消も致し方ないと心得よ。」
「はい。」
私は必ず彼女を支えようと心に決めた。
私は侯爵家に彼女のお見舞いに訪れた。
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今まで、彼女の目を見て微笑めば頬を染めて微笑みを返してくれていたが、今日は硬い作られた笑顔があるだけだった。
熱で私の事を忘れてしまったのだろうか?
毎日泣き暮らしていたと聞いた。それを支えられない自分を情けなく思う。
彼女に寄り添っていたなら彼女を支える権利を得ていたのだろうか?
今なら分かる。侯爵は私のティシアリュル嬢の態度に不満を感じ婚約解消を狙って彼女の行動を放置していたのだ。
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