呪われた皇帝の執着或いは溺愛

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13.王宮を出ることになりました

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皇太后陛下とイクシオン公爵が魔女の呪いの断罪を受けてから、王宮の改革が進んだ。
イクシオン公爵家の捜索で密偵の疑いのある女官や文官は全て解雇された。

イクシオン公爵に近しい貴族は、その勢いを失くし、皇帝陛下は王族としての伝統の黄金の髪と瞳を取り戻した。

レイは呪いが解けた途端、同衾を止めた。

理性がどうとか言っていたけど……。

正直助かった。

いくら小さい頃毎日一緒に眠っていたとはいえ、最近ドキドキして心臓が持ちそうに無かった。
夜ふと目が覚めると、彼の整った顔が目の前にあって、シャープな頬はもうあの頃のように子供じゃないと感じさせる。
喉仏やたくましい腕にドキドキして、彼の男っぽい匂いに包まれて眠る。
意識しないようにと思えば思うほど恥ずかしくて顔を見れない。
きっと彼は私の事を姉か母親のように思ってる。

……だから、

「レイ、もう添い寝しないんだし、私の部屋は他のメイドと同じ場所に戻っていいかしら?」

「え?」

「だって、レイは呪いも解けたのよ?いつまでもメイドに手を出しているなんて噂が立つのは良くないもの。」

この気持ちに気付かない振りをして、彼から離れてしまいたかった。
きっと彼の傍には素敵な令嬢が寄り添うようになる。
呪いが解けた彼にはこれから縁談が山のように届くのだろう。

「ジェンナ、暫くアンテーノール侯爵の家へ行かないか?」

アンテーノール侯爵の家?

王宮で彼が他の令嬢と過ごすのを見るのはきっと辛い。
侯爵家でメイドとして働くのは良いかもしれない。

「侯爵様は何ておっしゃるのかしら?」

「僕からお願いしたよ。侯爵も喜んでくれているよ。安心して行くといい。」

彼はアンテーノール侯爵の執務室に案内してくれた。

「陛下から聞いている。家には連絡してあるし、今日私の執務が終わったら一緒に帰ろう。それまでに赤宮で一緒に働いていた者たちに挨拶するといい。」

「はい。これからよろしくお願いしますっ!」

侯爵様は迷惑そうな様子も無くて安心した。
穏やかで真面目な人柄だ。
安心して働くことが出来る。

同僚達の所に挨拶に行くと、みんな名残惜しんでくれて、お別れが寂しくなった。

「そっか侯爵様の所で就職するのね。ジェンナならどこでも大丈夫よ。」

「ハルシャワ伯爵令嬢に絡まれて大変そうだったしね。よかったね。いっぱい仕事手伝って貰ったし、今までありがとう。」

赤宮で一緒に働いたメイドたちとはすっかり打ち解けて仲良くなっていた。
恐ろしい皇帝陛下に気に入られた可哀想なメイドだと思われていたみたい。

レイは相変わらず、人前では冷たい冷気を背負ったままだ。
皇帝としての仮面はこれからも被り続けるのだろう。

待遇の良い職場だったから、侯爵家へ行くのは少し寂しい………。

でも……

「レイ、今までありがとう。」

「そんなっ、お別れみたいな挨拶しないで。出来る限り様子を見に行くよ。」

「レイは忙しいんだし、私になんて時間使わないで。」

レイは少し寂しそうに、だけど穏やかに微笑んだ。

「今日からジェンナが居なくても皇帝としてしっかり頑張るよ。」

つきん、と胸が痛んだ。でも、ずっと此処には居れないから……。
私は出来る限り明るく見えるよう微笑んだ。

「さよなら。レイ。」





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