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12.魔女の制裁
しおりを挟む※残虐な表現があります
メイマール帝国のアンドリュー皇帝陛下が魔女の怒りをかった原因を、長年イクシオン公爵家が魔女と帝国との約定を違えて、月影の木の無断伐採を行っていた事にあると公表した。
長年その美幌と、品の良い振る舞いで人気の高かった皇太后と、公爵家の罪は瞬く間に国民の間に広がった。
「皇太后様とイクシオン公爵様がこの街道を通って魔女の森へと移送されるぞ。」
「公爵家が月影の木を切ったことで魔女の逆鱗に触れたらしい。」
「魔女の作った瘴気の原因は公爵家にあったそうだ。陛下が公爵家の罪を暴いたらしい。」
「陛下の生母も皇太后に毒殺されたそうだ。なんて酷い奴等だ。」
魔女は罪人を檻で森まで移送し見せしめにするよう指示した。
国民の中には瘴気による病で大切な人を亡くした人も多い。
国民の厭悪の視線に晒され、時に投石を浴びせられ、皇太后とイクシオン公爵は街道を移送されていく。
檻の中には縄で拘束された皇太后とその兄のイクシオン公爵が乗っていた。
皇太后の表情には絶望と恐怖が刻み付けられ、往年の美貌は見る影も無い。
イクシオン公爵は怒りに顔を赤く染め、物見に来た人々を睨み付けていた。
「お前らのせいで家族が死んだんだっ!!」
「母ちゃんを返せーー!!」
少年が檻を追いかけて、皇太后と公爵に石や砂を投げつける。
二人は大勢の人々が石を投げつけられ、避けることも出来ない。石の当たった顔や手には小さな傷痕が出来ていた。
そして、魔女の森からの帰り道、彼らは同じ街道を通る。
見物客たちは皇太后と公爵のあまりの変容ぶりに言葉を失った。
もう誰も石を投げるものなど居ない。
縛られていた縄は解かれているのに、皇太后と公爵は既に動けない。
瞳には力が無く、口はだらんと開けられたまま。
服は裂け、髪は抜け落ち、一目で拷問された事が見てとれる。
二人の身体には無数の黒い斑点が浮かび出ていた。
その斑点がボワンと光る度に激しい苦痛があるのだろう。身体をピクピクと激しく痙攣させる。
街道を進むにつれ、彼らの斑点は大きくなり関節はあらぬ方向へと曲がっていく。
それは人とは大きく掛け離れた姿。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ーーー。」
嗄れたうめき声を上げながら、彼らは街道を進む。
魔女の森に手をだす者の断末魔の声は国民の心に恐怖として深く刻み込まれた。
そして、魔女の怒りを解いたことで、アンドリュー皇帝陛下は元の鮮やかな黄金の髪と目を取り戻した。
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