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12,救出

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この部屋に入れられどれくらいの時間が経ったのだろう。
寒さからか、恐怖からか、震えが止まらない。

ガタッ

「ケイト………。」

扉から姿を表したのは、逢いたかった愛しい人。

「…テオ?……テオ、テオ…!!」

少しでも早く彼の胸に飛び込みたくて、必死に腕を伸ばすけれど、ずっと震えていた足は力が入らない。

陛下は壊れ物を触るように、そっと私を抱き締めてくれた。
「ごめんね。怖い思いさせて。」

陛下の腕の中で怖かった気持ちが風船が萎むように消えていく。

「怖かっただろう?一応護衛が入り口で客が入らないよう見張ってたんだけど……。侍女にハンカチを渡したって聞いて……シェリーの救出を優先してってことだと思って。あの男にシェリーの居場所を吐かせて無事を確認するまで、君は戻らないかと思って。」

陛下は宥めるように私の背中を撫でてくれる。  

「シェリーは…無事?」
「少し頭を怪我している。軽い怪我だが念のため直ぐに医者の所へ運ぶよう指示してある。」

ドアの入り口では女将と呼ばれていた女性が青い顔で呆然と立っていた。

「案内してくれてありがとう。女将」
「い、いえ。身分を知らなかったとはいえ、申し訳ありませんでした。」

「いや、直ぐに客を付けないでいてくれて助かった。そんな事になっていたら、シェリーの救出の前に強引に踏み込んでいただろうからね。幸いあの男に見張りは付いてなかった。あちらも、もう余裕は無いんだろう。」

「シェリーが無事なら良かったわ。」

陛下が私の背を撫でながら、女将に話し掛ける。

「ところで女将、ここの娼館には子供達の泣き声も聞こえるんだけど?」

女将は顔色を更に悪くして質問に答える。

「し、娼婦達の子供です。」

「どうしてこんな所に?」

「こ、此処で働いている子達は色んな事情があるから…、子連れの女の子も多いんです。生活してく為にはこんなところでも必要なんです。お願いです。ここを潰さないでください。」

女将は地面にぶつけそうな勢いで陛下に頭を下げる。

「そう、子供が居るには環境が良くないし、花街の近くに夜も利用できる託児施設を作ろう。」

「え?」女将は驚いて陛下を見上げる。

「何?不満?」

「い、いえ、私はてっきりお咎めがあるかと。あ、ありがとうございます。これで母親達も助かります!」

「その代わり、ここには誰も来なかった!……いいね。」
「は、はい。」

女将の反応を見ると陛下は納得したように頷いた。

「うん。よろしく。近々王宮に証言に来てね。」

私は陛下に連れられて離宮に戻った。

「ケイト、セリーヌを裁く為の審判の儀は出席して欲しい。君が汚されたと勘繰られ無いように。」

陛下は申し訳無さそうに言うが、出席は当然だ。女将の証言だけでは弱い。
ただでさえ噂好きの貴族だ。付け入る隙を与えたくないのは当然だろう。

「ええ、解っております。平然と居てみせますわ。」

私が自信ありげに頷いて見せると、陛下は安心したように息を吐いた。

「じゃあね。ゆっくりお休み。」

私の手を取るとそっとキスをして、陛下は王宮に戻っていった。
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