皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。

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11,テオパルド視点2

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※セリーヌが可哀想に思う人もいると思います。
そういう方は読まない方がいいかもしれないです。


王宮にケイトが来たと連絡を受けた。

「どこからの情報だ?来るはずないが……。」

至急の要件か?
警戒しながら王宮の廊下を急ぐ。

途中で後宮の女官がやって来た。

「ケイト様が倒れたそうです。」 
「倒れた?どこだ?」
「こちらへ。案内します。」

ケイトは偽の情報で呼び出されたのだろうか?
セリーヌか?

「ケイトの容態は?」
「私には分からないです。」
「侍医に連絡は?」
「既に。」

昨日王宮では小火騒ぎがあり、捜査の為警備が手薄だ。

おまけにセリーヌの父親であるアッポオウ伯爵の悪事の証拠も漸く揃おうとしていた。そちらにも人員を割いている。

怒りに狂いそうになる頭をどうにか鎮め、その女官に付いていく。

女官に案内されたのは後宮の一室。
こんな所に?
入るのを躊躇していると、背後から背中をドンと押され、鍵を掛けられた。

「何をする!」
ガチャガチャ
「くそっ!」
ドンドン
「誰か!誰かおらぬか!」
ドンドン
「陛下。」

後ろから声がして振り向くとセリーヌがにこやかに微笑んでいた。

「ケイトはどうした?」

セリーヌを睨み付けるが、セリーヌは笑みを崩さない。

「ケイト様は今頃馬車に乗せられている筈ですわね。」
「ケイトをどうするつもりだ!」
「行き先は娼館ですわ。」 
「何だと!何をしてるのか分かっているのか?」

怒りで頭に血が昇る。顔が熱い。

「ケイト様は陛下をずっと一人占めしてきたんですもの。少し穢れていただくだけですわ。ケイト様を助けたくば、私を抱いてくださいませ。」

セリーヌは服を緩めると妖艶に笑った。するりと肩から服を落とすと豊かな乳房が露になる。

「陛下………。私を抱かないとケイト様の居場所は分かりませんわよ。」

私の下半身に手を伸ばし、包み込むように触れる。

「くっ、やめろ、」

セリーヌは私の身体を好き勝手に触るが私の下半身は反応しない。当たり前だ。こんな時に反応する訳がない。

「ケイト様……。陛下の心を一人占めして、本当に憎らしい……。」

セリーヌは悔しそうに呟くと、私を見上げニヤリと嗤った。

「…これは使いたく無かったのですが………。異国の媚薬ですわ。これを使うと理性など、粉々になるんですって。」
「止めろ!自分が何をしているのか解っているのか?」
「解っております。どうせもうすぐ後宮には居れなくなりますもの。最後に抱いて下さいませ。」
「止め……。」

私の口元に瓶の口を付け、薬を飲ませようとした時、

バリーーン

「陛下!」

窓から護衛のラッドが入ってきた。
ラッドは素早くセリーヌを拘束する。

「セリーヌ様!」
部屋の扉からセリーヌの護衛のムンが勢い良く入ってきた。
「確保しろ!」
「承知!」

ガキーン、ガキーン、ドスンッ、

護衛のムンも拘束し、セリーヌの首筋に刀を当てる。

「ケイトはどこだ!」

ムンはセリーヌに忠実な護衛だ。今までもセリーヌの犯罪に手を貸してきた。
セリーヌを人質に取られたムンが顔を歪め、仕方なく答える。

「コーザ地区の娼館へ。」

皇后が娼館で見つかれば不貞を疑われてしまう。

「な、何を!!」
私はセリーヌとムンにセリーヌが持っていた媚薬を飲ませる。
「どうするつもり?」
「時間稼ぎだ。こちらで騒ぎを起こしてもらう。」

皇妃と護衛が睦みあっているのを発見されれば、王宮中が大騒ぎになる。 王宮内が混乱している間にケイトを救出したい。

「陛下!私は幼い頃より陛下をお慕いしておりました。なのに…こんなことをなさるなんて!」

セリーヌが私に縋るような目を向ける。

「君がケイトに何をしたか、知らないとでも?昔ケイトを泥酔した騎士達のいる宿舎に放り込んだこともあっただろ?君がケイトにしようとしたことが自分に返ってきただけだよ。」
「ど、どうして……。あの女ばっかり…。」

セリーヌは唇を血が出そうな程噛みしめ私を憎しげに見詰める。

しかしそんな表情は長くは続かない。即効性の媚薬はセリーヌの意思を封じ込めた。

媚薬が効いてトロンとした二人の拘束を解き部屋に閉じ込め鍵を掛ける。

後は発見されるまで、どれだけ時間が稼げるか。

私は急いでコーザ地区まで馬を走らせた。


    
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