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星の王子さま、賢王になる!
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数年後ーー
裏通りに住む人たちはみんな働けるようになりました。もう、道路にうずくまっている人も、ボロボロの服を着た子供も居ません。
ロレンツォは自分が誇らしくなりました。
ステッラにもう一度会ってこの裏通りを、みんなが豊かに暮らす姿を見てもらいたい、そう思いました。
そこでロレンツォは踊り子の雇い主を探し出して会いに行きました。
「あの子は、踊り子を止めて生まれた村に帰ったよ」
「え?」
「ステッラは子供の頃両親を亡くしているんだ……。お金が無くて随分苦労したそうだよ。あの時は弟さんの学費の為にここで働きに来ていてね……、もう弟さんも大きくなったから、踊り子なんてしなくてもいい。今は元々好きだった刺繍の仕事をしているそうだよ」
「ステッラは踊ることが好きだったんじゃ……」
「いや……彼女は恥ずかしがり屋だったから人前で踊るなんて嫌いだったよ。踊り子の衣装だって、破廉恥だから着たくないって言ってたしね。客に身体を触られて嫌な思いをすることもあって、慣れる前は舞台に上がる度に泣いていて大変だったよ」
「でも……あんなに笑って」
「ステージで笑わない踊り子なんて居ないさ」
ロレンツォは自分が恥ずかしくなりました。だってロレンツォはステッラが踊りを好きだと思い込んでいたからです。
あんなにのびのびと身体を動かして、弾けるような笑顔を見せていた彼女は、ロレンツォの見た幻でした。
実際のステッラは貧しさに苦しんでいたのです。
そして更に数年後、ロレンツォは美しい花嫁と結婚式を挙げることになりました。
花嫁は遠い国から来たお姫様。
ロレンツォはこの花嫁を大切しようと心に決めていました。
ヴァレリアは誠実な一つ年上の男性と結婚して、今は男の子の母親です。とても幸せそうな彼女を見てロレンツォはほっとしていました。
ロレンツォはもう星空を眺めて夜ふかしすることはありません。貧しい人を助けるため、ロレンツォは明日も頑張って働かなければならないからです。
あれから一度もステッラとは会っていません。
自分に国の本当の姿を見せてくれた人。
もう会う機会もありませんが、今もロレンツォはステッラの幸せを願っています。
ロレンツォは貧しい人たちがいなくなるように、ますます頑張っていました。
国民に寄り添ってくれるロレンツォは国王となった後も大人気。
ロレンツォの治世は豊かで平和でした。
こうして、かつて『星の王子さま』と呼ばれた少年は賢王となったのです。
ーおわりー
裏通りに住む人たちはみんな働けるようになりました。もう、道路にうずくまっている人も、ボロボロの服を着た子供も居ません。
ロレンツォは自分が誇らしくなりました。
ステッラにもう一度会ってこの裏通りを、みんなが豊かに暮らす姿を見てもらいたい、そう思いました。
そこでロレンツォは踊り子の雇い主を探し出して会いに行きました。
「あの子は、踊り子を止めて生まれた村に帰ったよ」
「え?」
「ステッラは子供の頃両親を亡くしているんだ……。お金が無くて随分苦労したそうだよ。あの時は弟さんの学費の為にここで働きに来ていてね……、もう弟さんも大きくなったから、踊り子なんてしなくてもいい。今は元々好きだった刺繍の仕事をしているそうだよ」
「ステッラは踊ることが好きだったんじゃ……」
「いや……彼女は恥ずかしがり屋だったから人前で踊るなんて嫌いだったよ。踊り子の衣装だって、破廉恥だから着たくないって言ってたしね。客に身体を触られて嫌な思いをすることもあって、慣れる前は舞台に上がる度に泣いていて大変だったよ」
「でも……あんなに笑って」
「ステージで笑わない踊り子なんて居ないさ」
ロレンツォは自分が恥ずかしくなりました。だってロレンツォはステッラが踊りを好きだと思い込んでいたからです。
あんなにのびのびと身体を動かして、弾けるような笑顔を見せていた彼女は、ロレンツォの見た幻でした。
実際のステッラは貧しさに苦しんでいたのです。
そして更に数年後、ロレンツォは美しい花嫁と結婚式を挙げることになりました。
花嫁は遠い国から来たお姫様。
ロレンツォはこの花嫁を大切しようと心に決めていました。
ヴァレリアは誠実な一つ年上の男性と結婚して、今は男の子の母親です。とても幸せそうな彼女を見てロレンツォはほっとしていました。
ロレンツォはもう星空を眺めて夜ふかしすることはありません。貧しい人を助けるため、ロレンツォは明日も頑張って働かなければならないからです。
あれから一度もステッラとは会っていません。
自分に国の本当の姿を見せてくれた人。
もう会う機会もありませんが、今もロレンツォはステッラの幸せを願っています。
ロレンツォは貧しい人たちがいなくなるように、ますます頑張っていました。
国民に寄り添ってくれるロレンツォは国王となった後も大人気。
ロレンツォの治世は豊かで平和でした。
こうして、かつて『星の王子さま』と呼ばれた少年は賢王となったのです。
ーおわりー
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わーい\(*ˊᗜˋ*)/
絵が書けると良いのですが、下手くそです!
(´×ω×`)
完結お疲れ様でした💐
ステッラと結ばれることがなかったというのが悲しい展開でもありますが
だからこそお話に深みがでるのかなって思いました🥲
読んだあと感動して泣きました😭
短いお話ですけれど、王子様の成長する様子が描かれていて
素敵な作品だと思いました
良いお話をありがとうございます🙇♀️
また次の作品を楽しみにしています💕
青空様
感想ありがとうございます
(*u᎑u)感謝♡
童話風のお話を書いてみたくてチャレンジしてみました!
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