この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します

文字の大きさ
上 下
23 / 32
2章

6.

しおりを挟む
今日は、魔石の採掘場の視察に同行している。
リュート王国では魔石がとても重要で、王族の方々が定期的に視察に来ている。
違法取引がないか役人を見張る目的もあるが、労働者への労いのためだ。
リュート王国では王族が国民に大人気だ。
担当者が採掘現場の案内をしてくれている。
周囲には人々が集まっていて、騎士達が警備を行っている。
担当者の説明に耳を傾けていると、突然三人の騎士が斬りかかってきた。

「謀反だ‼取り押さえろ‼」

騎士は私の方に向かってきたけれど、私はシオン様の防御魔法で透過する。あっと言うまに犯人は他の騎士に取り押さえられてしまった。
犯人が縛られると、犯人の周りの魔法が解除されたのが分かる。
すると、認識阻害の魔法が解けて急に姿を現した陛下と王妃様に捕らえられた犯人達が驚いている。
「どうして陛下が……」
犯人達は状況を確認するよう辺りを見回す。
「ゴメット侯爵に騙されたんだ。陛下を狙うなんて聞いていない‼」と叫んでいる。
騎士隊長が縛られた犯人の前に来て尋問する。
「お前達の雇い主は?」
「ゴメット侯爵だ。」
「お前達の目的は?」
「シオン殿下の婚約者の令嬢を殺すよう頼まれた。」
「ここにはいないが?」
騎士隊長が訝しげな表情で口調を強くする。
犯人達は驚いて私の方を見る。犯人達以外には私は見えていない。
「嘘じゃない‼報酬が高すぎるのと、令嬢一人に三人も騎士を雇うなんて怪しいと思っていたんだ。騙されたんだ‼」
一人喚く男の横で黙って俯いている二人にも確認する。
「この男の言っていることは本当か?」
「ああ。本当だ。」
「俺も怪しいと思ってた。」
「誰を狙おうと、お前達が陛下に剣を向け襲いかかったのは事実。多くの証人もいる。」騎士隊長に冷たく言われ、縛られた男達は騎士に馬車に詰め込まれ連れていかれた。


ゴメット侯爵視点

この国の王族は欲がない。魔石の取引を上手く利用すれば、国はもっと潤うだろう。
他の国の平和なんてこと考えなければ、魔石の値段はいくらでもつり上げられる。

この国の三男のシオン殿下は膨大な魔力を持っている。本当の属性は秘匿されているが。

シオン殿下は野心が全く無くていつもへらへら笑っているような人柄だ。カトリーナをシオン殿下に嫁がせ、真面目で善良なこの若造を利用すれば、もっと政治に干渉出来る。
まずは我が家が後ろ楯になって、王位を継がせなければ。

☆☆☆☆☆☆

シオン殿下がティネス王国へ留学した。計画に遅れが生じた。シオン殿下の取り込みは学園卒業まで待たなければならない。
そんな中、ティネス王国の公爵令嬢と婚約したと連絡が届いた。
なんてことだ。なんとしてもこの縁談を潰さなければ。
そう思っていたところに、シオン殿下が婚約者を連れて王宮に帰って来た。

令嬢の評判を落としてやろうと画策するが、上手くいかない。
毒も効かない。調査すると令嬢は闇属性の魔法が使えるらしいので自分で解毒したのだろう。
忌々しい。

こうなれば、騎士に殺させよう。
ここはリュート王国だ。連れてきた従者と侍女も殺せばいい。
適当に窃盗の罪でも被せ、捕らえる途中に抵抗して斬られたことにしよう。たった一人の令嬢のためにティネス王国も戦争は起こさないだろう。
ただ、いつもシオン殿下が付いているし厄介だ。確実に殺すため騎士を多めに雇おう。
シオン殿下の婚約者が魔石の発掘現場に視察に行くらしい。
騎士に襲わせるチャンスだ。



大勢の騎士が屋敷に押し入ってきた。


「ゴメット侯爵。あなたに謀反の容疑が掛かっています。ご同行願えますか?」
謀反?
何が起こったのだ!


謁見の間で拘束されたまま、陛下の前に連れて来られた。

陛下は無表情で私を見下ろす。
側に控える宰相が罪状を読み上げる。
ファーマイド公爵令嬢への毒の混入は知っているが謀反とはどういうことだ?

「ゴメット侯爵。貴殿は騎士を3人買収し、陛下と王妃の魔石採掘現場視察の日に襲わせた。それに相違ないな?」
「陛下と王妃は狙っていない。」
「確かに騎士はファーマイド公爵令嬢を狙うよう指示されたと証言している。」
「しかし、大勢の民の前で、貴殿の雇った騎士達が陛下と王妃に斬りかかったのは事実。目撃者も多数おるぞ。」
「騎士三人もゴメット侯爵に雇われたと証言しています。また、その証言する様子もも大勢の民が目撃しました。」
「もう言い逃れは出来ん。今までの国への貢献も考慮して、極刑は避けよう。ゴメット侯爵は終身刑、領地は没収し暫く王家が管理する。娘と奥方は修道院へ。」

陛下の後ろでシオン殿下が冷たい笑みを浮かべる。
こんな表情が出来る男だったか?

読み間違えた。

気付いたのが遅かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブはモブらしく生きたいのですっ!

このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る! 「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」 死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう! そんなモブライフをするはずが…? 「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」 ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします! 感想めっちゃ募集中です! 他の作品も是非見てね!

こんにちは、女嫌いの旦那様!……あれ?

夕立悠理
恋愛
リミカ・ブラウンは前世の記憶があること以外は、いたって普通の伯爵令嬢だ。そんな彼女はある日、超がつくほど女嫌いで有名なチェスター・ロペス公爵と結婚することになる。  しかし、女嫌いのはずのチェスターはリミカのことを溺愛し──!? ※小説家になろう様にも掲載しています ※主人公が肉食系かも?

前世と今世の幸せ

夕香里
恋愛
【商業化予定のため、時期未定ですが引き下げ予定があります。詳しくは近況ボードをご確認ください】 幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。 しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。 皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。 そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。 この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。 「今世は幸せになりたい」と ※小説家になろう様にも投稿しています

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ

奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。  スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

ひとりぼっち令嬢は正しく生きたい~婚約者様、その罪悪感は不要です~

参谷しのぶ
恋愛
十七歳の伯爵令嬢アイシアと、公爵令息で王女の護衛官でもある十九歳のランダルが婚約したのは三年前。月に一度のお茶会は婚約時に交わされた約束事だが、ランダルはエイドリアナ王女の護衛という仕事が忙しいらしく、ドタキャンや遅刻や途中退席は数知れず。先代国王の娘であるエイドリアナ王女は、現国王夫妻から虐げられているらしい。 二人が久しぶりにまともに顔を合わせたお茶会で、ランダルの口から出た言葉は「誰よりも大切なエイドリアナ王女の、十七歳のデビュタントのために君の宝石を貸してほしい」で──。 アイシアはじっとランダル様を見つめる。 「忘れていらっしゃるようなので申し上げますけれど」 「何だ?」 「私も、エイドリアナ王女殿下と同じ十七歳なんです」 「は?」 「ですから、私もデビュタントなんです。フォレット伯爵家のジュエリーセットをお貸しすることは構わないにしても、大舞踏会でランダル様がエスコートしてくださらないと私、ひとりぼっちなんですけど」 婚約者にデビュタントのエスコートをしてもらえないという辛すぎる現実。 傷ついたアイシアは『ランダルと婚約した理由』を思い出した。三年前に両親と弟がいっぺんに亡くなり唯一の相続人となった自分が、国中の『ろくでなし』からロックオンされたことを。領民のことを思えばランダルが一番マシだったことを。 「婚約者として正しく扱ってほしいなんて、欲張りになっていた自分が恥ずかしい!」 初心に返ったアイシアは、立派にひとりぼっちのデビュタントを乗り切ろうと心に誓う。それどころか、エイドリアナ王女のデビュタントを成功させるため、全力でランダルを支援し始めて──。 (あれ? ランダル様が罪悪感に駆られているように見えるのは、私の気のせいよね?) ★小説家になろう様にも投稿しました★

3年前にも召喚された聖女ですが、仕事を終えたので早く帰らせてもらえますか?

せいめ
恋愛
 女子大生の莉奈は、高校生だった頃に異世界に聖女として召喚されたことがある。  大量に発生した魔物の討伐と、国に強力な結界を張った後、聖女の仕事を無事に終えた莉奈。  親しくなった仲間達に引き留められて、別れは辛かったが、元の世界でやりたい事があるからと日本に戻ってきた。 「だって私は、受験の為に今まで頑張ってきたの。いい大学に入って、そこそこの企業に就職するのが夢だったんだから。治安が良くて、美味しい物が沢山ある日本の方が最高よ。」  その後、無事に大学生になった莉奈はまた召喚されてしまう。  召喚されたのは、高校生の時に召喚された異世界の国と同じであった。しかし、あの時から3年しか経ってないはずなのに、こっちの世界では150年も経っていた。 「聖女も2回目だから、さっさと仕事を終わらせて、早く帰らないとね!」  今回は無事に帰れるのか…?  ご都合主義です。  誤字脱字お許しください。

婚約者のいる運命の番はやめた方が良いですよね?!

月城光稀
恋愛
結婚に恋焦がれる凡庸な伯爵令嬢のメアリーは、古来より伝わる『運命の番』に出会ってしまった!けれど彼にはすでに婚約者がいて、メアリーとは到底釣り合わない高貴な身の上の人だった。『運命の番』なんてすでに御伽噺にしか存在しない世界線。抗えない魅力を感じつつも、すっぱりきっぱり諦めた方が良いですよね!? ※他サイトにも投稿しています※タグ追加あり

処理中です...