この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します

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その夜は泣き疲れて眠ってしまった。

翌朝、眼がパンパンに腫れて酷い顔だ。ミリーに冷やして貰っているとシオン様の訪室が告げられた。
「会いたくないなー。」
「シオン殿下も眠れなかったのでしょう。酷いお顔でした。会って差し上げては?」
「女の嫉妬は醜いって相場が決まってるのよー。」
「お嬢様は可愛らしいですわ。思っていることは全部お話になってはいかがですか?夫婦になるのですから、余計なすれ違いは不要です。」

ミリーに諭されシオン様に会う。シオン様が目の前にいるのが分かるが顔が見れない。

ミリーは声が聞こえないよう、少し離れた所で控えている。

「ごめんね。レティ。僕が油断してたんだ。もうこんなことは起こらないよう、自分に防御魔法を掛けたよ。レティ以外の人は触れないから。」シオン様の声は呟くように小さい。
「あの方とは、どういう関係だったのですか?」
「彼女の父親が、王宮で働いていて昔からよく遊びに来ていたんだ。でも付き合ってたとかそういう事は一切ない。僕は触ったこともないよ。」
えっ?あれが初めてなの?
「いつも……キスをして……らっしゃったのかと……でないと、女性からあんな積極的な……」
シオン様は顔をしかめる。
「彼女の父親が、僕と結婚させたがっていたんだ。今までは父親への牽制にだけ動いて来たけど、彼女のことも気をつけるよ。」

私は思いきって尋ねることにした。
「シオン様は………………めてではないのですか?。」
「ごめんね。レティ。聞き取れないよ。」
「シオン様のキスは私が初めてではないのですか。」
おずおずと顔を上げて聞いてみた。

「あの…………。慣れていらっしゃったから……」

シオン様の顔が真っ赤に染まる。

私も恥ずかしくて俯いてしまう。

「僕はレティが初めてだよ。レティは?」

「私も初めてです。」

ますます顔が熱くなる。恥ずかしくて消えたい。

「あの方とたくさんキスをしてきたから上手かったのかと……そう思ったら辛くて……」

「……レティ。抱きしめてもいい?」

「は……い。」

シオン様に抱き込まれる。すっかり嗅ぎ馴れたシオン様の匂い。大好きな香りだ。

「レティ。初恋も、告白したのも、キスしたのも、全部ぜーんぶ、レティが初めてだよ。」
言い聞かせるような優しい口調。

抱き込んだ腕を離すと、私と視線を合わせるように少し膝を曲げ私の顔を覗き込む。
「ねぇ。」
「これからも僕の初めてはレティが貰って?」
恥ずかしくてコクコク頷くことしか出来ない。
「レティ初めても全部僕が貰うよ?」
再びコクコク頷く。恥ずかしくて壊れた人形のようだ。
ふと思う。
「初めてだけじゃ……無くて、そのあとも……私だけがいいです。駄目……ですか?」
そう。私は独占欲が強かったみたいなのだ。ドン引きされないだろうか?
不安に思い首を傾げてシオン様の表情を伺う。
「もちろん‼」
痛いほどに抱き締められた。



ミリーに紅茶を入れてもらって二人で飲む。
「シオン様に防御魔法を掛けるってどういう事ですか?」
「僕ねー全部の属性の魔法が使えるんだ。魔力も多くてね。目立つの嫌だから学園では魔力を抑える魔道具を着けてるんだー。」
シオン様はなんでも無いことのように話すが凄い事だ。
「闇と光の両方使えると、結構何でも出来るよ。それでね。レティにも防御魔法をかけたいんだ。」
「あっ。はい。分かりました。何か不便なことはありますか?」
「うーん。レティに誰も触れなくなるから転びそうになっても僕以外は支えられないよ。」
「それは困りますね」
「でも、防御魔法だし階段から落ちても怪我はしないよ。毒も媚薬も呪いも、睡眠薬も効かないよ。」
それは無敵モードでは?
流石ゲームの世界だ。
「分かりました。それでシオン様が安心なさるなら。」
ニッコリ笑う。

そうやって、私たちはリュート王国に滞在中は最強の防御魔法で守られることになった。
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