この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します

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1章

14.

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いよいよ、私の誕生日がやって来た。
私は朝から身支度を整え、会場の入り口で招待客を迎えている。
「レティシア様、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。親しい人だけの気軽なパーティーなの。ゆっくりしていってくださいね。」
ずっとこの挨拶を繰り返している。笑顔は常に固定仕様。
次々来る招待客への挨拶であわただしく、入り口でゆっくり話す暇はない。
「シア。おめでとう。」
「ライラ。ジルベルト様もゆっくりなさっていってください。」
「リリーもありがとう。」

招待客もほとんど到着し、一段落付いていると大好きな人の声がした。
「レティ。おめでとう。」
「シオン様!プレゼントありがとうございます。」
「ん。似合うよ。」
今日の髪型はミリーの自信作だ。
今朝シオン様から届いたばかりの髪飾りをつけて髪の片側を結い上げ、サイドを巻いて下ろしてある。
髪飾りはシルバーに赤色の魔石が嵌まっており、シオン様の色だ。嬉しい。
黒髪にシルバーが映える。
今日はシオン様も私の贈った腕輪を付けている。
招待客が全て会場に入ったため私たちも会場に入ろうとすると急に腕を引かれた。
シオン様が私の肩に額をグリグリ擦りつける。
「レティ。あんまり他の男の人と話しちゃだめだよー。僕、やきもち妬いちゃう。レティは綺麗なんだからね。」
甘えるように言ってくる。
私は真っ赤になってコクコク頷く。
私の反応を見て満足したのか、シオン様はいつもの天使の微笑みを浮かべると、私をエスコートしてパーティー会場に入った。

 パーティー会場に入ると、私をエスコートしているシオン様に注目が集まる。
しかも、お互いに相手の色を象徴するアクセサリーを身に付けている。
ざわざわと噂が広がる。みんなが探るような視線を向ける。
それを肯定するように優雅に微笑むと、ライラとリリーが私の所にやって来た。
「シア。相変わらずラブラブねー」
みんなの視線が確信に変わる。

ふと視線を移すと、キョロキョロしているロザンナ様と目が合う。
私はロザンナ様の方に歩み寄る。
「ロザンナ様。誰かお探しですか?」
首を傾げてとぼけてみる。
「今日は殿下は……?」
「アルバート殿下なら少し遅れるそうですわ。」
「そう。」
ほっとした様子を見せた後、
「ところで、レティシア様とシオン殿下は、その……」
「うふふ。まだ正式なものではありませんの。ご想像にお任せしますわ。」
微笑んで曖昧に答える。




半刻ほど経ち、招待客がそれぞれ談笑を始めた頃、
「レティシア嬢。遅れてすまない。」
アルバート殿下がマリアさんをエスコートして会場に姿を見せた。
「まあ。アルバート殿下、マリアさん、ようこそ。」
二人が一緒に来るのが当然だと言うように振る舞う。
私とシオン様とアルバート殿下とマリアさんの四人で親しげに会話をする。
「今日はご協力ありがとうございます。」
シオン様が黒い笑みを浮かべると、アルバート殿下も「先日の借りを返せて良かった」と応じる。
マリアさんは私だけに聞こえるヒソヒソ声で「きちんと告白イベント起きました。アルバート殿下は攻略出来そうです。」と報告してきた。
和やかに談笑している私たちをロザンナ様が凄い形相で見ている。
悪役の顔だなーなんてのんびりと思う。

招待客も冷静だ。ロザンナ様の表情と私たちの様子を見て、正しい関係性が分かるのだろう。

いつもの取り巻き以外はロザンナ様と距離を置くのが見える。

ライラとリリーの作戦は大成功だ。
私たちが自分で吹聴して回るより、この場の雰囲気に居合わせた人たちが真実を悟る。
噂より体験。
どっちが本当なんて子供でも分かる。
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