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1章
12.
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目を覚ますと古い小屋のような建物にいた。
手と足がロープで縛られている。
回りを見るとマリアさんも縛られているのが分かる。
「どうする?」
「おー、びびった。王子の護衛ついてる可能性もあるってんで一応転移陣二つ用意しておいて正解だったな。あれ、黒髪の女の護衛だぜ。ピンクブロンドの髪の女より、こっちの黒髪の女の方が高位貴族のようだ。高く売れるだろうさ。」
「ピンクブロンドの女は犯せ。依頼人の命令だ。犯した後は放置すればいい。」
「もう一人は家に帰れないようにしてほしいそうだ。……売るか。商品価値が下がるから犯すなよ。隣国のあの変態貴族が高く買いそうだ。」
男たちの一人が指示を出す。
マリアさんの方を見るが、顔は見えない。
私、売られるの?恐怖に震える私に、男が冷たく命じる。
「立て!」
「お前は隣の部屋で待機だ。」
私は腕を引き上げられ立たされて、隣の部屋に連れて行かれた。
隣の部屋に入ると椅子に括られる。
「お友達は今から貫通の儀式だ。声は聞こえるだろう。疼くかもしれねぇが我慢しな。あんたも今に同じ目にあう。」
下婢た笑みで、男がしゃべる。
ロイズはどうしたのかしら。きっと探してくれているはず。でも、転移までは追いかけられないかも。不安が大きすぎて考えが纏まらない。
逃げる方法……焦れば焦るほど色んな考えが頭の中を通りすぎる。
「えっ。」
突然何も無いところからシオン様が出てきて、私に向かってゆっくり歩いてくる。いつの間にか、男は光る紐のようなものでぐるぐる巻きに拘束されている。シオン様は何もしていないように見える。一瞬のことでびっくりしている間に、シオン様は私を縛っていたロープを切ってくれた。
「レティ。怖かったでしょ?大丈夫?」
赤くなった私の手首を擦りながら心配そうに尋ねてくれる。
「ありがとうございます。でもどうやって分かったんですか?」
シオン様は意味ありげにうっすらと笑い
「んー、内緒。間に合って良かったよ。」
「あっ。マリアさん。」
隣の部屋から剣を打ち合うような高い音が聞こえる。
「大丈夫。向こうはアルバート殿下がいるから。僕たちは帰るよ。」
私はシオン様に横抱きにされ、小屋を後にした。
安心すると一気に震えがきて止まらない。
シオン様は私をあやすように背中を撫でてくれた。
小屋を出て暫く歩くと、ロイズとミリーが馬車の前で待っていた。
「すみません。助かりました。ありがとうございます。この件は主人にも報告してしかるべきお礼を。」
「いいよ。それよりも君の見解を聞きたいな。」
「お嬢様を拐った男は少なくとも認識阻害の魔道具を使い近づいて、逃げるときも何らかの加速の効果が付与されたものを使い走って逃げ、一回限り使える転移陣を使用していました。一つでも値が張りますが二つずつ使用されており、高位貴族の援助が無いと、手に入れるのは不可能です。そして高位貴族でも当主でなければこの額は出せないかと。」
「ありがとう。僕と一致するね。」
シオン様は今までの凛々しい表情から一転、私の方を見てふわりと笑うと
「レティ。ゆっくり休んでね。」
と言って去ろうとするので思わずシオン様の服を掴んだ。
俯いて首を振り、泣いている私を見てシオン様は私を優しく抱き締めると
「大丈夫。何があっても守るよ。今日はおとなしく帰ろう?そこの侍女も護衛も困ってるよ。」と言い聞かせるように言うと、私の額に唇を落とす。
私が赤くなって固まってしまうと、今度こそ彼は背を向けて去っていった。
手と足がロープで縛られている。
回りを見るとマリアさんも縛られているのが分かる。
「どうする?」
「おー、びびった。王子の護衛ついてる可能性もあるってんで一応転移陣二つ用意しておいて正解だったな。あれ、黒髪の女の護衛だぜ。ピンクブロンドの髪の女より、こっちの黒髪の女の方が高位貴族のようだ。高く売れるだろうさ。」
「ピンクブロンドの女は犯せ。依頼人の命令だ。犯した後は放置すればいい。」
「もう一人は家に帰れないようにしてほしいそうだ。……売るか。商品価値が下がるから犯すなよ。隣国のあの変態貴族が高く買いそうだ。」
男たちの一人が指示を出す。
マリアさんの方を見るが、顔は見えない。
私、売られるの?恐怖に震える私に、男が冷たく命じる。
「立て!」
「お前は隣の部屋で待機だ。」
私は腕を引き上げられ立たされて、隣の部屋に連れて行かれた。
隣の部屋に入ると椅子に括られる。
「お友達は今から貫通の儀式だ。声は聞こえるだろう。疼くかもしれねぇが我慢しな。あんたも今に同じ目にあう。」
下婢た笑みで、男がしゃべる。
ロイズはどうしたのかしら。きっと探してくれているはず。でも、転移までは追いかけられないかも。不安が大きすぎて考えが纏まらない。
逃げる方法……焦れば焦るほど色んな考えが頭の中を通りすぎる。
「えっ。」
突然何も無いところからシオン様が出てきて、私に向かってゆっくり歩いてくる。いつの間にか、男は光る紐のようなものでぐるぐる巻きに拘束されている。シオン様は何もしていないように見える。一瞬のことでびっくりしている間に、シオン様は私を縛っていたロープを切ってくれた。
「レティ。怖かったでしょ?大丈夫?」
赤くなった私の手首を擦りながら心配そうに尋ねてくれる。
「ありがとうございます。でもどうやって分かったんですか?」
シオン様は意味ありげにうっすらと笑い
「んー、内緒。間に合って良かったよ。」
「あっ。マリアさん。」
隣の部屋から剣を打ち合うような高い音が聞こえる。
「大丈夫。向こうはアルバート殿下がいるから。僕たちは帰るよ。」
私はシオン様に横抱きにされ、小屋を後にした。
安心すると一気に震えがきて止まらない。
シオン様は私をあやすように背中を撫でてくれた。
小屋を出て暫く歩くと、ロイズとミリーが馬車の前で待っていた。
「すみません。助かりました。ありがとうございます。この件は主人にも報告してしかるべきお礼を。」
「いいよ。それよりも君の見解を聞きたいな。」
「お嬢様を拐った男は少なくとも認識阻害の魔道具を使い近づいて、逃げるときも何らかの加速の効果が付与されたものを使い走って逃げ、一回限り使える転移陣を使用していました。一つでも値が張りますが二つずつ使用されており、高位貴族の援助が無いと、手に入れるのは不可能です。そして高位貴族でも当主でなければこの額は出せないかと。」
「ありがとう。僕と一致するね。」
シオン様は今までの凛々しい表情から一転、私の方を見てふわりと笑うと
「レティ。ゆっくり休んでね。」
と言って去ろうとするので思わずシオン様の服を掴んだ。
俯いて首を振り、泣いている私を見てシオン様は私を優しく抱き締めると
「大丈夫。何があっても守るよ。今日はおとなしく帰ろう?そこの侍女も護衛も困ってるよ。」と言い聞かせるように言うと、私の額に唇を落とす。
私が赤くなって固まってしまうと、今度こそ彼は背を向けて去っていった。
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