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1章
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今日は学園が休みなので街に買い物に来ている。目的はシオン様への誕生日プレゼントだ。
「あっシアお嬢様。あそこっスよ。」
「へー以外にこじんまりしたお店ね。」
「腕は確かっスよ。」
私がロイズに案内されてきたのは、王宮の騎士団御用達の魔道具の店だ。
シオン様へのプレゼントは、ライラと相談して迷った結果、魔法効果を付与した腕輪を贈ることにした。
この世界では、腕輪は肘と肩の真ん中辺りに服の上からつける。
手首では、戦いの最中魔力を付与した剣と触れる事があり、お互いの効果に悪影響を及ぼすからだ。
腕輪は黒を基調として紫の魔石をあしらって貰った。
私の色です。えへへ。
目的のモノを注文し、アクセサリーのお店や話題のスイーツ店を覗きながら街を散策していた。
アクセサリーの店でシルバーのリボンを眺める。欲しいなー、でも最近は教科書や制服の大量買いで無駄遣いしたし我慢しよう。
そう、いじめのために備えとして買った教科書と制服は無駄になった。
公園に続く道で見たことのあるピンクブロンドの髪を見つける。
マリアさんか確認しようとピンクブロンドの髪を目で追う。ふと、顔を上げた瞬間目が合う。
避けようと動いたときには遅くて、マリアさんはこっちに近づいてくる。
マリアさんに気づくとロイズが私を庇うように前に出る。
「お嬢様に何か用っスか?」
「あっ。すみません。私レティシア様にお話したいことがあって。出来れば二人きりで。」
ロイズは訝しげにマリアを見ると、私の方に伺うような視線を向ける。
「いいわ。ロイズの目の届く範囲で離れて話しましょう。」
三人で公園に移動すると、ロイズに声が聞こえない距離に離れた。
「あの、レティシア様って日本での記憶ありますか?」
急に親しみのある国の名前が出てきて驚いていると、
「その反応、同じ転生者ですね。良かったぁ。仲間がいて。」
パッと綻ぶように笑う。
流石ヒロイン。可愛い。
「レティシア様ってアルバート殿下推しじゃ無いんですよね。行動見てたら興味無さそうで。」
「そうね。今シオン殿下と親しくさせていただいているわ。」
「へー。悪役好きなんですね。」
「えっ。悪役?」
「知らないんですか?確か続編の悪役ですよ。私続編詳しく無いですが。」
「ここってやっぱりゲームの世界なの?」
「そうですよー。私、転生してから段々と記憶が薄れていくんですけど、ゲームの世界で間違い無いです。」
やっぱりマリアさんも記憶が薄れていってるんだ。
「シオン様が悪役って?」
慌てて聞いてみる。
「えっと。確か魔石の取引を利用して大陸の情勢を不安定にさせて魔石高騰を狙う、みたいな。で、ティネス王国もそれで他国に攻められそうになるのをヒロインが防ぐみたいな内容です。」
「シオン様殺されちゃうの?」
「続編なので覚えていないんですよー。でも確かむちゃくちゃ強いって設定です。」
「それよりも、私はアルバート殿下推しなんです。協力してください。お願いします。」
「何をすればいいの?」
「私をいじめてください!」
「それじゃあ私が悲惨なことになるんじゃないの?」
「あー。そっか。このゲームの悪役令嬢の末路は国外追放か修道院送りです。」
「どっちも嫌よ。だいたい、悪役令嬢はロザンナ様じゃないの?全部ロザンナ様の仕業よ。」
「えー。ロザンナ様でもちゃんと断罪イベント起こるかな?」
夢中で話していた私たちは、男たちの接近に気付かなかった。
「お嬢様!危ない‼」
ロイズの声に振り返ろうとすると、男たちに抱き抱えられた。男たちは凄いスピードで走り、路地に入ると、準備してあった魔方陣で転移する。
「っ!」
横を見るとマリアさんも同じように転移するところで周囲が淡く光っている。
「きゃー。」
ロイズが追いかけて来るが、あと少しのところで風景が掻き消えた。
「あっシアお嬢様。あそこっスよ。」
「へー以外にこじんまりしたお店ね。」
「腕は確かっスよ。」
私がロイズに案内されてきたのは、王宮の騎士団御用達の魔道具の店だ。
シオン様へのプレゼントは、ライラと相談して迷った結果、魔法効果を付与した腕輪を贈ることにした。
この世界では、腕輪は肘と肩の真ん中辺りに服の上からつける。
手首では、戦いの最中魔力を付与した剣と触れる事があり、お互いの効果に悪影響を及ぼすからだ。
腕輪は黒を基調として紫の魔石をあしらって貰った。
私の色です。えへへ。
目的のモノを注文し、アクセサリーのお店や話題のスイーツ店を覗きながら街を散策していた。
アクセサリーの店でシルバーのリボンを眺める。欲しいなー、でも最近は教科書や制服の大量買いで無駄遣いしたし我慢しよう。
そう、いじめのために備えとして買った教科書と制服は無駄になった。
公園に続く道で見たことのあるピンクブロンドの髪を見つける。
マリアさんか確認しようとピンクブロンドの髪を目で追う。ふと、顔を上げた瞬間目が合う。
避けようと動いたときには遅くて、マリアさんはこっちに近づいてくる。
マリアさんに気づくとロイズが私を庇うように前に出る。
「お嬢様に何か用っスか?」
「あっ。すみません。私レティシア様にお話したいことがあって。出来れば二人きりで。」
ロイズは訝しげにマリアを見ると、私の方に伺うような視線を向ける。
「いいわ。ロイズの目の届く範囲で離れて話しましょう。」
三人で公園に移動すると、ロイズに声が聞こえない距離に離れた。
「あの、レティシア様って日本での記憶ありますか?」
急に親しみのある国の名前が出てきて驚いていると、
「その反応、同じ転生者ですね。良かったぁ。仲間がいて。」
パッと綻ぶように笑う。
流石ヒロイン。可愛い。
「レティシア様ってアルバート殿下推しじゃ無いんですよね。行動見てたら興味無さそうで。」
「そうね。今シオン殿下と親しくさせていただいているわ。」
「へー。悪役好きなんですね。」
「えっ。悪役?」
「知らないんですか?確か続編の悪役ですよ。私続編詳しく無いですが。」
「ここってやっぱりゲームの世界なの?」
「そうですよー。私、転生してから段々と記憶が薄れていくんですけど、ゲームの世界で間違い無いです。」
やっぱりマリアさんも記憶が薄れていってるんだ。
「シオン様が悪役って?」
慌てて聞いてみる。
「えっと。確か魔石の取引を利用して大陸の情勢を不安定にさせて魔石高騰を狙う、みたいな。で、ティネス王国もそれで他国に攻められそうになるのをヒロインが防ぐみたいな内容です。」
「シオン様殺されちゃうの?」
「続編なので覚えていないんですよー。でも確かむちゃくちゃ強いって設定です。」
「それよりも、私はアルバート殿下推しなんです。協力してください。お願いします。」
「何をすればいいの?」
「私をいじめてください!」
「それじゃあ私が悲惨なことになるんじゃないの?」
「あー。そっか。このゲームの悪役令嬢の末路は国外追放か修道院送りです。」
「どっちも嫌よ。だいたい、悪役令嬢はロザンナ様じゃないの?全部ロザンナ様の仕業よ。」
「えー。ロザンナ様でもちゃんと断罪イベント起こるかな?」
夢中で話していた私たちは、男たちの接近に気付かなかった。
「お嬢様!危ない‼」
ロイズの声に振り返ろうとすると、男たちに抱き抱えられた。男たちは凄いスピードで走り、路地に入ると、準備してあった魔方陣で転移する。
「っ!」
横を見るとマリアさんも同じように転移するところで周囲が淡く光っている。
「きゃー。」
ロイズが追いかけて来るが、あと少しのところで風景が掻き消えた。
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