この国の王族に嫁ぐのは断固拒否します

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1章

☆5.

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シオン視点

僕の国では恋愛至上主義。
愛し合った夫婦の子どもは優秀になると信じられている。
我が父である現国王も、この学園で出会った男爵令嬢を見初めて連れ帰り、愛妾にしたのだ。
兄たちはその愛妾の子どもだ。リュート王国の王族は側室も愛妾も持たない事が多い。ただ、王妃を嫌がったためその立場におさまった。

当時はその恋物語が庶民の間で流行り舞台にもなったそうだ。

しかし、男爵令嬢には重荷だったのか王妃の役割を嫌がり愛妾いう立場で二人の男児をもうけたあと、王宮生活が窮屈だとリュート王国から離れた。
その後、父は侯爵令嬢である母を王妃として迎えた。その子どもが僕だ。
母は魔力が高く、魔力が高い両親から産まれた僕は、当然兄たちより魔力が高かった。
叔父や一部の貴族からは眼をかけられ、色々な事を教えてもらった。
僕を王太子に推そうという動きがあることも知っている。
無邪気で可愛い僕は僕の本質ではない。
野心がないと見えるよう自然と振る舞ってきた。
でも、僕の国は平和で後継者争いをすることが良いのか僕には分からない。
もし他国の侵略に脅かされている国なら、僕は王を目指しただろう。
だが実際は平和で、勉強熱心で良識的な長兄で国は安定して発展していけるだろう。

僕には目的がない。

この学園は大陸中の国の者が学びにくる。
教育内容の水準が高いことに加え他国から、王族となるものや高位貴族も多く在学しているため、将来のコネ作りに有用なのだ。学園で共に学ぶことで将来の自分の交渉相手となる人の人間性も知ることが出来る。

僕は国内で無垢な自分を演じるのにも疲れて、この学園に入ることを決めた。
兄たちは国内の貴族の動きが心配で、リュート王国内の学園で王国内貴族との繋がりを強化している。


そんな学園で知り合ったシアは視線や態度で真っ直ぐに僕に好意を伝えてくれる。
大切にしたい、そう思える相手に出会えた。



レティシア視点


「今日もお弁当作ってきましたの。」
「ありがとう。僕の国の料理は大分上手くなったね。」
「大好きな人に作るんですもの。気合いが入ります。」
「良い奥さんになりそうだね。」
ニコリとシオン様が笑う。笑うと目が無くなるところも大好き。
季節は秋になっていた。
私はシオン様と友達以上恋人未満っていう感じ。

どういう会話がきっかけか忘れてしまったけど、シオン様が時々見せる意地悪な笑顔に心を掴まれた。
ちょっと腹黒い感じの笑い方は、彼の弟のような印象を、一気に恋愛対象に押し上げた。

人目を憚らない私の行動で、私はアルバート殿下の婚約者とはならないだろうと周りから思われていた。


アルバート殿下とピンクちゃんことマリアさんは、順調に仲良くなっているようだ。

昨日、魔道具の制御が上手くいかず倒れそうになったマリアさんをアルバート殿下が支えているのを見かけた。その時、マリアさんがちゃっかり自分の胸をアルバート殿下の腕に押し付けていたのを目撃してしまった。
頑張れ。マリアさん。貴方ならあの閨の作法に耐えられる。


アルバート殿下の婚約者候補筆頭である私に向けられていた嫌がらせの標的はマリアさんに向いたようだ。
公爵令嬢である私にはコソコソした嫌がらせが多かったが、男爵令嬢であるマリアさんは何人かのご令嬢に囲まれている姿を見かける。
「マリアさんはもう少し身分というものを……」
「すみません。でもアルバート様が……」
「殿下を名前で敬称も付けずに呼ぶなんて……」
うっすら聞こえる会話。

私には関係ないので、特に助けることもしない。未来の王妃を目指すなら、降りかかる火の粉は自分で払って欲しい。

私とアルバート殿下の距離は順調に開いていった。月に一回、5人の婚約者候補を回るご機嫌伺いの訪問もここ2ヶ月は無くなった。

私は目下シオン様への猛アタックに余念がない。
リュート王国の料理を練習したいとの名目で、毎日シオン様へお弁当を作り、ランチを一緒にしている。


無邪気に見える微笑みと、腹黒そうな微笑みを
使い分ける彼は私の心の大部分を占める。

嫌われてはいないだろう。多分。
シオン殿下が好き。大好き。
私は出来る時に好意は全部伝えると決めている。
拒否されるまでは全力だ‼


私の前世の記憶は徐々に薄れ、今では家族の顔も思い出せない。この世界に私という存在が馴染んでいくようだった。




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