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メリッサ視点③
しおりを挟むセイディ様にレオ様を支えるなんて無理だと思う。
だって無理をさせ過ぎだもの。彼は執務と視察でスケジュールがびっしり。疲れをためやすい繊細な人なのに……、私だったら、あんな風にしない。
彼の身体を気遣って充分休ませてあげるわ。
だけど、当のレオ様は生き生きと見えて……。
もう私なんて必要無さそうで、心が締め付けられる。
「レオ様は最近私の前で辛いって言わないんですね」
「そう?……そうかもしれないね。僕はもう父親だし、いつまでも甘えてはいられないさ」
私から別れたいって言い出したら、レオ様は私を引き止めてまた大切にしてくれるようになるのかな……。
「ねぇ、レオ様、私たちもう別れましょう。こんな生活耐えられない。レオ様ってば、いつも家族のことばかりで、私の事なんて顧みてくれないんだもの」
別れ話をすれば慌ててくれるって思ってたのに……。返事は直ぐに返ってきた。
「……そうだな。……ごめん、メリッサ。今までありがとう」
彼の態度はあっさりしていて、ホッとしていることが態度で分かった。
何?本当に別れてもいいの?
レオ様は私から安らぎを得ていたんじゃないの?
私……本当にセイディ様にレオ様を取られたんだ。悔しい……。
セイディ様になんか、レオ様の事を理解出来るわけはないのに……。あんな完璧な人になんか、私たちの気持ち、分かるわけ……ない。
悔しさと怒りと悲しさで感情はぐちゃぐちゃ。
私はその勢いのまま王宮にある部屋を引き払い、実家へと戻った。
私だけが不幸で……こんなの不公平だって思う。
「どうして、私だけがこんなに不幸なの?後から来て、私たちを引き裂いて……セイディ様だけが幸せって、こんなの絶対間違ってる」
ベットに入ってわんわん泣いた。
このまま泣き寝入りするのは悔しい……。
☆
私は、噂好きで有名なカルディア侯爵夫人にこの仕打ちを全部暴露してやろうと、夜会に参加した。一矢報いなきゃ気が済まない。
「まあ、メリッサ様。社交の場へ出るのは久しぶりじゃありませんか?ようこそ」
「カルディア夫人、お招きありがとうございます。後で私、夫人に相談したいことがございますの」
「まあ、私に出来ることなら何でもいたしましてよ?」
カルディア侯爵夫人の目がキラリと光った。
私はカルディア夫人に、レオ様との関係を暴露した。
政略結婚が決まる前からお付き合いしていた事。セイディ様とレオ様が愛のない結婚をした後も私たちは秘密の愛を育んでいた事。ずっと私がレオ様を支えてきたのに、蔑ろにされ捨てられたことを話した。
「私、辛くて辛くて……。この身が引き裂かれそうです。夫人、話を聞いてくださってありがとうございます」
私は涙を拭うふりをして、チラリとカルディア夫人を見やった。恋人同士が国の事情のために引き離される悲恋話。
カルディア夫人なら私の境遇に同情してくれるはず。きっとこの噂は社交界で一気に広がるわ。
だけどーー
「メリッサ様、この話は誰にもしない方が良いと思いますよ。この話を聞いても、メリッサ様とレオポルド殿下の評判が落ちるだけです」
え?何を言ってるの?
私が被害者よ?
二人の間に割り込んだのはセイディ様。
恋愛小説でいうなら、私が悲劇のヒロインだわ。
「王宮仕官たちが何も見ていないとお思いですか?王宮仕官たちは妃殿下の頑張りを見ておりました。甘やかされていたレオポルド殿下が、少しずつ王太子としての自覚を持ち頑張る姿も。王宮仕官たちも国民もそして我が国の貴族も、今ではほとんどの者が妃殿下に好意的です。そのような暴露は身を滅ぼしますわ。自重くださいませね」
そんな……。
私より異国から来たセイディ様の味方だって言うの?
この国で産まれ育った私より?
私の目論見は外れた。
でも大丈夫。カルディア夫人が駄目なら、他の人に……。
私は他にも夜会に参加して、噂好きのご夫人方にレオ様の愛妾だったって事を話した。政略に翻弄され結婚出来なかった可哀想な私たちの話。なのに、その話を聞いた人の反応はどれもカルディア侯爵夫人と似たようなものだった。
誰も味方してくれないなんて思わなかった。だって私が先に恋人だったの。奪われたのは私よ?
そんな暴露をした私によい縁談がくる訳もなく……私は徐々に孤立していった。
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