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メリッサ視点②
しおりを挟むレオ様の結婚相手は、賢く聡明で綺麗な人。だけど、レオ様とは合わないと思う。白銀の髪のせいで冷たく見えるからかも。
レオ様は結婚した後も秘密の関係を続けるって約束してくれた。完璧過ぎる妃殿下のそばでは、きっとレオ様も安らげない。
これからますます重圧に悩まされるであろうレオ様を支えることが出来るのは私だけ……。だから秘密の関係でも構わない。
「ずっとメリッサだけを愛しているよ」
「ええ、レオ様。私は日陰の身でも構いません」
彼の心は私のもの。
なのに、妃殿下と結婚してから、レオ様は少しずつ変わっていった。
弱音を吐いたり愚痴を言うことが無くなった。
真面目な人柄の妃殿下に影響されて、王太子らしくしようと無理しているように見えた。
繊細な人なのに……。
妃殿下はレオ様のこと全然分かってない。
このままじゃレオ様が壊れちゃう。
やっぱりレオ様を理解出来るのは私だけ。レオ様にももっと私の存在が必要だって実感して欲しい。私から離れるなんて絶対に駄目。
「今日は私の誕生日よ?一緒に過ごしてくれるって言ったじゃないっ。執務なんて誰かに任せれば?だってレオ様は王太子でしょ?」
「駄目だよ。僕の仕事だ。子供たちの親としてしっかりしていたいんだ」
「無理しないでね」
「ああ、大丈夫」
「最近私と一緒に過ごす時間が減っているでしょ?代わりにプレゼントを頂戴。サファイアの指輪がいいわ。レオといつも一緒に居るって実感が欲しいの!」
我儘を言う。
レオ様は慰めるように背中を撫でた。私に気付かれないよう小さくため息を吐く。
別れるなんて許さない。
貴方は私が居ないとだめなの。早く気づいて……。
☆
「レオポルド殿下とセイディ様はいつ見てもお似合いで素敵。フィオレンティナ様とルーファス様も可愛いし、国中の人気者ね。国王陛下よりも人気が高いそうよ」
王宮内でのそんな噂話が耳に入るたび、悔しくて……。本当なら……政略なんてなければ……彼の隣に立っていたのは私。
それでもレオ様との逢瀬は途切れること無く続いていた。
彼は三日に一回は必ず私を私室に招いて一緒にお茶を飲んでくれる。
「このお茶不味いわ」
高価なカップに入ったお茶は、薬草のような独特の匂いがした。
「王族に伝わる秘伝の茶葉だよ。健康に良いんだ」
不味いお茶を一緒に飲んで、それだけで終わる日もある。最近はお願いしなきゃ、抱いてくれない。
「えっ?明日は一緒に過ごせないの?」
「ああ、すまない。その日はフィオレンティナが星祭りをみたいと言っているんだ」
「……また子供……」
「埋め合わせは必ずするよ」
レオ様は誤魔化すようにキスすると、そそくさと立ち去ってしまった。
私だって子供が欲しい。正式に認められたレオ様の子供が。
側室にして欲しいってお願いしたけど、国王陛下に認めてもらえなかった。子供をたてにレオ様を独占しようとする妃殿下が憎い。
☆
王宮舞踏会の日は最悪だった。
レオ様は妃殿下と仲睦まじげにダンスを踊る。私も伯爵家の令嬢として参加したけれど、幸せそうな妃殿下の笑顔を見るのも辛い。
「つまんないわ。来なければ良かった」
ふと、レオ様の方を見るとーー
彼は妃殿下と楽しそうに話をしていて……。その二人の姿は全然冷めた夫婦には見えなかった。
まるで妃殿下を独占するようにベタベタと彼女の周りに張り付いているレオ様を見ると気分が悪い。
「何よ、セイディとは政略結婚だから愛なんて無いって言ってたのに……」
うそつき……。
まるでレオ様のほうがべた褒れみたいで、見てられない。
その日は直ぐに帰った。
☆
「レオ様は私の事好きよね?」
「ああ」
表面的には笑顔だけど、彼の心は私には無い気がする……。
不安で、不安で……会うたびに私を抱いてってお願いした。肌の触れ合いは温かくって、彼の大きな胸の中にいると少し安心する。
「もう、戻るの?」
「ああ、ルーファスと出掛ける約束があるからな。朝が早いんだ」
妃殿下は幸せそう。そしてレオ様も。
私とは真逆。
誰にも内緒の関係で、私はずっとこのまま……?
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