無表情王妃を溺愛したい~愚王に転生した俺~

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14.エヴェリーナ視点②

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「アリー、陛下から後宮を出て陛下の隣室へ移動するように言われたの。」

「漸くですか。」

「え?ええ。アリーは知っていたの?」

「いえ、後宮の解体が済んだのでしょう?」

陛下と私を狙った刺客は愛妾のフィーネ様が雇った男たちだと判明して、フィーネ様は地下牢へと収監された。
一番最後に後宮へ上げられたフィーネ様は、王家が用意した嫁ぎ先を全て断り、長く後宮へと留まっていたけど、もう居ないから後宮は閉めるんだって陛下が仰っていた。

「もう側室も愛妾も娶らないから、陛下の隣室に移動するようにって……。妃はわたくしだけだって仰ってくださったの。それに、陛下の隣室の方が警備しやすいそうよ。」 

フィーネ様はどうしても陛下の寵愛を受けて、お世継ぎを産みたかったんだって。
本当の狙いは私だったのだと、後から知らされた。
突然陛下が観劇に同行したせいで、計画に狂いが生じたらしい。
陛下が居なかったら、もし私にナイフが刺さっていたら、そう思うとゾッとする。

「良かったですね、エヴェリーナ様。さあ、支度しましょう。」

アリーはそう言ってくれたけど、あんまり嬉しく無さそう。

「そ、それでね、……こ、今夜、部屋に行ってもいいかな?って聞かれたの。」

「それで?」

「こ、困りますって……言ったわ。で、でも嫌がることや怖いことはしないからって……。最近の陛下は、とってもわたくしを甘やかすから恥ずかしいのだけど……。」

陛下は少し前から強引になってしまって困ってしまうの。
今までは断ったら直ぐに止めてくれたのに……。

「分かりました。今夜ですね。じゃあ部屋の移動が終わったら準備しましょう。初めてですから、入念に準備しないと……。」

「ええ、お願い。そ、それでね、アリーに相談があるの。」

「はい。何でしょうか?」

「あのね、陛下の部屋に行くといつも膝に座らされてしまうのだけど、膝の上でお喋りなんて失礼じゃないかしら?」

「陛下がそうしたいんじゃないですか?」

アリーったら、私がこんなにも恥ずかしくて困っているのに他人事みたいだわ。
でも、確かにアリーの言うとおりなのかも……。

「そ、そうなのかしら?……あとね、陛下がわたくしの事を『可愛い』って言いながら、顔中にキスしてくるの。わたくし、恥ずかしくって……。どうやって断ったらいいのかしら?」

アリーはわたくしの話を聞いて少し機嫌が良くなったみたい。
なんだか、嬉しそう。
どうしたのかしら?

「エヴェリーナ様、それは王妃としての努めです。耐えてくださいませ。」

「そ、そうなの?わたくし、不機嫌な顔になってしまうのだけど。」

「それでも、陛下は可愛いと仰るのでしょう?いいんですよ。そのままで。」

「そうなの……?恥ずかしくて困ってしまうわ。時々、お腹に突きを入れて逃げようとするのだけど、最近はお腹の筋肉がついて腕の力が緩まなくて……。困ったわ。逃げられないの……。」

今までは思いっきりお腹を叩いたら、逃げられたのに、最近では陛下の身体はすっかり逞しくなってしまったの。

「毎日熱心に鍛錬されていて、今はもう陛下の悲鳴は聞こえないそうですよ。」

「まあ!きっと陛下は努力なさって、騎士様に実力が追い付いたのね。素晴らしいわ。」

「はいはい。エヴェリーナ様、お部屋を移動する準備をしますよ。」

「え?」

「エヴェリーナ様、陛下に任せておけば大丈夫ですよ。最近の陛下は変わりましたし、きっと幸せにしてくれます。」

「そうかしら?ええ、最近では陛下の愛情をとても感じるの。大切にしてくださってると思うわ。」

「そうでしょう?なら、大丈夫です。」

アリーが太鼓判を押してくれると何故だか安心するわ。



そしてその夜ーーーー



私は一晩中陛下に愛された。

陛下の熱も、吐息も、掠れた声も。
全てが私を求めているのが伝わる……。
閨事なんてもっと義務的だと思ってたのに情熱的で、身体が熱に浮かされたように気持ち良くって何も考えられない……。

だから、思わず
『気持ちいいです。』
って言ったら、陛下は「ふっ」って少し笑ったの。

優しく触られて、お互いの体温も匂いも、全てを愛おしく感じたわ。

初めて、心から愛され、求められる喜びを私に教えてくれた。

その夜から、陛下は毎晩私の元へ訪れるようになったの。



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