無表情王妃を溺愛したい~愚王に転生した俺~

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10.暗殺者

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今日はエヴェリーナとデートの日!
勝手についていくだけだけど……。
でも、同じ劇を見て、二人で感想を言い合って盛り上がれば少し仲良くなれるかもしれない。
俺は前日から猛勉強!
その舞台のあらすじを読んで舞台俳優の事も調べた。
劇場の近くのカフェも調べた。
若い女性に人気のスイーツもあるみたい。
一緒に美味しい物を食べて……エヴェリーナが笑ってくれるといいな!

どうやってカフェに誘うかも考えた。
然り気無い感じで
「側近や侍女への土産を買わないか?」
って誘ったら嫌がらないと思うんだ!

実は隣の席が予約してある。
あんなに俺の事を嫌いなエヴェリーナが嫌そうな顔をして俺にチケットをくれたんだ。
テーブルにバンッて叩き付けられた時は、びっくりして涙目になっちゃったけど……。
渡された物がチケットだって分かって喜んで彼女を見上げたら、唇をへの字に曲げていた。
心底渡したくない……そんな顔。

きっと、名目上俺たちは夫婦だから気を遣って仕方なく用意してくれたんだと思う。

それでも、彼女と観劇できるのは嬉しい。
本当は観劇の間、怖がる彼女の手を握るっていうのも憧れるけど、嫌われたら大変!

我慢、我慢。

でも……少し怖いシーンでエヴェリーナが俺に抱きついてくれないかな?
なんて………。

でもそんな下心はあっさりと破れ去った。


~~~~~



観劇の日、ドキドキしてエヴェリーナと隣同士の席に座っていたら、何者かの視線を感じた。
俺は、護衛に合図を送り、劇の途中でエヴェリーナと共に席を立った。

観客たちが騒いで出口が混むと、逃げ道を失う恐れがあるからだ。
緊張が走る。
折角のエヴェリーナとのデートで暗殺者に狙われるなんて!

劇場の裏口から外へ出ると、刺客と思われる男五人に囲まれた。
黒装束に身を包み、訓練された身のこなし。

「陛下、逃げてください。」
「ああ、気を付けろよ!」

護衛三人が前に出てその隙に別の護衛と路地裏へと逃げる。
今日は突然のスケジュール変更。
いつもよりも護衛の数が少ない。

敵は護衛が少ない日を選んだのかな?

護衛たちが次々襲ってくる刺客を相手に足止めしてくれる。
その間に、俺はエヴェリーナと二人で逃げている状況へと追い込まれた。

彼女はスカートが足に縺れて速くは走れない。
俺はエヴェリーナの手を引いてなるべく狭い道を探した。

「陛下!!」
「エヴェリーナ、下がってて!」

とうとう二人の男に追い付かれた。

エヴェリーナを背に隠すようにして、剣を構え、黒装束の男と対峙する。
隙が無い。
恐らく敵わないだろう。
とはいえ、エヴェリーナを危険に晒す訳にはいかない。
俺は剣を構えながらつかの部分の細工を押した。
玩具みたいな仕掛けでも、敵の隙を作るには充分!
飛び出した針を避けようと男の体勢が崩れた。

今だ!
一瞬の隙を逃さないよう間合いを詰める。そして間髪入れずに刀身を一気に振り下ろした。

ズザッッーーーー

手応えを感じる。
やった!
その瞬間ーー

後ろにいた男が懐に手を入れるのが見えた。

「エヴェリーナっ!危ないーーっ!!」

全てがスローモーションのようだった。

男はニヤリと笑うと、躊躇無くエヴェリーナを狙ってナイフを投げる。その放物線が俺の目にはハッキリと見えた。

「う゛っっ!!」

エヴェリーナを庇うように飛び出した俺の肩にナイフが突き刺さる。

「陛下っ!!」

っ!!!

「きゃあーーーーーー!!」  

痛いっ!!熱いっ!!
ドクドクと血が流れる。
肩を押さえた手に温かくぬるぬるした感触を感じる。
追い付いた護衛が、刺客を切り捨てるのが見えた。

泣きながら駆け寄ったエヴェリーナが崩れ落ちる俺を抱き止めてくれる。
美しいその顔は、俺を心配してぐしゃぐしゃになっていた。

「良かった……。エヴェリーナ、怪我は……無い……?」

「わたくしよりも……陛下が……陛下が……。」

「良かった……エヴェリーナが無事で……。」

俺、きっと死んじゃう。

「へ、陛下……。」

エヴェリーナは俺の手を握ってくれた。
その瞳は俺を心配して涙で濡れている。

「お、俺を心配してくれる……の……。」

「も、もちろんですっ!!陛下とのお出掛けを楽しみにしてましたのに……。こんな……こんな……。」

「俺も……楽しみに………。嬉しい……な。」

「陛下、陛下っ!!」

俺はそのまま意識を失った。






    
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