無表情王妃を溺愛したい~愚王に転生した俺~

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8.お茶をしよう!

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今日は結婚してエヴェリーナとお茶を飲んでいる。

これから俺はエヴェリーナと交流を深めて、出来れば俺のことを好きになって欲しい。
欲張りかな?
エヴェリーナをお茶に誘ってOKの返事を貰えた日はウキウキして、ジュールに呆れられたけど……。いざこうして美しい彼女を目の前にお茶を飲んでいると緊張する。

「一緒にお茶をするのは、はじめてだな。」

「ええ。そうですわね。」

無表情で話すエヴェリーナは、俺に興味なんて無さそう。

「君が厨房で菓子作りの練習をしていると聞いたんだ。」
「え?」
「俺……エヴェリーナの手作りのお菓子、食べてみたいんだけど……駄目かな?」

エヴェリーナは目を吊り上げて俺を睨み付ける。
まるで怒っているみたいに……。

「…………。」

腹を立てているのかな?
瞬きもせずに俺を凝視する。
うん。
怒っているんだね?
(※違います。何を作ろうか迷ってます。)

「ご、ごめん。」

思わず謝った。
すると、小さな声でエヴェリーナが「はい。味に自信はありませんが何がお好きですか?……。」と、頷いてくれた。

え?
いいの?
やった!
今が仲良くなるチャンスかも。

「ありがとう。焼菓子ならなんでも。早朝鍛錬に参加するようになってからお腹が空くんだ!楽しみしてるよ。」

エヴェリーナはさして興味が無さそうに溜め息を吐いた。
俺と話をするのは退屈なのかな?
(※違います。地獄の猛特訓を心配してます。)

「早朝鍛錬は厳しいのですか?」

「ああ、ゼロスにしごかれている。俺は剣の才能は無いようだ。父上は才能があったのにな。俺は母上のお腹の中に剣の才を忘れたのかもしれんな。俺の太刀筋は曲芸師のようだとゼロスに笑われたよ、ははは。」

「…………。」

自虐的に笑ってエヴェリーナの方を見ると、彼女は目を充血させて見開いていた。

え?なに?
激怒してる!!
(※違います。笑うと不敬だと思って笑うのをこらえてます。)

弱い男なんか、嫌いなのかな……。
あっ涙が滲んじゃう。


その時

「オースティンさまぁ~~!!」

フィーネが庭園へと勝手に入ってきた。
そして

勝手に俺の隣の席へと座った。
何?
この子!
図々しいよね!!
腹立だしさに俺の涙は一瞬にして引っ込んだ。

「今、俺はエヴェリーナとお茶を楽しんでいるんだ。遠慮してくれ。」

「王妃様っていつもこんなにつまらなそうに陛下と過ごしているんですか?」

「っ??」

俺の傷を抉らないでっ!!
俺だってエヴェリーナを楽しませることが出来ないことを気にしてるんだからっ!!

「フィーネ、今直ぐにここから立ち去れ!」

「えっ、私が?王妃様じゃなくて?」

「邪魔をしているのはお主だ!出ていけ!」

俺は国王らしく毅然とした低い声でフィーネに庭園を出ていくよう命じた。

「……………はい。」

彼女は不満げな表情を露にして、エヴェリーナを横目で睨みながら庭園を出ていった。

小説の中で、国王である俺にエヴェリーナ暗殺を唆すのはフィーネだ。
彼女には見張りを付けた方が良いだろう。
俺が目で合図を送ると直ぐにジュールが反応して護衛に何かを囁いている。

エヴェリーナをちゃんと守ろう。
俺の側に安心していられるように。
そのためにも俺は変わるんだ!!

フィーネが庭園を出ていったのを確認して、俺は話題を変えた。

「エヴェリーナが僕の好きなアスセナを沢山取り寄せて植えるように指示してくれたんだろ?ありがとう。今まで気付かなくてごめん。」

「い、いえ。王妃として当然のことです。」

ツンと済まし顔で話すけど、よくみるとエヴェリーナの耳は真っ赤だ。

「エヴェリーナ、君の好きな花を教えて。今度は俺が君に花を贈りたいんだ。」

「っっ!」

無言の時間が流れる……。

俺には教えてくれないのか……。
花を贈られるのも嫌ってこと?
分かっていてもシュンとしてしまう。

「ど、ど、ど、どうでもいいですわっ!!」

(※訳ーー花を贈ってくださるならどんな花も嬉しいです。)

エヴェリーナは顔を背けたまま真っ赤になりながらも早口でまくし立てると席を立った。

「き、気分が優れませんの。こ、これで。」

そそくさと足早に立ち去る彼女の姿を見送る。
いつもの優雅な足取りとは違って忙しなく逃げるような歩き方が彼女の動揺を表している。
お茶を一緒に飲むのも苦痛だったみたい。
俺、相当嫌われてるなーー。

部屋に戻ってちょっと泣いた。


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