戦略的過保護のち溺愛

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お母さんは心配です

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「母さん、荷物を持って庭を歩いちゃ駄目って行ったよね?」
私は今、9歳の次男に叱られている。
この次男、お父さんを含めた我が家で一番のしっかり者だ。
私は現在妊娠6ヶ月。次男アイルの出産が思いの外大変で、次男出産以降は避妊薬を飲んできた。 
しかーし、あの赤ちゃんのスベスベプリプリふにゃふにゃが忘れられず、もう一度出産したいとユーリーに懇願すること数年、現在の妊娠にたどり着いた。
「アイル、荷物って言っても小さなバスケット一つよ。」
「駄目だよ。転んだときに咄嗟に手を付いて身体を庇えないのが問題なんだ。」
「アイル、お母さんそんなに転ばないよ?」
「母さんは危なっかしいんだよ。」
私からバスケットを奪うともう片方の手で彼なりのエスコートをしてくれる。
「僕のリズがいるんだ。気を付けてね。」
この次男はもう既にお腹の子の愛称を決めてしまった。女の子と確信しているらしい。

庭でサンドイッチを食べてお茶を飲んでゆっくり過ごそうと思っていたのに、
「お腹が冷えないうちに家に戻ろう。」
口煩い次男はさっさと片付けてしまった。
14歳になるレックは騎士団の練習場で稽古をしてもらうと出掛けている。レックはお父さんが大好きだ。
私が心配だとここに残っている次男の過保護は、ユーリーやレックを凌ぐレベルだ。
私が妊娠を告げた翌日には侍医を講師として、妊婦生活の心得を聞いてきた。
ふと心配になり次男に釘を刺す。
「お腹の子が女の子でもアイルはお兄ちゃんだから結婚出来ないよ。」
「母さん、そんな事分かってるよ。」
「妹の結婚の邪魔しちゃ駄目よ。」
「分かってるって。僕も好きな人がいるからね。」
「えっ?好きな人いるの?」
「当然だよ。今度紹介できるかなぁ?待っててね。今囲い込みを図ってるんだっ!」
そんな明るく言われても。今囲い込みって言葉使ったわよね?
「囲い込み?」
「うん?周りの人に協力してもらおうと思って。大事だよね?外堀を埋めるの。僕その子が居ないとどうにかなっちゃいそうで。」
うちの子ヤンデレ?ヤンデレなの?
でもまだ9歳だし、友人の協力とか可愛い意味かしら?
「逃げ道を塞いでおいた方が安心でしょ?」
ユーリー、帰って来てお願い。うちの子怖い。

★☆★

夜ユーリーに昼間のアイルとの会話を相談した。
「大丈夫だよ。年頃の男の子には良くあることさ。私の所にはレックが相談に来たこともあるよ。」
えー我が家でヤンデレって標準装備なの?
「その子が居ないとどうにかなっちゃいそうって大丈夫かな?」
「ははは、サラは心配性だなぁ。」
ユーリーは私の肩に顔を埋めると短く溜め息を吐く。
「私もサラが居ないと狂ってしまいそうだ。」
「そうなの?」
「そうだよ。だからね、アイルには私から話を聞いておくよ。逃げられ無いようにした方が安心だからね。」
私の心配はユーリーには伝わらなかったらしい。
「アイルは賢い子だから、大丈夫だよ。」
だから、その賢さも心配なんですって!あんまり話が通じないので話題を変える。
「私、アイルに軽い運動するよう言われたの。」
「へぇ?危なく無いかい?」
「アイルが付き添ってくれる時間帯に庭で歩く計画らしいの。アイルの出産の時に難産だったのは私の運動不足が原因で体力が無かったんですって。」
「凄いね。そんな事も勉強したんだ。でもアイルの付き添いだけじゃ、転んだときに支えきれないな。」
いえ、転ばないですから。
「走ると転ぶからね。走っちゃ駄目だよ。そういえば、思い出した。浴室って滑るから心配だったんだ。今日から毎日一緒にお風呂に入るよ。」
えっ?恥ずかしいんですけど。
「恥ずかしいし、嫌よ。」
「駄目だよ。サラとリズの安全の為にも、ねっ。」
私はこうして毎日一緒にお風呂に入ることに同意させられた。

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