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お茶会での流行
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レックが生まれる前のお話です。
今日は王妃様からピオニー会のお茶会に呼ばれている。
ピオニー会のお茶会では、途中で陛下がユーリーを引き連れて顔を出すことが多い。
ガーデンテーブルは大きな物に変更され、陛下やユーリーが座れるようにご婦人方の座る間隔も広く取られるようになった。
そしてアリセント陛下とユーリーがあまりにもお茶会に顔を出すものだから、他のメンバーの夫達も顔を出すようになった。皆王宮に出仕しているから出来るのだけれど……。
「サラ、この間出したドライフルーツのトルタとミラサが王都で大人気らしいわ。流石に先見の明があるのね。」
リリィは弾けるような満面の笑顔を浮かべて此方を見ている。
全くこの兄弟は眩しすぎるわ、と心の中で思う。
「陛下も気に入ってらっしゃったかと。」
「このナッツ美味しいわ。どなたがお持ちになったの?」
「今日は私の主人の好みを考えてナッツを持って来ましたの。ベンゲル地方で採れるようで、王都ではあまり見かけませんけど。」
フリンジ侯爵婦人が笑顔を見せる。いつもクールなこのご婦人は笑顔も控えめだ。
夫達の参戦により、お茶会ではスイーツだけでなく、男性にも食べやすい甘さ控えめの菓子が並ぶようになった。
ピオニー会はいつしか仲良し夫婦の集まるお茶会へと変貌を遂げ、お茶会が女の戦場だったことは今は昔といったところだ。
ピオニー会で流行したものは、奥様方を通じて王都全体の流行となる。
ガヤガヤ声がするので声の方を振り向くとアリセント陛下をはじめユーリーやフリンジ侯爵、ケップラー伯爵などが揃ってやって来た。皆様、自分の妻の額にキスを落とすと当然のように隣に座る。
「やあ。今日もお邪魔するよ。早くリリィの顔が見たくてね。」
「今朝も見たでは有りませんか?」
「人生は短いんだ。なるべく長くリリィを見ていたいよ。」
「仕事も頑張ってくださいませ。」
「リリィというご褒美があるから辛い仕事も頑張れるのさ。」
相変わらず陛下は呼吸をするように甘い言葉を吐く。
一方ユーリーはそんな訳にはいかない。
「サラはお茶会を楽しんでいたかい?」
「はい。心配してくれてありがとう。」
「いや、心配というか……。」
「ユーリーは奥方に会いに行く為に凄いスピードで書類を仕上げていたよ。」
私たちの会話に陛下が口を挟んできた。
「ユーリー大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫。私たちは学生時代に速読の練習をしてたんだ。動体視力を鍛えるとか言って、二人でよく競争したんだよ。お陰で今の仕事に役にたってるよ。」
「動体視力ですか?」
「そう、授業中にね。眼球を動かすのが速くなると、敵の動きが見えるようになるんだ。あの訓練は一石二鳥だったなー。」
「ワルクーレ婦人、陛下とユーリーの書類仕事の早さは有名でご心配には及びませんよ。」
夫が同僚に誉められていると嬉しい。笑顔でユーリーを見上げると、ユーリーは照れて目を合わさないようにしている。
ユーリーのこういうところは本当に好ましく思う。決して奢ることなく、今でも鍛練を欠かさない姿は多くの騎士の崇敬を集める。
他のご婦人方も夫達の会話の中で、仕事中の自分の夫の様子が垣間見えたり、学生時代の逸話を聞くのを楽しんでいる。
★☆★
その夜、二人でサロンで食後のコーヒーを飲みながら昼間のお茶会の話をしていた。
「私はユーリーの事を聞けて楽しいわ。」
「そうか…私はアリセントみたいにはサラに愛を伝えられないが…大丈夫だろうか?」
「ええ。ユーリーが陛下みたいになったら困っちゃうわ。そのままでいてね。」
「そうか…。そうだな。私もサラにはそのままでいて欲しい。」
「はい。」
「そろそろ寝るか。サラ……いいだろうか?」
「はい。」
未だに夜のお誘いには照れてしまう。
手っ取り早くて照れずに済む合図は無いのだろうか?
私たちは寝室に移動し、今日も甘い夜を過ごした。
今日は王妃様からピオニー会のお茶会に呼ばれている。
ピオニー会のお茶会では、途中で陛下がユーリーを引き連れて顔を出すことが多い。
ガーデンテーブルは大きな物に変更され、陛下やユーリーが座れるようにご婦人方の座る間隔も広く取られるようになった。
そしてアリセント陛下とユーリーがあまりにもお茶会に顔を出すものだから、他のメンバーの夫達も顔を出すようになった。皆王宮に出仕しているから出来るのだけれど……。
「サラ、この間出したドライフルーツのトルタとミラサが王都で大人気らしいわ。流石に先見の明があるのね。」
リリィは弾けるような満面の笑顔を浮かべて此方を見ている。
全くこの兄弟は眩しすぎるわ、と心の中で思う。
「陛下も気に入ってらっしゃったかと。」
「このナッツ美味しいわ。どなたがお持ちになったの?」
「今日は私の主人の好みを考えてナッツを持って来ましたの。ベンゲル地方で採れるようで、王都ではあまり見かけませんけど。」
フリンジ侯爵婦人が笑顔を見せる。いつもクールなこのご婦人は笑顔も控えめだ。
夫達の参戦により、お茶会ではスイーツだけでなく、男性にも食べやすい甘さ控えめの菓子が並ぶようになった。
ピオニー会はいつしか仲良し夫婦の集まるお茶会へと変貌を遂げ、お茶会が女の戦場だったことは今は昔といったところだ。
ピオニー会で流行したものは、奥様方を通じて王都全体の流行となる。
ガヤガヤ声がするので声の方を振り向くとアリセント陛下をはじめユーリーやフリンジ侯爵、ケップラー伯爵などが揃ってやって来た。皆様、自分の妻の額にキスを落とすと当然のように隣に座る。
「やあ。今日もお邪魔するよ。早くリリィの顔が見たくてね。」
「今朝も見たでは有りませんか?」
「人生は短いんだ。なるべく長くリリィを見ていたいよ。」
「仕事も頑張ってくださいませ。」
「リリィというご褒美があるから辛い仕事も頑張れるのさ。」
相変わらず陛下は呼吸をするように甘い言葉を吐く。
一方ユーリーはそんな訳にはいかない。
「サラはお茶会を楽しんでいたかい?」
「はい。心配してくれてありがとう。」
「いや、心配というか……。」
「ユーリーは奥方に会いに行く為に凄いスピードで書類を仕上げていたよ。」
私たちの会話に陛下が口を挟んできた。
「ユーリー大丈夫?疲れてない?」
「大丈夫。私たちは学生時代に速読の練習をしてたんだ。動体視力を鍛えるとか言って、二人でよく競争したんだよ。お陰で今の仕事に役にたってるよ。」
「動体視力ですか?」
「そう、授業中にね。眼球を動かすのが速くなると、敵の動きが見えるようになるんだ。あの訓練は一石二鳥だったなー。」
「ワルクーレ婦人、陛下とユーリーの書類仕事の早さは有名でご心配には及びませんよ。」
夫が同僚に誉められていると嬉しい。笑顔でユーリーを見上げると、ユーリーは照れて目を合わさないようにしている。
ユーリーのこういうところは本当に好ましく思う。決して奢ることなく、今でも鍛練を欠かさない姿は多くの騎士の崇敬を集める。
他のご婦人方も夫達の会話の中で、仕事中の自分の夫の様子が垣間見えたり、学生時代の逸話を聞くのを楽しんでいる。
★☆★
その夜、二人でサロンで食後のコーヒーを飲みながら昼間のお茶会の話をしていた。
「私はユーリーの事を聞けて楽しいわ。」
「そうか…私はアリセントみたいにはサラに愛を伝えられないが…大丈夫だろうか?」
「ええ。ユーリーが陛下みたいになったら困っちゃうわ。そのままでいてね。」
「そうか…。そうだな。私もサラにはそのままでいて欲しい。」
「はい。」
「そろそろ寝るか。サラ……いいだろうか?」
「はい。」
未だに夜のお誘いには照れてしまう。
手っ取り早くて照れずに済む合図は無いのだろうか?
私たちは寝室に移動し、今日も甘い夜を過ごした。
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