戦略的過保護のち溺愛

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☆★☆ユーリード視点☆★☆

騎士団の訓練場で鍛練していると見たことの無い団員が話し掛けてきた。
「団長、僕に稽古つけてください。」
「おお、お前怖いもの知らずだなー。団長は容赦ないぞー。」
「若いって無鉄砲でいいな、いいぞー。」
「団長、相手をしてみては?」
副団長であるコルトに言われ、模造刀で試合形式の訓練を行う。
初めて見るチャモロと言う団員はなかなかに筋が良く、私も試合を楽しめた。
「団長、ありがとうございました。これどうぞ。」
上機嫌で汗を拭いていると、チャモロが稽古をつけてくれた礼だと果実水を持ってきてくれた。
「悪いな。いただくよ。」
一気に飲み干し、訓練場を後にした。
鍛練の後執務室に戻り書類を片付けていると妙に眠気がする。
「あー眠い。一旦休むか。」
書類仕事は間違えると余計にややこしくなる。一旦休憩することにして、ソファーに横になる。
ガチャ、誰かが部屋に入ってきた。ドアの方に目を向けると、そこには愛しいサラがいた。
「サラ?」
「ユーリー様。」
サラはこっちに向かって歩いてくる。 すると、強烈な臭気が…
「サラ?」
「ええ。サラですわ。」
やっぱり臭い。サラはこんな匂いはしない。サラはもっと自然で甘くて軟らかくて……絶対違うと確信する。
こんな動物のフェロモンみたいな臭いは……

幻術の類いか。机にあったペンを腕に刺す。痛みで幻術が解ける。
ベネディ侯爵令嬢だ。
「私に何をした?」
ベネディ侯爵令嬢は怒りで顔を真っ赤にすると
「なによ!全然効果無いじゃない!」と大声をあげた。
この部屋の異変に気付いた騎士が駆け付けてくれてベネディ侯爵令嬢を拘束する。
「幻術を掛けられた。後で取り調べをする。」
「はっ。」
「なによー、離しなさいよー。」
大声で喚きながら、騎士達に連行されていった。
ジルクローが部屋に駆け込んでくる。「サラルーリー嬢が王宮に呼び出された。バラゴのアトリエだ。お前への連絡が妨害されていた。急げ、時間が経っているぞ。」

☆★☆

バラゴのアトリエは鍵が閉まっている。体当たりしてドアを破壊して部屋に入ると、

そこには

裸のバラゴの死体が転がっていた。

サラは服を着たまま縛られてソファーに横たえられていた。レイルは部屋の隅に目隠しをして縛られている。

急いでサラに駆け寄り怪我が無いか確認する。
サラは特に何もされた形跡は無かったが、念のため宮廷医の診察を受けさせた。

残ったバラゴの死体を見下ろす。特に外傷はないが・・・
「守りの指輪の効果か?」
ジルクローが尋ねてきた。
「その可能性は高いな。レイルも攻撃出来る状況には無かった。」
「アリセントに連絡して内密に処理させよう。」
「分かった。」

☆★☆

調査の結果バラゴには死亡に繋がるような怪我も魔術の跡も無かったとの事だった。

サラは強い催眠効果のある香で眠らされており、絵の具の匂いで気付くのが遅れたとレイルが証言した。犯行に関わった者達は拘束している。

私の飲んだ果実水には、気付かれないように薄めた睡眠薬が入っていて幻術に掛かりやすくなっていたそうだ。
ベネディ侯爵令嬢とバラゴが協力していた証拠も掴んだ。


アリセントに調査の結果を報告する。アリセントは何か気になることがあるらしく、心配そうな顔で報告を聞いていた。
「ユーリー、君はサラルーリー嬢と本当の夫婦になるつもりなんだろ?」
「そうだが。」
「破瓜は大丈夫なのか?」
「は?」
「あれも身体を傷付ける行為だろう?」
「……。」
「現にサラルーリー嬢の強姦を企んでバラゴは死んだ。命を奪うつもりも無かったのに。」
「……。」
「もっと先の事で言えば出産も。」
「……。」
「守りの指輪がどういった条件で発動するのか調べられないかな?」
「サラに相談してみる。」
突然の難問に頭を抱えたくなる。
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