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☆★☆ユーリード視点☆★☆
騎士の訓練施設で他の騎士と談笑しながら休憩を取っているとど派手なきんきら眩しい一団がこちらに近づいてくる。
「ユーリード様、この度は亡国の姫君を保護したと噂を聴きましたわ。」
よく見ると、派手な集団はベネディ侯爵令嬢を先頭とした令嬢の集団であった。目の前まで近づいてくるので、強い香水の匂いに顔を顰める。
「聞けばキメ王国でも社交界デビューもしなかった変わり者の姫君だそうで。陛下の御命令でしょう?ユーリード様も大変ですわね?」
何も知らない癖に、サラを貶める言葉を聞いて気分が悪くなり眉間に皺が寄る。
「分かりますわ。臣下たるもの陛下の命令は絶対ですもの。私も協力いたしますのでお声を掛けてくださいませ。」
言うだけ言って取り巻きのご令嬢を引き連れて去っていった。
☆★☆
アリセントに呼び出された。
「ユーリー、君のせいで貴族令嬢の間での噂が酷くなっているよ。」
「どういうことだ?」
「先日の、君とベネディ侯爵令嬢とのやり取りさ。対処を間違えたせいで、こんな噂が拡がっているよ。ワルクーレ公爵様は陛下の命令で我が儘で変わり者の姫君と婚約させられそうになっていて大変嫌がっている、とね。」
「私はそんな言葉は一言も発していない。」
「側に居た騎士に話の流れの詳細を聞いたよ。君はまずベネディ侯爵令嬢にサラの話をされて顔を顰めた。」
「それは、香水が臭くて。」
「そして、サラの話を続けると眉間に皺を寄せ不機嫌な様子だったと。」
「それは、あの女がサラを悪く言うから…」
「侯爵令嬢にユーリード様と呼ばれても、サラを悪く言われても咎めなかったそうじゃないか?」
「あの女は嫌いだ。話すのも嫌だった。」
「いい加減にしろ。サラを守りたければ対処を身に付けろ!」
「今度僕のリリィがサラをお茶会に招く。味方になれる令嬢が集まっている筈だ。」
「ありがとう。気をつける。」
☆★☆
「近々、皇妃からのお茶会の案内が届く。この国の社交界でサラが貶められないように妹が上手く人選してくれている。是非参加して欲しい。」
サラにお茶会の事を伝えると案外好意的な返事が返ってきた。
「そろそろマナーレッスンの成果を確かめたかったの。嬉しい。」
「貴族的な生活は苦行だ、と言っていたのに。」意外な反応に驚く。
「私は未来の公爵婦人でしょ?ユーリーの助けになりたいの。」
と言ってくれた。
嬉しくて咄嗟に口を手で覆うが、「目元が赤くなってる。」と笑われた。
レイルが張りきって「ドレスはどういたしましょう?」と尋ねてきた。
「すみません。また、サイズが変わちゃって。」サラが申し訳無さそうな表情を浮かべる。
「仕立て屋を呼んでくれ。」
レイルは飛び上がらんばかりに喜んでいる。レイルもココットもサラを着飾らせるのを心底楽しんでいる。
サラは公爵邸に来てから、みるみる美貌を取り戻した。艶やかなシルバーブロンドの髪、美しい黄金の瞳はいつも潤んでいる。彼女のその眼が何を映しているのか気になって仕方がない。長い間、陽を浴びることのなかった白い肌は輝いていて男の劣情を刺激する。
そんなサラを王宮に行かせるなんて心配でたまらない。
騎士の訓練施設で他の騎士と談笑しながら休憩を取っているとど派手なきんきら眩しい一団がこちらに近づいてくる。
「ユーリード様、この度は亡国の姫君を保護したと噂を聴きましたわ。」
よく見ると、派手な集団はベネディ侯爵令嬢を先頭とした令嬢の集団であった。目の前まで近づいてくるので、強い香水の匂いに顔を顰める。
「聞けばキメ王国でも社交界デビューもしなかった変わり者の姫君だそうで。陛下の御命令でしょう?ユーリード様も大変ですわね?」
何も知らない癖に、サラを貶める言葉を聞いて気分が悪くなり眉間に皺が寄る。
「分かりますわ。臣下たるもの陛下の命令は絶対ですもの。私も協力いたしますのでお声を掛けてくださいませ。」
言うだけ言って取り巻きのご令嬢を引き連れて去っていった。
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アリセントに呼び出された。
「ユーリー、君のせいで貴族令嬢の間での噂が酷くなっているよ。」
「どういうことだ?」
「先日の、君とベネディ侯爵令嬢とのやり取りさ。対処を間違えたせいで、こんな噂が拡がっているよ。ワルクーレ公爵様は陛下の命令で我が儘で変わり者の姫君と婚約させられそうになっていて大変嫌がっている、とね。」
「私はそんな言葉は一言も発していない。」
「側に居た騎士に話の流れの詳細を聞いたよ。君はまずベネディ侯爵令嬢にサラの話をされて顔を顰めた。」
「それは、香水が臭くて。」
「そして、サラの話を続けると眉間に皺を寄せ不機嫌な様子だったと。」
「それは、あの女がサラを悪く言うから…」
「侯爵令嬢にユーリード様と呼ばれても、サラを悪く言われても咎めなかったそうじゃないか?」
「あの女は嫌いだ。話すのも嫌だった。」
「いい加減にしろ。サラを守りたければ対処を身に付けろ!」
「今度僕のリリィがサラをお茶会に招く。味方になれる令嬢が集まっている筈だ。」
「ありがとう。気をつける。」
☆★☆
「近々、皇妃からのお茶会の案内が届く。この国の社交界でサラが貶められないように妹が上手く人選してくれている。是非参加して欲しい。」
サラにお茶会の事を伝えると案外好意的な返事が返ってきた。
「そろそろマナーレッスンの成果を確かめたかったの。嬉しい。」
「貴族的な生活は苦行だ、と言っていたのに。」意外な反応に驚く。
「私は未来の公爵婦人でしょ?ユーリーの助けになりたいの。」
と言ってくれた。
嬉しくて咄嗟に口を手で覆うが、「目元が赤くなってる。」と笑われた。
レイルが張りきって「ドレスはどういたしましょう?」と尋ねてきた。
「すみません。また、サイズが変わちゃって。」サラが申し訳無さそうな表情を浮かべる。
「仕立て屋を呼んでくれ。」
レイルは飛び上がらんばかりに喜んでいる。レイルもココットもサラを着飾らせるのを心底楽しんでいる。
サラは公爵邸に来てから、みるみる美貌を取り戻した。艶やかなシルバーブロンドの髪、美しい黄金の瞳はいつも潤んでいる。彼女のその眼が何を映しているのか気になって仕方がない。長い間、陽を浴びることのなかった白い肌は輝いていて男の劣情を刺激する。
そんなサラを王宮に行かせるなんて心配でたまらない。
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