11 / 29
11.
しおりを挟む
☆★☆ユーリード視点☆★☆
騎士の訓練施設で他の騎士と談笑しながら休憩を取っているとど派手なきんきら眩しい一団がこちらに近づいてくる。
「ユーリード様、この度は亡国の姫君を保護したと噂を聴きましたわ。」
よく見ると、派手な集団はベネディ侯爵令嬢を先頭とした令嬢の集団であった。目の前まで近づいてくるので、強い香水の匂いに顔を顰める。
「聞けばキメ王国でも社交界デビューもしなかった変わり者の姫君だそうで。陛下の御命令でしょう?ユーリード様も大変ですわね?」
何も知らない癖に、サラを貶める言葉を聞いて気分が悪くなり眉間に皺が寄る。
「分かりますわ。臣下たるもの陛下の命令は絶対ですもの。私も協力いたしますのでお声を掛けてくださいませ。」
言うだけ言って取り巻きのご令嬢を引き連れて去っていった。
☆★☆
アリセントに呼び出された。
「ユーリー、君のせいで貴族令嬢の間での噂が酷くなっているよ。」
「どういうことだ?」
「先日の、君とベネディ侯爵令嬢とのやり取りさ。対処を間違えたせいで、こんな噂が拡がっているよ。ワルクーレ公爵様は陛下の命令で我が儘で変わり者の姫君と婚約させられそうになっていて大変嫌がっている、とね。」
「私はそんな言葉は一言も発していない。」
「側に居た騎士に話の流れの詳細を聞いたよ。君はまずベネディ侯爵令嬢にサラの話をされて顔を顰めた。」
「それは、香水が臭くて。」
「そして、サラの話を続けると眉間に皺を寄せ不機嫌な様子だったと。」
「それは、あの女がサラを悪く言うから…」
「侯爵令嬢にユーリード様と呼ばれても、サラを悪く言われても咎めなかったそうじゃないか?」
「あの女は嫌いだ。話すのも嫌だった。」
「いい加減にしろ。サラを守りたければ対処を身に付けろ!」
「今度僕のリリィがサラをお茶会に招く。味方になれる令嬢が集まっている筈だ。」
「ありがとう。気をつける。」
☆★☆
「近々、皇妃からのお茶会の案内が届く。この国の社交界でサラが貶められないように妹が上手く人選してくれている。是非参加して欲しい。」
サラにお茶会の事を伝えると案外好意的な返事が返ってきた。
「そろそろマナーレッスンの成果を確かめたかったの。嬉しい。」
「貴族的な生活は苦行だ、と言っていたのに。」意外な反応に驚く。
「私は未来の公爵婦人でしょ?ユーリーの助けになりたいの。」
と言ってくれた。
嬉しくて咄嗟に口を手で覆うが、「目元が赤くなってる。」と笑われた。
レイルが張りきって「ドレスはどういたしましょう?」と尋ねてきた。
「すみません。また、サイズが変わちゃって。」サラが申し訳無さそうな表情を浮かべる。
「仕立て屋を呼んでくれ。」
レイルは飛び上がらんばかりに喜んでいる。レイルもココットもサラを着飾らせるのを心底楽しんでいる。
サラは公爵邸に来てから、みるみる美貌を取り戻した。艶やかなシルバーブロンドの髪、美しい黄金の瞳はいつも潤んでいる。彼女のその眼が何を映しているのか気になって仕方がない。長い間、陽を浴びることのなかった白い肌は輝いていて男の劣情を刺激する。
そんなサラを王宮に行かせるなんて心配でたまらない。
騎士の訓練施設で他の騎士と談笑しながら休憩を取っているとど派手なきんきら眩しい一団がこちらに近づいてくる。
「ユーリード様、この度は亡国の姫君を保護したと噂を聴きましたわ。」
よく見ると、派手な集団はベネディ侯爵令嬢を先頭とした令嬢の集団であった。目の前まで近づいてくるので、強い香水の匂いに顔を顰める。
「聞けばキメ王国でも社交界デビューもしなかった変わり者の姫君だそうで。陛下の御命令でしょう?ユーリード様も大変ですわね?」
何も知らない癖に、サラを貶める言葉を聞いて気分が悪くなり眉間に皺が寄る。
「分かりますわ。臣下たるもの陛下の命令は絶対ですもの。私も協力いたしますのでお声を掛けてくださいませ。」
言うだけ言って取り巻きのご令嬢を引き連れて去っていった。
☆★☆
アリセントに呼び出された。
「ユーリー、君のせいで貴族令嬢の間での噂が酷くなっているよ。」
「どういうことだ?」
「先日の、君とベネディ侯爵令嬢とのやり取りさ。対処を間違えたせいで、こんな噂が拡がっているよ。ワルクーレ公爵様は陛下の命令で我が儘で変わり者の姫君と婚約させられそうになっていて大変嫌がっている、とね。」
「私はそんな言葉は一言も発していない。」
「側に居た騎士に話の流れの詳細を聞いたよ。君はまずベネディ侯爵令嬢にサラの話をされて顔を顰めた。」
「それは、香水が臭くて。」
「そして、サラの話を続けると眉間に皺を寄せ不機嫌な様子だったと。」
「それは、あの女がサラを悪く言うから…」
「侯爵令嬢にユーリード様と呼ばれても、サラを悪く言われても咎めなかったそうじゃないか?」
「あの女は嫌いだ。話すのも嫌だった。」
「いい加減にしろ。サラを守りたければ対処を身に付けろ!」
「今度僕のリリィがサラをお茶会に招く。味方になれる令嬢が集まっている筈だ。」
「ありがとう。気をつける。」
☆★☆
「近々、皇妃からのお茶会の案内が届く。この国の社交界でサラが貶められないように妹が上手く人選してくれている。是非参加して欲しい。」
サラにお茶会の事を伝えると案外好意的な返事が返ってきた。
「そろそろマナーレッスンの成果を確かめたかったの。嬉しい。」
「貴族的な生活は苦行だ、と言っていたのに。」意外な反応に驚く。
「私は未来の公爵婦人でしょ?ユーリーの助けになりたいの。」
と言ってくれた。
嬉しくて咄嗟に口を手で覆うが、「目元が赤くなってる。」と笑われた。
レイルが張りきって「ドレスはどういたしましょう?」と尋ねてきた。
「すみません。また、サイズが変わちゃって。」サラが申し訳無さそうな表情を浮かべる。
「仕立て屋を呼んでくれ。」
レイルは飛び上がらんばかりに喜んでいる。レイルもココットもサラを着飾らせるのを心底楽しんでいる。
サラは公爵邸に来てから、みるみる美貌を取り戻した。艶やかなシルバーブロンドの髪、美しい黄金の瞳はいつも潤んでいる。彼女のその眼が何を映しているのか気になって仕方がない。長い間、陽を浴びることのなかった白い肌は輝いていて男の劣情を刺激する。
そんなサラを王宮に行かせるなんて心配でたまらない。
59
お気に入りに追加
5,296
あなたにおすすめの小説

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。

魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる