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☆★☆ユーリード視点☆★☆
皇帝であるアリセントから話があると執務室に呼び出された。
「何だ?」
「来たね。ユーリー、あの子はどう?」
「特に変わりはない。屋敷の者達とも打ち解けて楽しそうに過ごしている。」
「良かった。ユーリーに任せて良かったよ。あれから、守りの指輪の事を調べたんだけど、持ち主を殺そうとすると、殺そうとした人間だけでなく周囲も被害を受けている。ケムラ王国で持ち主を殺したら殺害した人間は雷に打たれて死んでいるね。それだけでは無くて、その後から何日も雨が降り続き洪水が起きて疫病が流行り結果的に国は体裁を保てなくなり我が国に侵略された。」
彼女の保護は国の安全に関わる、私は気を引き締めて親友の話を聞いた。
「サラルーリー嬢を虐げた両親も使用人も死に母国は侵略されたのも偶然じゃないよね。」
「このまま、我が公爵家で保護すれば良いか?一応、一年後には婚約発表して、二年後には結婚式を挙げることになっている。」
「それは白い結婚だよね?彼女は同意してるの?」
「勿論だ。」
「このまま彼女を我が国に抱え込むのも不安だけど…。一番良いのは二人が想い合って結婚か…。」俺が無言でいるとアリセントはすまなそうに眉を下げた。
「ごめん、無理を言った。」
「別に構わない。そんな事望んでいない。」
「兎に角、折角我が国をここまでにしたんだ。後は経済を立て直して国民を豊かにしたい。また、災いが起きては乱戦時代と変わらなくなってしまう。協力を頼むよ。」
「分かっている。」
俺たちはこの乱戦時代に若くして皇帝と騎士団長という地位に就き、この国の為に奔走した。気が付けば9年が経っていた。
同じ目的の為に…、何人か志を同じくした仲間がいる。魔導師団長と宰相も少し年は離れるが良い仲間だと感じている。
少し前まではこの国もキメ王国と変わらない状況だった。
それを変える事を強く望んだのがアリセントだ。学園時代に私に国の未来を語った。
その頃、ある出来事が原因で貴族社会に溶け込めなかった私もその未来の為にこの身を捧げたいと切望したのだ。
そうして半ば強引な方法で先代国王に退位を迫り、アリセントが即位した。その後は怒濤の日々。周囲の国を併合したり、占領したりして帝国までになった。
「君の女嫌いも治るといいね?」
軽口を叩く親友を睨み付ける。不敬など知ったことか。
「やれやれ。」
肩を竦めてみせて「また何か分かったら報告してよ。」
ひらひらと手を振る親友を振り返らずに
「ああ、」とだけ返事して退室した。
サラは公爵邸にすっかり慣れたのか生き生きと過ごしている。
先日早馬で料理がしたいと頼まれた。
条件付きで許可したら、帰宅後その料理を食べさせられた。使用人も皆食べたそうだ。
フルーツと肉を煮込むなんて、不思議な料理だが美味しかった。
料理を食べる私をサラがニコニコ見ている。何だか恥ずかしくなるので、サラの方は見ないように料理を食べた。
全部平らげると
「ユーリーが顰めっ面で食べるから美味しくないのかと思った。」
「いや。美味しかった。また食べ…たい。」
サラの顔の顔を一旦見るが直ぐに目を反らす。
そんな私にサラは嬉しそうに
「喜んで。」と答えてくれた。
皇帝であるアリセントから話があると執務室に呼び出された。
「何だ?」
「来たね。ユーリー、あの子はどう?」
「特に変わりはない。屋敷の者達とも打ち解けて楽しそうに過ごしている。」
「良かった。ユーリーに任せて良かったよ。あれから、守りの指輪の事を調べたんだけど、持ち主を殺そうとすると、殺そうとした人間だけでなく周囲も被害を受けている。ケムラ王国で持ち主を殺したら殺害した人間は雷に打たれて死んでいるね。それだけでは無くて、その後から何日も雨が降り続き洪水が起きて疫病が流行り結果的に国は体裁を保てなくなり我が国に侵略された。」
彼女の保護は国の安全に関わる、私は気を引き締めて親友の話を聞いた。
「サラルーリー嬢を虐げた両親も使用人も死に母国は侵略されたのも偶然じゃないよね。」
「このまま、我が公爵家で保護すれば良いか?一応、一年後には婚約発表して、二年後には結婚式を挙げることになっている。」
「それは白い結婚だよね?彼女は同意してるの?」
「勿論だ。」
「このまま彼女を我が国に抱え込むのも不安だけど…。一番良いのは二人が想い合って結婚か…。」俺が無言でいるとアリセントはすまなそうに眉を下げた。
「ごめん、無理を言った。」
「別に構わない。そんな事望んでいない。」
「兎に角、折角我が国をここまでにしたんだ。後は経済を立て直して国民を豊かにしたい。また、災いが起きては乱戦時代と変わらなくなってしまう。協力を頼むよ。」
「分かっている。」
俺たちはこの乱戦時代に若くして皇帝と騎士団長という地位に就き、この国の為に奔走した。気が付けば9年が経っていた。
同じ目的の為に…、何人か志を同じくした仲間がいる。魔導師団長と宰相も少し年は離れるが良い仲間だと感じている。
少し前まではこの国もキメ王国と変わらない状況だった。
それを変える事を強く望んだのがアリセントだ。学園時代に私に国の未来を語った。
その頃、ある出来事が原因で貴族社会に溶け込めなかった私もその未来の為にこの身を捧げたいと切望したのだ。
そうして半ば強引な方法で先代国王に退位を迫り、アリセントが即位した。その後は怒濤の日々。周囲の国を併合したり、占領したりして帝国までになった。
「君の女嫌いも治るといいね?」
軽口を叩く親友を睨み付ける。不敬など知ったことか。
「やれやれ。」
肩を竦めてみせて「また何か分かったら報告してよ。」
ひらひらと手を振る親友を振り返らずに
「ああ、」とだけ返事して退室した。
サラは公爵邸にすっかり慣れたのか生き生きと過ごしている。
先日早馬で料理がしたいと頼まれた。
条件付きで許可したら、帰宅後その料理を食べさせられた。使用人も皆食べたそうだ。
フルーツと肉を煮込むなんて、不思議な料理だが美味しかった。
料理を食べる私をサラがニコニコ見ている。何だか恥ずかしくなるので、サラの方は見ないように料理を食べた。
全部平らげると
「ユーリーが顰めっ面で食べるから美味しくないのかと思った。」
「いや。美味しかった。また食べ…たい。」
サラの顔の顔を一旦見るが直ぐに目を反らす。
そんな私にサラは嬉しそうに
「喜んで。」と答えてくれた。
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