6 / 29
6.
しおりを挟む
☆★☆ユーリード視点☆★☆
皇帝であるアリセントから話があると執務室に呼び出された。
「何だ?」
「来たね。ユーリー、あの子はどう?」
「特に変わりはない。屋敷の者達とも打ち解けて楽しそうに過ごしている。」
「良かった。ユーリーに任せて良かったよ。あれから、守りの指輪の事を調べたんだけど、持ち主を殺そうとすると、殺そうとした人間だけでなく周囲も被害を受けている。ケムラ王国で持ち主を殺したら殺害した人間は雷に打たれて死んでいるね。それだけでは無くて、その後から何日も雨が降り続き洪水が起きて疫病が流行り結果的に国は体裁を保てなくなり我が国に侵略された。」
彼女の保護は国の安全に関わる、私は気を引き締めて親友の話を聞いた。
「サラルーリー嬢を虐げた両親も使用人も死に母国は侵略されたのも偶然じゃないよね。」
「このまま、我が公爵家で保護すれば良いか?一応、一年後には婚約発表して、二年後には結婚式を挙げることになっている。」
「それは白い結婚だよね?彼女は同意してるの?」
「勿論だ。」
「このまま彼女を我が国に抱え込むのも不安だけど…。一番良いのは二人が想い合って結婚か…。」俺が無言でいるとアリセントはすまなそうに眉を下げた。
「ごめん、無理を言った。」
「別に構わない。そんな事望んでいない。」
「兎に角、折角我が国をここまでにしたんだ。後は経済を立て直して国民を豊かにしたい。また、災いが起きては乱戦時代と変わらなくなってしまう。協力を頼むよ。」
「分かっている。」
俺たちはこの乱戦時代に若くして皇帝と騎士団長という地位に就き、この国の為に奔走した。気が付けば9年が経っていた。
同じ目的の為に…、何人か志を同じくした仲間がいる。魔導師団長と宰相も少し年は離れるが良い仲間だと感じている。
少し前まではこの国もキメ王国と変わらない状況だった。
それを変える事を強く望んだのがアリセントだ。学園時代に私に国の未来を語った。
その頃、ある出来事が原因で貴族社会に溶け込めなかった私もその未来の為にこの身を捧げたいと切望したのだ。
そうして半ば強引な方法で先代国王に退位を迫り、アリセントが即位した。その後は怒濤の日々。周囲の国を併合したり、占領したりして帝国までになった。
「君の女嫌いも治るといいね?」
軽口を叩く親友を睨み付ける。不敬など知ったことか。
「やれやれ。」
肩を竦めてみせて「また何か分かったら報告してよ。」
ひらひらと手を振る親友を振り返らずに
「ああ、」とだけ返事して退室した。
サラは公爵邸にすっかり慣れたのか生き生きと過ごしている。
先日早馬で料理がしたいと頼まれた。
条件付きで許可したら、帰宅後その料理を食べさせられた。使用人も皆食べたそうだ。
フルーツと肉を煮込むなんて、不思議な料理だが美味しかった。
料理を食べる私をサラがニコニコ見ている。何だか恥ずかしくなるので、サラの方は見ないように料理を食べた。
全部平らげると
「ユーリーが顰めっ面で食べるから美味しくないのかと思った。」
「いや。美味しかった。また食べ…たい。」
サラの顔の顔を一旦見るが直ぐに目を反らす。
そんな私にサラは嬉しそうに
「喜んで。」と答えてくれた。
皇帝であるアリセントから話があると執務室に呼び出された。
「何だ?」
「来たね。ユーリー、あの子はどう?」
「特に変わりはない。屋敷の者達とも打ち解けて楽しそうに過ごしている。」
「良かった。ユーリーに任せて良かったよ。あれから、守りの指輪の事を調べたんだけど、持ち主を殺そうとすると、殺そうとした人間だけでなく周囲も被害を受けている。ケムラ王国で持ち主を殺したら殺害した人間は雷に打たれて死んでいるね。それだけでは無くて、その後から何日も雨が降り続き洪水が起きて疫病が流行り結果的に国は体裁を保てなくなり我が国に侵略された。」
彼女の保護は国の安全に関わる、私は気を引き締めて親友の話を聞いた。
「サラルーリー嬢を虐げた両親も使用人も死に母国は侵略されたのも偶然じゃないよね。」
「このまま、我が公爵家で保護すれば良いか?一応、一年後には婚約発表して、二年後には結婚式を挙げることになっている。」
「それは白い結婚だよね?彼女は同意してるの?」
「勿論だ。」
「このまま彼女を我が国に抱え込むのも不安だけど…。一番良いのは二人が想い合って結婚か…。」俺が無言でいるとアリセントはすまなそうに眉を下げた。
「ごめん、無理を言った。」
「別に構わない。そんな事望んでいない。」
「兎に角、折角我が国をここまでにしたんだ。後は経済を立て直して国民を豊かにしたい。また、災いが起きては乱戦時代と変わらなくなってしまう。協力を頼むよ。」
「分かっている。」
俺たちはこの乱戦時代に若くして皇帝と騎士団長という地位に就き、この国の為に奔走した。気が付けば9年が経っていた。
同じ目的の為に…、何人か志を同じくした仲間がいる。魔導師団長と宰相も少し年は離れるが良い仲間だと感じている。
少し前まではこの国もキメ王国と変わらない状況だった。
それを変える事を強く望んだのがアリセントだ。学園時代に私に国の未来を語った。
その頃、ある出来事が原因で貴族社会に溶け込めなかった私もその未来の為にこの身を捧げたいと切望したのだ。
そうして半ば強引な方法で先代国王に退位を迫り、アリセントが即位した。その後は怒濤の日々。周囲の国を併合したり、占領したりして帝国までになった。
「君の女嫌いも治るといいね?」
軽口を叩く親友を睨み付ける。不敬など知ったことか。
「やれやれ。」
肩を竦めてみせて「また何か分かったら報告してよ。」
ひらひらと手を振る親友を振り返らずに
「ああ、」とだけ返事して退室した。
サラは公爵邸にすっかり慣れたのか生き生きと過ごしている。
先日早馬で料理がしたいと頼まれた。
条件付きで許可したら、帰宅後その料理を食べさせられた。使用人も皆食べたそうだ。
フルーツと肉を煮込むなんて、不思議な料理だが美味しかった。
料理を食べる私をサラがニコニコ見ている。何だか恥ずかしくなるので、サラの方は見ないように料理を食べた。
全部平らげると
「ユーリーが顰めっ面で食べるから美味しくないのかと思った。」
「いや。美味しかった。また食べ…たい。」
サラの顔の顔を一旦見るが直ぐに目を反らす。
そんな私にサラは嬉しそうに
「喜んで。」と答えてくれた。
53
お気に入りに追加
5,296
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

密室に二人閉じ込められたら?
水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。
airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。
どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。
2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。
ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。
あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて…
あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる