戦略的過保護のち溺愛

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「ゴーン、ゴーン、ゴーン」
絢爛豪華な教会に祝福の鐘が鳴り響く。

私は今日、この不器用で胡散臭い笑みを私に向ける公爵様と結婚する。


★☆★☆★


事の始まりは、私が前世で雷に打たれて死んだことだ。
なんて希少な死因。
あの世みたいな雲の上的場所で女神様に転生をお願いされた。
「ちょっと手違いがあって転生をお願いしたいの。」手を合わせてお願いポーズをする姿は威厳の欠片もない。
「何処へですか?」
「前の世界よりは文明も遅れてて、ちょっと不便だけど、身分は高いから生活に困ることは無いわ。」
「遅れているって・・・平和な所ですか?」
「戦争はあるかも。」
「嫌ですよ。今まで戦争を知らずに生きて来たんです。」
「守りの指輪あげるから。ほらっ頑張って。質問があったら教会に来て、一人きりで祈りを捧げてね。」
ドンと背中を押されてまっ逆さまに落ちてこの世界にやって来た。
理不尽だ。
私はキメ王国の宰相の一人娘として産まれた。
産まれた時から指輪を付けている私を両親は不気味に思ったようだ。私は愛情を受けることなく両親から距離をおかれた。
だけど、女神様が父親の枕元に立って、私に危害を加えると大変な事が起こると忠告したそうだ。
これは使用人のひそひそ話から聞いた。

危害は肉体的なものに限るらしく、無視され続けた。
家出でもしてのたれ死んで欲しいと本気で思っていたに違いない。
訪問者が居るときは取り繕って姿を見せたこともあったけど、10歳を越える頃には人嫌いの変わった娘として人前に出ることも叶わなくなっていた。
両親は不仲で自分勝手な人達だった。
母は愛人を平気で家に入れていたし、父親は帰ってこない日の方が多かった。
屋敷の中でうろちょろすると、父や母に会ってしまうことがあり、彼らは私を見ると盛大に顔を歪め使用人に手で追い払うような仕草で指示を出す。
それが嫌で、私はほとんど部屋で過ごしていた。
私は自分に与えられた部屋で運ばれてくる粗末な食事を食べ、何の飾りもない白いワンピースを毎日着ていた。

女神様って加護とか付けてくれない訳?
話が違う。生活に困ることはないって言ってたじゃない。
本気で女神様を恨めしく思っていた。

けれども一度孤児院が併設された教会に慰問に行くときこの国の子供達の現状を見た。食べ物に困らないだけ幸せだ。町には物乞いする子供たちが並んで道の端に座っていた。
こんな光景見たことない。
粗末でも残さず食べるようになった。

私が18歳を迎える頃、キメ王国は隣国ダカーンに攻め滅ぼされた。
    
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