上 下
7 / 17

僕の相談相手は??

しおりを挟む
 
デーヴィット殿下視点



 

「王妃様、私にイヤミばっかり言うの。どうにかならないの?」

 アイティラと婚約解消した後、マリアーナは僕の婚約者として、お妃教育を受けることになった。

 いつも僕ちゃん……僕のために一生懸命になってくれるママンは、マリアーナを立派な王太子妃にすると張り切っている。なのに、そんな事を言うなんて……。

「イヤミなんて……気のせいだよ」

「そんな事無いわ!身に着けるもの全てに文句を言うのよ。私の父親の事も『貧乏貴族だから娘に安物のドレスしか用意出来ない』って貶すのよ」

 マリアーナにはママンみたいな完璧な淑女になって欲しい。僕はそう願っている。そのためには、マリアーナの婚約者としてちゃんと彼女を支えなければ。

 もしかしてマリアーナは、ママンの事を誤解しているのかな?
 ここは、僕がママンとマリアーナを仲を取り持たないと、ね。

「確かにお妃教育は厳しいかもしれない。だけど、母上は、マリアーナのためを思って言ってるんだよ」

「ならどうすればいいか、全部書いてよ。その通りにするから。王妃様のお話って自慢5割、私や家族の悪口4割。王妃になるために必要なアドバイスなんてせいぜい1割よ?自慢や悪口を延々と聞いているのは苦痛だわ。大切で伝えたい事だけ、全部文章にしてください!」

「母上は君に直接言いたいんだ。仲良くしたいんだよ。分かって欲しい」

「もう私には無理よ。王妃様の言う通りになんて出来ないわ」

 マリアーナは怒ったようにそう言うと、わんわん泣き出してしまった。
 僕が慰めても首を振るばかりでどうすれば良いか分からない。

 はぁーーー。
 お妃教育を始めてからマリアーナが変わってしまった。可愛くて素直だと思っていたのに、意外と頑固な所がある。ママンとは性格が合わないみたいだ。

 うーん。
 マリアーナはもう僕の話を聞いてくれない。
 どうしよう……。
 どうしよう……。


 そうだ!

 アイティラなら母上とも上手くやっていたし、マリアーナとママンの仲をとりもってくれるかも!

 アイティラとは婚約解消したけれど、彼女とママンの関係は良好。婚約解消した時、アイティラは何かいっぱい喋ってたけど、早口で聞き取れなかった。
 でも、ずっと笑顔だったから怒って無かったよね?
 まあ、あの穏やかなアイティラが怒るわけないし!
 よーし!
 早速アイティラに相談だ!



 ☆



 僕はアイティラに相談するために、急いでスターリー公爵邸に向かった。
 彼女なら、母上のこともよく知ってるし、僕の話を聞いてくれるはずだ。
 だけどーー

 あれ?

 アイティラが何故か余所余所しい……。婚約解消したからといって、僕の相談にも乗ってくれない。
 いつもニコニコ僕の話を聞いてくれてたのに……。
 別に仲違いしたわけじゃないのに、どうしてそんなにコロッと態度を変えるんだ?

 アイティラだってママンには恩義を感じているはずだと思ってた。ママンは一生懸命アイティラにお妃教育をしてきたのだし……。

 だけど、アイティラは僕の依頼を断った。

 アイティラもマリアーナと同じように、ママンに泣かされたそうだ。
 ママンの愛情は伝わりにくいのかもしれない。これは本当にどうにかしないと……。

 

 アイティラは別の男の手をずっと握っていたなー。新しい恋だとも言っていたっけ。もしかして、あの男は新しい婚約者?? 

 そうか……。僕がアイティラとの婚約を解消してマリアーナと婚約したように、彼女も次の婚約相手を探さないといけない。苦労しているんだな。
 だからあんなにイライラして怒っていたのか……。

 とにかく、マリアーナもアイティラもママンの言葉で傷ついていた。これは事実!
 ママンは誤解されちゃってるんだ!
 僕ちゃんがママンをフォローしなくては!



 ママンの説得のため、王宮に戻り王妃専用のサロンに行った。

「母上!話があります!」
「あら、デーヴィット、私もちょうど話があったのよ」

 ママンはいつものように目配せして侍女たちを下がらせた。

「ママンの話って何?」
「あのね、ディ君、マリアーナさんは王太子妃としては相応しくないわ。お妃教育にも反抗的な態度なのよ」
「マリアーナが?」
「それでね、私、思ったんだけどアイティラさんに戻ってきて貰ったらどう?」
「え?」
「アイティラさんを正妃、マリアーナさんを側妃になさいな」
「そんな事出来るのですか?」
「ええ。何代も前から側妃を娶る王族は居なかったけれど、制度としては残っているわ」
「アイティラは、同意してくれるでしょうか?」
「アイティラさんだって急に新しい結婚相手を探すのも大変でしょうし、きっと喜ぶわよ」

 そうか!さすがママンだ!

 マリアーナは可愛いけど、相談相手にはならない。
 アイティラが正妃ならこれまで通り彼女に自分を支えてもらえる。

 そうだよな、やっぱりそれが一番だよな。
 
 よし、アイティラがあの男と婚約する前にこのことを話しに行こう!

 あー、良かった!
 これで万事解決だ!
 



    
しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?

うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。 濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!

【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」

まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。 私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。  私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。 私は妹にはめられたのだ。 牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。 「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」 そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ ※他のサイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。

石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。 色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。 *この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。

日常的に罠にかかるうさぎが、とうとう逃げられない罠に絡め取られるお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレっていうほど病んでないけど、機を見て主人公を捕獲する彼。 そんな彼に見事に捕まる主人公。 そんなお話です。 ムーンライトノベルズ様でも投稿しています。

処理中です...