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きゅー! 【R18手前まで】
しおりを挟む結婚式は質素にしたいなんて思っていたけれど、国の英雄の結婚式を質素に済ませられる訳もなく……。
畏れ多いことに、王族の結婚式にも選ばれる由緒ある神殿で大勢の招待客を招いての挙式となった。
こうして燕尾服に身をつつめば、その高い背丈も広い肩幅もすごく映えて格好いい。というか、周囲の人が小さく頼りなく見える。
あんなに怖いと思っていたのに、現金なものだと自分でも思う。
感動したというより、ただただ緊張した結婚式ではあったが、儀式の全てが終わると感慨深い。
神殿を出て空を見上げると透き通るような青空が広がっていた。
隣に立つこの大きな人が私の旦那様。私の視線に気が付いたヴィンスさまは、困ったように眉を下げるから、私は照れてるのかしら?なんて思いながら、背伸びして彼の頬にキスをした。
☆
初夜を迎える花嫁はレースの模様が施された前開きの薄衣を羽織るのがこの国の伝統らしい。
メイドが用意してくれた薔薇の花びらを浮かべたお風呂は、少しぬるめのお湯でいい香りがした。時間を掛けて身体を温めてからお風呂を出ると、綺麗に折り畳んだ薄衣が用意されていた。
(誰も居なくて良かった)
胸当てや下履きはないから透け透け。さすがに女同士でも恥ずかしい。
オフホワイトの薄衣を羽織って脱衣場を出ると、寝室はすでに灯りが落とされていて、私はベッドにちょこんと腰掛けた。
胸の先端と陰部は少し濃い桃色の糸で刺繍があるからかろうじて大切な所は隠れているが、その他は肌の色がわかるほど透けている。
私は胸の前で手をクロスし、精神を集中させていた。
いよいよだわ!
旦那さまに愛されるかは、今夜に掛かっている。
頑張らなきゃ。
たくさん読んだロマンチックな恋愛小説や、閨本、房中術指南書の内容を思い出しながらその時を待った。
ーーガチャ
ドアを開ける音がして静かにヴィンスさまが入ってきた。私は恥ずかしくて顔を上げられずにいたが、その息を呑む気配から全身を見られているのだと感じて顔が熱くなる。
彼が私の隣に腰を下ろすと、ベッドがギシリと音を立てた。
「心の準備は出来たか?まだなら……」
「はい!」
『待つ』と言う言葉が続いたのだろうか?けれど気持ちが逸っていた私は彼の言葉が言い終わらないうちに雰囲気を台無しにするような元気な返事をしてしまった。
ヴィンス様はうつむいて肩が揺れている。
「わ、わたし……閨ごとの勉強は嗜みとして学んでおりますので、殿方は夜は淫らな女性を好むことも承知しております。房中術も少しは学びましたので、実演出来ればと……」
顔を上げずに一気に喋るとヴィンス様はくすくす笑ったまま、私の肩に手を置いた。
「貴女が行動的なのは知っていたが……。出来れば俺に全て委ねて欲しい」
そのまま彼に肩を押されぼすんとベッドに倒れた。
「え??」
勉強したのに、勉強したのに……。
「ンっ……」
不意に唇を合わされ声が漏れ、それと同時に分厚い舌が口内を侵食した。
結婚式の触れるだけのキスとは違う深い口づけ。いつの間にかきっちりと腕を押さえられどうにも抵抗が出来ない。
激しい……。
そう思うほど、その口づけは情熱的だった。
クチュクチュと水音が直接耳に響き、その淫靡な音は私の淫らな気持ちを掻き立てる。
「ヴィ、……ヴィンス……さま……」
ようやく唇が開放され、息も絶え絶えに彼の名を呼ぶと、目の前にある黒の瞳が優しく細められた。
最初から結婚前提だったから、好きだとか考えていなかったけれど、こうして一緒に過ごす時間が増えるたび、ヴィンスさまの人柄に惹かれていった。
なんだかとてつもない安心感。ヴィンスさまの生真面目なところも、余計な事は極力喋らない無口なところも、ちょっと困ったように私を見つめるその眼差しも、そして、初めは怖いと思っていたその厳つい容貌も……大きな身体も、今では大好き。
私はヴィンスさまに向かって微笑んだ。
「ヴィンスさま、大好き。今日は私をめちゃめちゃにして♡」
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